長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

ぶらり、時間散歩 (第10回)

『学習の友』の時間エッセイ10回目です(8月号掲載)。


第10回「100年のスパンでみると」

 学習会でよく「100年」のスパンでものごとを
見てみよう、という話をします。今年で言えば、
100年前の1919年はどんな世界だっただろう
かと。
 まず、ILO(世界労働機関)創設。その1号条
約は「8時間労働」をかかげたものでした。それが
目標だったということは、8時間労働があたり前で
なかった時代。有給休暇もほとんどなかった。女性
参政権が確立している国は10か国ほど。1919
年にできたワイマール憲法は世界で初めて生存権を
かかげました。また世界の多くの国が植民地で、自
決権もない、そんな時代でした。
 100年間、ジグザグや紆余曲折はあったけど、
働くルール、人権、女性、平和・・・。確実に世界は前
進してきた。その原動力は、人々の闘い。だから私
たちがあきらめずに闘いつづければ、ジグザグはあ
るけれども、必ず前進する。100年後の見通しが
ある。だから歴史を学ぶと強くなれる。こんな話を
よくします。
 ついでに、「みなさんいつまで生きるって決めて
いますか? 私はもう死ぬタイミング決めています。
2080年の誕生日です。106歳です。このへん
で死にます」と。聴いている人は笑います。え、そ
んなに生きるつもり?って。やりたいことがたくさ
んあるし、人類がどこまで前進するのか見てみたい
というのが理由。「まあ、明日死ぬかもしれません
けど」とつけ加えますが。いつ死ぬか誰にもわかり
ません。でも計画するのは自由です。時間を意識で
きるのが人間なのですから。
 「やりたいことたくさんがある」のは本当で、世
界中を旅したいし、本もたくさん読みたい、時間が
あれば語学やデザイン、興味のある建築も勉強して
みたい・・・。人生300年ぐらいほしいところです。
でも、こう思い始めたのは、哲学や社会科学を学ん
で、「見通し」を持てるようになったから。人類へ
の信頼、そして自分の人生を肯定できた。だから長
生きもしたい。
 やりたいことが多すぎて、「時間が時間が!」と
あせることも。でも、若い時に出会った言葉「急ぐ
こととゆっくりすることの弁証法的統一」が、私の
時間感を豊かにしてくれました。それは次回に。