先週木曜日(6日)は、85期岡山労働学校の第4講義。
15名の参加でした。
テーマは「貧困と向きあう―ほっとスペース25の活動から」で、
倉敷医療生協労組書記長の山下順子さんが講師。
山下さんは、今回の講義のキーワードとして、
「自己責任」「可視化」「つながり」ということをあげました。
つい最近でも、大阪で母子が餓死する出来事が
マスコミでも大きく報道されました。
日本の貧困問題、社会保障の脆弱さはものすごく深刻な
段階にきていると述べられ、
こうした問題を2009年に水島で立ち上げられ活動している
「ほとスペース25」の取り組みなどを通じて考えたいと
お話をされました。
「ほっとスペース25」とは、
相談者がこられて「ほっとする場所」にしたい、
そして憲法25条をかかげる取り組みとして
名づけられました。
きっかけは、2008年秋、全国各地で大量の
派遣労働者・期間工が解雇された社会問題でした。
水島地域でも、三菱自工で1400人の雇い止め、
関連会社もおおきな打撃を受ける、
三菱病院も閉鎖など、深刻な事態がすすんでいました。
そして、相談内容も、労働相談だけでなく、
たちまちお金がない、住む家がない、
病院にかかれない、法律的な相談など、
全生活分野に広がってきたことも大きな変化でした。
「地域の労働者や住民のいのちとくらしを
守るセンターを水島でもつくらないといけない、
という議論のなかから、
緊急一時宿泊所つきの相談センターであることと、
生活再建までの支援が継続的におこなえる体制をもった
「ほっとスペース25」が設立されました。
設立当初から、深刻な相談が続々と入ってきました。
2009年2月10日~2013年3月31日までの統計でいうと、
相談件数522件、相談者数552人、宿泊者数284人、
となっています。
相談にこられる方の特徴は、職や住まいを失っているにも
かかわらず、「自己責任」と考えさせられている傾向が強く、
誰にも助けを求めず自分の力でなんとかしてきたのだが、
いよいよお金もなくなり、最後の最後にSOSを出してくる
ということが語られました。
年越し派遣村が可視化した「貧困」が、倉敷、水島の地でも
起っているという現実が明らかになったと述べられました。
本来なら仕事を失えば失業給付が受けられ、
収入がないなら生活保護制度があり、
病気になれば健康保険があって、
老齢になれば年金が受けられるという社会保障の
セーフティーネットがあるにもかかわらず、
そうした社会保障から排除されているのが
非正規労働者の現実であることが強調されました。
そして、水島で首切りされた非正規労働者の話をきくと、
いつか正社員になれるいことを夢見てがんばってきた
人が多く、会社のために長時間労働にたえてやってきた
のにも関わらず、減産になったら使い捨てになり、
企業の身勝手な首切りによって生命の危機にまで
事態がおよぶという問題を告発。
さいきんの相談では、実態がより複雑かつ多様になっており、
社会の矛盾が貧困層にさまざまな形で
あらわれていると指摘されました。
とくに、医療現場からみた貧困という問題でいうと、
無保険や国保資格証の増加、受診抑制、
自分の健康より仕事を優先させる状況などが
語られました。
ほっとスペース25の活動は、行政を動かして
きたことも、おおきな成果だったと述べられ、
迅速な生活保護の適用、
離職者への緊急の市営住宅を追加募集、
緊急援護資金2万円の貸付制度の延長、
そして最大の成果として、倉敷市が
市独自の「緊急一時宿泊所」を設置したこと
ということが紹介されました。
ほっとスペース25の取り組みは、かつてない
支援の広がりと連帯の輪をつくりだしたことが、
とても大きい確信になったこと、
「本当に必要な人には情報が届かない」という
議論から、倉敷駅などの周辺を夜回りし、
お弁当や情報を伝えるボランティア活動も
積み重ねられてきたことが紹介されました。
そうした取り組みのなかで、人と人とのつながりの
なかで生きる意欲や希望をとり戻していく人が
たくさん生まれ、「つながりあうこと」の大切さが
あらためて実感できたと語られました。
いま、生活保護をめぐっては、政治家やマスコミなどによる
バッシングの嵐のなかで、給付基準の引き下げや
生活保護申請を難しくする「水際作戦」の合法化などが
すすめられようとしていて、
運動をますます広げながら、自己責任論を克服し、
貧困を可視化し、憲法にもとづいた地域や社会、
人が人として大切にされる社会をつくることが
求められていると強調され、講義をしめくくられました。
たくさんの事例を紹介されながらの講義で、
とても説得力があり、かつあたたかい人間の輪を
感じることができた内容だったと思います。
講義後の感想交流の風景。
以下、参加者の感想です(一部)。
◆社会保障の向上なしに私たちの生活はどんどん
悪くなり、生きていけない状態になったときのことを
考えると自分はどうなるんだとうと、不安ばかりです。
これから先の老後、少ない年金で生きていける
気がしません。
◆ほっとスペース25、はじめて知りました。岡山県で
こんなひどい派遣切りで大変な思いをしている人が
いるなんて。まだ知らないことが多い。まだ勉強したい
です。
◆ずっと続けられていることがすごい。ずっとコンスタント
に今も相談が来ていることも驚き。状況を知れていないな、
可視化って大切だと思いました。限界までがんばって
相談するのではなく、もっと早い段階で手を打てれば、
より良い形で元の生活に戻れると感じました。早い段階で
頼ったほうが良いのだという空気づくりが必要ですね。
◆ほんと「助けて」と言える、聞ける社会をつくりたい。
政治について考えられる生活にしたい。
◆ほっとスペースに来られた人たちのリアルな言葉が
心に残りました。温かい食べものが食べられなくて
冷たくなるまで待っていたという話にはびっくりしました。
1日半眠り続けたり、3時間も話をしたり・・・。狭い社宅に
押し込まれて、文化も何もないですよね。人間の生活
じゃない。でも人ごとではないので、何とかせねば。
◆生活保護の改悪は人事じゃない、今本当に困っている
人たちはたまたま自分じゃなかった誰か。人生何が
おこるかわからない。貧困は生活だけでなく、社会からも
切り離される。自分や周りの大切な人がそんなことに
なったらどうか。もっと想像力をもって考えていきたい
と思いました。人とのつながりは本当に大切!!
それがなくなるのは本当にツライ。
◆今日は、普段から気になっている問題をわかりやすく
話して頂き、またその後も班で討論したことで、色々な
意見を聞くことができ、新しい見方や考え方に触れ
有意義なものとなりました。来ている(参加している)
人達が、みな前向きで明るく、とても話しやすい雰囲気
でした。初参加でもなじめ易くて良かったです☆