長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

6月21日。世界ALSデーでした。

きのう(6月21日)は、世界ALSデー。
まあ、そんなに話題にはなりませんが。

相方がALS(筋萎縮性側索硬化症)と診断されてから3年8か月。
身体機能や気軽に移動できる自由など、
失ったものは大きい。
ぼくも日々の介護生活、正直しんどい。

同時に、病気になって見えてきたこと、
貴重な出会いもたくさんあった。
たくさんの人に支えられていると実感する。
人生とは不思議なものである。

相方の『ひめは今日も旅に出る』(日本機関紙出版センター)も
出版から1年。
多くの方に読んでいただいたが、まだの方はぜひ!

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この夏は、社会権講座(全3回)!

岡山県学習協では、8月7日(金)より
隔週金曜日、全3回で
「社会権講座~コロナ禍のなかで、人権を守る」
を開催します。

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生命、健康、医療、福祉、生活、雇用、住宅、教育…。
私たちが人間らしく生きていくための基盤が、
コロナ禍のなかで危機に瀕しています。
キーワードは人権。なかでも、社会権の再生こそ、
新しい社会の核心になるべきです。尊厳を、手放さない。
そのための力をつけあう学びの場です。

ぜひ、参加を広げてください。

≪全3回のカリキュラム≫
①8月 7日(金)「社会権とは何か~獲得されてきた『現代的な人権』」
②8月21日(金)「コロナ禍のもとで~人権の危機とその背景」
③9月 4日(金)「社会権再生への連帯~新しい社会の核心と展望」
*時間はすべて、18:30~20:30

ところ:岡山市勤労者福祉センター4階 大会議室(岡山市北区春日町5-6)
講 師:長久啓太(県学習協事務局長)
参加費:1回につき1000円(学生・障害者500円)
【主催&お問い合わせ先】岡山県労働者学習協会
≪新型コロナ感染対策のため、大きめの会場で開催いたします≫

久しぶりのお出かけ!

相方、4月のお花見以来の外出。
ヘルパーさんと、妹さん姪っ子さんの総勢5名。

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まずは岡山駅近くの中華ランチで食べたかったアツアツ春巻をかぷり。
生ビールぐびり。久しぶりの外食にまんぞくそう。

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さらに岡山のALS患者、赤木浩司さんの個展に。
源吉兆庵で働かれていたそうで、吉兆案美術館での開催。
動くからだの部位でパソコン操作しながら描いた絵の数々を観賞。
気の遠くなる作業だが、人間の表現したい、伝えたいという思いは共通。

最後は高島屋であれこれお買い物。
帰りは雨に降られるも、なんとかセーフ。

さあ、これから外出ちょこちょこしていきますよー!

“住む”を考える学習会

岡山県内での新型コロナ感染拡大が
抑えられてきている現状をふまえ、岡山県学習協でも、
学習会を再開していくことにしました。

第1弾は、7月2日(木)の単発学習会。
93期岡山労働学校「ものの見方・考え方教室」の番外編として、
「“住む”を考える~コロナ禍のなかで」をテーマに開催します。

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あたりまえのなかにある、ものごとの本質を探り、
新しい視野を育てあう、そんな労働学校の学びにふさわしく、
“住まい”のそもそも、人権としての居住権を把握します。
さらに、コロナ禍のもとでの住宅喪失、
住居格差・公衆衛生の貧困による感染拡大、
このかん国民が経験した「ステイ・ホーム」の意味と経験、
などなど、住居・住まいをめぐる問題にスポットをあて、
学びあう時間にしたいと思っています。

会場は、3密をさけるために、通常よりも広い部屋で開催します。
グループ感想交流なども人数を少なくし、感染予防につとめます。

コロナ禍のなかで、集まる場そのものが失われることを
私たちは経験しました。その価値をあらためて実感しています。
人が出会い、交流し、エンパワーメントされる学びの場。
感染拡大防止に努力しつつ、
そうした学びの場を少しずつ再開していきたいと思います。

ぜひ、参加を呼びかけていただければと思います。

【“住む”を考える学習会概要】
日時:7月2日(木)18:30~20:30
場所:岡山市勤労者福祉センター 4階大会議室
講師:長久啓太(県学習協事務局長)
参加費:1000円(学生・障害者500円)
主催:岡山県労働者学習協会

学びの場が、だんだんと戻ってきてほしい。

今日(8日)は、
生協労組おかやまパート部会の新人研修を、午前と午後の2ラウンド。
参加は午前は6人、午後は2人。プラス専従のおふたり。

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内容は、いつもの労働組合そもそも話。
基本線同じだけど、
コロナ禍での雇用と生活の危機は自然に話の中で入ってくる。

そして、やはり新鮮だった。

労働組合の学習会は、およそ3か月ぶり。
もちろん、このかん予定はいろいろあったのだけど、
ことごとく中止や延期で、学習会はなくなっていった。

だから、ほんとうに久しぶりの、リアルな労働組合の学び場。
参加者の反応やまなざし、やりとりを感じられる幸福。

当分は、大人数での学習会は無理かもしれないけど、
少しずつ、学びの場が戻ってくることを期待(講師依頼、まってます)。

さて今夜は学習協の常任理事会。企画の提起あり。
学習運動の学びの場も、そろそろ復活させます。

15年目。なんと以前の学生さんが教員に。

きのう(2日)午後は、
ソワニエ看護専門学校の「ものの見方・考え方」、
今年度1回目の授業でした。
15年目!です。

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なんとですね、教務室に入って準備していたら、
今年度から新しくソワニエの教員になられた方があいさつにこられて、
「私、長久先生の授業受けてました。17期生です」と(つまり10年前)。

いずれはそんなこともあるかなーと思っていましたが、
ぼくが関わった看護学生さんが、看護教員になって母校に赴任する。
感慨深いです。
ちなみに、顔をみて名前を聞いても思い出せませんでした、すみません(涙)。

1回目は、絵本『わたし』を読む、という内容にしました。
患者の多様な顔や生活を見る視点を養う内容です。
もちろん自分への見方も豊かに。

これから、計15回、通います。
例年と違うのは、社会人経験者の比率が高いことと、
全員マスク着用で顔が半分見えないこと(涙)。
そしてマスクしながらの講義は、キツイ…ということ。

以下、感想文を少しだけ紹介。
絵本の感想とともに、相方の話が印象に残った人も多いようで。

■患者さんの病気と状態だけではなく、患者さん自身、
背景もしっかり見たいと強く思いました。考え方、
感じ方の変化の面白さを実感して楽しかったです。
ネコの話をする先生の表情や声色で、ほんとに好き
なんだなーとほっこりしました。

■だいぶ哲学的な話だなと感じました。小さい頃から、
自分というものは何からできてて、いつから自分なん
だろうなぁとか思っていたのですが、少しだけ分かっ
たような気もします。相手がいることで出来あがって
いく、また相手を見るときも、いろんな関係がある
から相手として見えるのかなと考えました。むずか
しいです。

■看護師になったとき、その人の患者としての顔だけ
にとらわれて見てはいけない。ましてや、患者の症状
や数字にとらわれてその人を見ないのはいけない。
「数はつねに1」と言ってる先生の考えに最後になって
感動しました。表面だけでなく、その人の中までしっ
かり見れたらいいと思いました。次回の授業、楽しみ
にしています。

■長久さんのパートナーの話、難病をつげられる大学
病院の時のくだりは、聞いていてせつなかったです。
自分は、ケアしていく立場ですが、長久さんから学ん
だ経験を生かした仕事をします。

■長久先生の話、特に実体験で告知の様子を聞いて
自分が看護師になった時に気をつけなければいけない
ことを改めて考えさせられました。相手の立場に立っ
た考え方を自然とできるようにならなければいけない
なあと思いました。

5月に読んだ本たち

5月も、基本的に軽い読み物ばかりでした。
でも、仕事にもきっと活きてくる、と思えるものも多く。
以下、読んだ順にぜんぶ紹介します。
おすすめ度を★の数(5点満点)でつけます。

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『共産党入党宣言』(小松泰信、新日本出版社、2020年)★★★
とある講義準備のため。ひっさしぶりに真面目な本!
と思ったら、ぷぷぷと笑いながら読めた。
といっても、とことんの動画も見てたし、だいたい知ってた内容。
でも小松教授のユーモアで含蓄ある言葉に、改めてエネルギーをもらう。

『改定綱領が開いた「新たな視野」』
     (志位和夫、新日本出版社、2020年5月)★★★★
新聞での掲載時も読んでたけど、書籍になってじっくり読むと、
発見が多いですね。とくにジェンダーのところは勉強になった。

『永遠の仔(上)(下)』(天童荒太、幻冬舎、1999年)★★★★
こんなに精神的に疲れる小説を読んだのは久しぶり。
絶望的なラストを予想していたが、かすかに、
ほんとうにかすかに、踏みとどまる終わり方だった。
背負っているものが重すぎる。荷を分かちあうにも重すぎる。
引き込まれたけど、疲れた。

『閉ざされた扉をこじ開ける~排除と貧困に抗うソーシャルアクション』
                 (稲葉剛、朝日新書、2020年3月)★★★★
地べたで日々活動している著者からの報告と提言。
とくに住宅問題を軸にして。
「外側からのまなざし」を日々更新すること。そして実践。
その先にしか排除のない社会は訪れない。

『ことばハンター 国語辞典はこうつくる』
               (飯間浩明、ポプラ社、2019年)★★★★
『三省堂国語辞典』の編集委員をつとめる著者が
こどもに向けて辞書づくりの面白さを語る。
町を歩きながら「知らない言葉」「ん?と思う使われ方の言葉」を
見つけては写真をとる。言葉は日々変化する。生き物だ。

『火花』(又吉直樹、文春文庫、2017年)★★★★
おもしろかった。お笑い芸人の思索というか、なんというか。
こういう小説はじめてだわ。芥川賞とったのもわかる。
巻末の「芥川龍之介への手紙」もよかった。

『読みたいことを、書けばいい。―人生が変わるシンプルな文章術』
           (田中泰延、ダイヤモンド社、2019年)★★★
これまでも文章術本をたくさん読んできたけど、
これはぶっ飛んで「変」であった。いや、おもしろかった。
本文よりもコラムが勉強になった(笑)。
書くスタンスは人それぞれやなあ。

『路(ルウ)』(吉田修一、文春文庫、2015年)★★★★
台湾に日本の新幹線が走る。その建設事業を軸に、
さまざまな年代の人が織りなす人間ドラマ。
台湾は近い。
歴史的にも日本の占領下時代が半世紀もあり、つながりが深い。
街や風景の描写を読むと、台湾に行ってみたくなる。行きたい!!

『週末は、Niksen。―“何もしない時間”が、人生に幸せを呼び込む』
            (山本直子、大和出版、2020年2月)★★★
タイトルに惹かれて購読。ニクセンとは、オランダ語で
“何もしない”という意味。
日々の生活のなかに、何もしない時間を取り入れる。
オランダ在住の著者がニクセン生活を楽しくスケッチ。

『やがて海へと届く』(彩瀬まる、講談社文庫、2019年)★★★
親友が震災で行方不明になってから3年。
その死とどう折り合いをつけていくのかを綴った物語。
解説で、著者自身の体験がこの物語を生むベースになっていることを知る。
考え続けること、言葉にすること。文学の役割はおおきい。

『パリに行ったことないの』(山内マリコ、集英社文庫、2017年)★★★★
さくさく読めて、読後感よし。
それぞれのパリへの想いと機会が結びつき、第2部へのバカンス旅に。
不思議で魅力的で、人間的な物語。

『あしたの君へ』(柚月裕子、文春文庫、2019年)★★★★★
家庭裁判所の調査官補(調査官の研修期間中の名前)の奮闘記。
人生のつまづき、漂流、葛藤、そして争い。
調査官は、それぞれのバックボーンや背負っているもの、
そしてこれからの思いを大事に、寄り添いながら背中を押す役目。
よかった。

『勿忘草の咲く町で~安曇野診療記~』
             (夏川草介、角川書店、2019年)★★★★★
読後の爽やかさは相変わらず。舞台は安曇野。
神様のカルテとのつながりが一瞬出てきて嬉しい。
1年目の研修医と3年目看護師の恋ばなふくめ、
高齢者医療の現状と葛藤、魅力的な登場人物など、読みごたえあり。

『アルプスの谷 アルプスの村』(新田次郎、新潮文庫、1979年)★★★
山岳小説を書く著者の、アルプス紀行。1964年だから半世紀以上前のものだけど、アルプスの多様な顔や人びとの暮らしが伝わってくる。とくにスイスのアルプスが美しいようだ。アルプスの山陵をこの目で一度はみてみたい。

『ムーンナイト・ダイバー』(天童荒太、文藝春秋、2016年)★★★★★
天童作品は、いつも死がそばにある。
生と死のはざまで、もがき苦しみ続ける。
大震災と原発事故という激浪にのまれた、地域と生活、愛する人との記憶。
進入禁止の海域で潜り続けるダイバーが、喪失と生きる意味をつないでいく。

自分のために時間を使い、いつもの生活に。

きのう、3か月ぶりに、電車に乗った。
岡山駅までの在来線。

8時半。鮮やかな、青空。
自宅から最寄り駅まで、歩く。
まだ午前中は涼しく、気持ちがいい。

9時半。岡山メルパで映画をみた。

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韓国映画の『工作』(2018年)。
南北の対立と政治に翻弄されながらも、
最後は信念に生きる姿に引き込まれた。

12時。久しぶりの外食で、ラーメン屋に。
生ビールも頼み、ぐいっ。
買い物をし、カフェに行き、本屋で新刊を2冊買った。

自分のためだけに時間を使う。

14時。石山公園まで足をのばし、腰をおろす。
旭川と後楽園を眺めながら、買ったばかりの小説を読んだ。

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外での読書は、音が違う。
鳩の声、通りすぎる人の音。
しばし読書を中断し、音と動きを楽しむ。

よく歩いた。久しぶりに街中を歩いた。
コロナの影響はあらゆる場所に。
コロナを抱えながら、日常は続いていく。

17時半、帰宅。
いつもの生活。
苦労はありながらも、大切にしたい、私たちの生活。

淡々と過ごした5月。もう少し淡々と過ごします。

淡々と過ごしている。

5月もほとんど予定がなかったため、
読書とか、2回あった学習会(5人規模)の準備とか、
ルーチンワークの小仕事とか。

コロナ、全体的に落ち着いてきて、
岡山も新たな感染者の報告なく、入院している人もゼロだ。

社会・文化・経済活動もだんだんと再開されていくのだろう。
学習運動も。

6月8日(月)に常任理事会を設定したので、
そこで今後の運動のあり方や具体的企画など提起したい。

もうしばらく、淡々と過ごします。

4月に読んだ軽めの本たち

前にちょっと書きましたが、
4月は軽い読み物しか読んでいませんでした。
以下、読んだ順に、ぜんぶ紹介します。
おすすめ度を★の数(5点満点)でつけておきます。

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本の表紙も、面倒くさいのでまとめて。

『詩人の旅 増補新版』(田村隆一、中公文庫、2019年)★★★
その名のとおり、詩人による旅エッセイ。時代は1970年代。
隠岐、若狭、伊那、釧路、奥津、鹿児島、越前、越後、佐久、
浅草、京都、沖縄。当時の人びと、風景が伝わってくる。
それにしても、酒好き、女好きの詩人だ(笑)。


『くれなゐの紐』(須賀しのぶ、光文社文庫、2019年)★★★
大正時代の浅草が舞台。少女ギャング団で生き抜く底辺の少女たちを描く。
いつの時代でも、誰もが何かしらの荷物を背負っている。生き抜かねば。


『本のエンドロール』(安藤祐介、講談社、2018年)★★★★★
大手出版社などの本を刷る印刷会社が舞台のお仕事小説。
主要な登場人物、すべて本好き。
それぞれの個性や仕事観がぶつかりあいながら、
1冊の本ができるまでの舞台裏、人間くさい行程を描く。
本は不滅!本好きにはたまらん!


『孤独の歌声』(天童荒太、新潮文庫、1997年)★★★★
天童作品は初めてだったけど、衝撃の鋭利さ。
きつい描写も多いので、好き嫌い別れるかもだけど。


『寝ぼけ署長』(山本周五郎、新潮文庫、1981年)★★★★★
さすが、さすがの山本周五郎。深くて、ユーモアがあり、
ヒューマニズムあふれる、一風変わった警察小説。
山本周五郎って、本当に貧しい人たちが好きなんだなと思う。
これこそ愛だ。「どんなに貧窮のなかにもそれぞれ生きた生活のある」


『晴れたら空に骨まいて』(川内有緒、講談社文庫、2020年4月)★★★★★
筆者の『パリでメシを食う。』のような本(面白い人がどんどん出てくる)
でありながら、それぞれの喪失との向きあい方に言葉の光が。
父との時間を書下ろした部分もふくめ、
自らの近しい人を思い浮かべながら読んだ。死者とどう生きていくか。
読みやすく、読後感爽快。


『盤上の向日葵』(柚月裕子、中央公論新社、2017年)★★★★
将棋と刑事物が混じりあった長編小説。
展開が見事で、読みごたえがあった。
天童市や浅虫温泉、諏訪など行ったことのある場所が
舞台でイメージも豊かに。将棋好きならさらに楽しめそう。


『悼む人(上)』『悼む人(下)』(天童荒太、文春文庫、2011年)★★★★★
一気にぐいぐい読める。見ず知らずの他人の死の現場におもむき、
悼み、「覚えておく」旅を続ける青年の物語。
変人、病人扱いされながらも、周囲の人を変えていく。
着想がすごい。直木賞作品。
さいごの「謝辞」で著者が述べていた執筆過程の逡巡、
苦悩を読み、本作の重みがさらに実感できた。
他人の死、自分の死、誰かに必要とされ、必要とする。
他人の死を悼み、覚えておくことは、難しい。
難しいからこそ、誠実に向き合いたい。


『凍える牙』(乃南アサ、新潮文庫、2000年)★★★
オオカミ犬と主人公の女刑事の疾走場面が気持ちよい。
あとは、まあまあかな。これが直木賞受賞したのはよくわからんな。


『孤狼の血』(袖月裕子、角川文庫、2017年)★★★★
警察もの、しかも描かれるのはヤクザの世界…。
「盤上の向日葵」を書いた同じ作家とは思えない、すご小説。
広島の呉が舞台。警察と暴力団の癒着ともとれる展開の最後に、
おおお!という結末。おもわずプロローグの場面をもう1度読む。すご。
 

生誕200年。統計学者としてのナイチンゲール。

5月12日は、ナイチンゲールの誕生日。
また生誕200年(1820年生まれ)で、ちょこちょこ話題に。

で、今日はこんな本もありますよ、の紹介。

『統計学者としてのナイチンゲール』(医学書院、1991年)

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ナイチンゲールは、幼少期から数学が大好き、また得意で、
やがて統計学を研究し、実践に活かした人でもあった。

本書は、冒頭でこう指摘している(早川かつ「刊行に寄せて」)。

「ナイチンゲールはデータ収集の科学的方法を利用する
看護研究者であり、また事実の証明をグラフで示す熟練
した統計学者であった。
 彼女はデータを集め、分析して、よりよい看護の方法
を計画するという組織的研究を、1800年の半ばという時
代に行ない、理論的概念を看護の実践に適用したのであ
る。もし研究が看護ケアを進展させる方向のものならば、
その研究結果は実践に適用されなければならないもので
あって、ナイチンゲールはまさにその実践者である。そ
して看護理論が看護実践と看護教育の書くことのできな
い部分として統合されないならば、それは無用の長物と
なるのであって、ナイチンゲールはまさにその方法を示
したのである。
 ナイチンゲールは、スクタリの野戦病院で、傷病者や
瀕死の患者が夜間は看取られることなく、ただひとり
寂しく死んでゆくのを見て、早速データを集め、調査
した結果、彼女は彼女の看護師たちと夜間の看護を始め
たのである。したがって夜間の看護はこのときから始ま
ったといえる。さらに彼女は患者の環境、食事、個人的
ニードが看護の重要な要素であるという考えをもってお
り、それらの改善に不眠不休の努力を続けた結果、スク
タリの病院では6か月の間に死亡率が40%から2%に減少
したのである。
 このクリミアの白衣の天使は、傷病兵を愛し、正義の
ためには如何なる権力にも屈しなかった情熱の統計学者
でもあったのである。彼女は統計について進んだ考えを
もっており、データを集めるのに科学的方法を用いて、
実際の証拠を生き生きした統計グラフで示したのである」


ナイチンゲール自身の言葉も紹介しよう
「病院覚え書」(1863年)という論文の、しめの言葉である。

「真実をつかむために私はいたるところに情報を請求し
たが、比較検討の目的にかなうような病院記録をほとん
ど手に入れられなかった。それらが手に入れば、ここに
言及したほかの多数の問題にも判断が下せたかもしれな
い。そうしたものがあれば、それら病院の財力がどのよ
うに使われているか、本当にはどのくらいの利益が得ら
れたか、財力は利益どころか危害をもたらさなかったか
どうか、などの記述が出てきたであろう。各病院の実際
の衛生状況も告げてくれるであろうし、その記述に不健
康の原因とその種類を探し求めることもできるであろう。
そしてもしうまく利用すれば、そうした進歩した統計は
現在確認しているものよりもより比較価値のある特殊な
手術や治療方式をわれわれに知らせてくれるかもしれな
い。さらに、いろいろな病気の患者の同居、過密でおそ
らく換気不良の病室、位置の悪さ、排水の悪さ、不純な
水、清潔の不足、あるいは以上全部の反対の状態を備え
た病院が、そこの病室で経験される手術や疾病の一般
経過に及ぼす影響をも確かめられる可能性がある。かく
して確認された真実をもとに、われわれは生命と苦しみ
とを救うことができ、また病気や負傷した貧民の治療と
管理とを改善することができるであろう
  (『ナイチンゲール著作集 第2巻』現代社、325P)

いま新型コロナウイルスの感染拡大で、
日本は検査数があまりに少なく、感染者の概数や
感染傾向を、誰も把握できていない。

事実や統計を軽視した政治は、「生命と苦しみ」を
救うことはできない。

いま、ナイチンゲールが生きていたら、
烈火のごとく怒り、「真実」「統計」を求める行動を
起こしているだろう。命を救うために。

ごく簡単な、近況報告。

ありがたいなあ。

今日、『学習の友』の配達でいくつか職場をまわっていたら、
「あ、長久さん!元気なんですか!?」
「フェイスブックぜんぜん更新してないんで、
心配してたんです。お顔がみれて良かった」
と、幾人から声をかけられた。

ブログも、FBも、3週間ほど更新していなかった。
こんなことは初めてのことだ。
毎日なにかしら書いていた人間が、断りもなく
ぷつっと書くのをやめたら、たしかに心配になる。

すみません。

理由は自分でもよくわからないけど、
書くには気力も体力も必要だから、
それが弱っていったのだと思う。

3月終わりに、5月からの労働学校の延期を決めたときから、
徐々に、心の張り合いが「プツッ」「プツッ」と
1本ずつ切れていく日々だった。

燃えに燃えていた取り組みの、突然の喪失。
楽しみにしていた学習会や研修会は次々となくなり、
スケジュール帳はどんどん真っ白になっていく。

介護生活の息抜きだった県外講師仕事も、ない。
飛行機や電車に乗り風景を眺める。そんな気晴らしが、できない。

いまの生活が苦痛なわけではない。
が、生活の変化に、心がおいついていないのかもしれない。

柔軟なメンタルの持ち主であるぼくも、
さすがにこの状況は、しんどいなと思い始めた。

しかし、こういうときの対処法は心得ている。
仕事のことは考えない、切り離す。
「こんなときだから頑張らねば」と思わない。
自分の好きなことをして過ごす時間を増やすことだ。

4月に入ってからは、学習会もゼロになり、
16日の岡山県学習協の総会が、唯一の仕事らしい仕事。

自由な時間が増えた。でも、仕事に関わる勉強はしない、と決めた。
(新聞は毎日読んでますけど)
仕事も頑張らない(というか人に会えないで頑張りようがない)。

まず熱中したのは、韓国ドラマの『ホジュン』を
アマゾンプライムでひたすら見たこと。
135話(1話30分程度)もある、時代物・医療物。
『チャングム』のような展開のおもしろさで、
4月の中頃にはすべて見終わってしまった。

4月後半からは、ひたすら軽い読みもの、
小説とかノンフィクションとか旅エッセイとかをズンズン読んでいる。
(そのうち紹介します)
物語は、人を救う力がある。
(そのうち読んだ本、紹介します)

5月も、ほぼ、何もない。
だけど、やはり難しい本には手を出さず、
しばらくこの時間を楽しみたいと思う。

相方と予定していた3月、4月の旅行も中止。
楽しみにしていて宿も押さえていた8月の青森、ねぶた祭りも中止。
幸い、日々の自宅生活にはとくに変わりなく、
ヘルパーさんはじめ、多くのみなさんに支えられて、
今日も相方は美味しいものをパクパクと食べている。

そうそう。

3月10日から、恒例の「失敗しないダイエット」をはじめて、
いま5キロ減。今回は、68キロまで落とそうと思っている。
40代になってから、68キロ台は経験がない。ちょっと楽しみである。

以上、ごく簡単な近況報告。

楽しく生き延びていきます。
みなさまも、ご自愛ください。