長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

連載「チラシ・ニュースづくりの基礎知識」 (7)

第7回「ニュースづくりの基本(1)―人にこだわる」

 

【人間は、人間にいちばん関心がある】

 

 読まれるニュースとは、どんなニュース・機関紙でしょうか。

読ませる技術的な工夫もさまざまありますが、なんといっても

読者を引きつけるのは、素材としての「人」です。「人にこだわり、

人に執着する」というニュース・機関紙づくりの姿勢をいちばん

大事にしてほしい。これをまず強調したいと思います。

 

 逆にニュースで読まれないのは、たんたんと事実や報告だけが

書いてあるものや、数字、データにかたよったものです。もちろん

客観的事実の記録にはなりますが、読み手にせまる力が弱い

のです。たとえば集会や取り組みの報告記事を書く場合でも、

かならず「参加者の声」「そこにいた人のリアルな姿」を載せるこ

とが大事です。

 人間がいちばん関心をもつもの。それは、人間です。わたした

ちはなぜ小説を読み、映画やドラマを見、お芝居を観賞するのか。

それは、そこに人間がいる、もっといえば人間の喜怒哀楽やドラマ

があるからです。

 ニュース記事は、「他人とは取り替えがきかない『個人』が登場

してきて、この人でなければ言わないセリフ、表現」が出てくる

ニュースや機関紙は読まれます。そこに、「個」のリアルな声や

姿があり、「個」の喜怒哀楽をつうじて、その背景にある職場の

問題や社会構造をあぶりだすことができたなら、その記事は読者

の共感を広げることになると思います。

 情勢を知らせることは大事。活動の記録を広く伝えることも大事。

あわせて、その記事のなかに、固有名詞をもつ「個人」を登場させ

てこそ、記事への関心や説得力が増すのです。

 

【人と人をつなげるニュース・機関紙】

 

 ニュースや機関紙は、人と人をつなげる役割をもちます。「この

前ニュースに写真でとったなあ!」「あの記事、読んだよ!」という

交流。「へえ、こんな人がいるんだ」「この感想、すごく共感できる」

など、つながりと共感を生み出すことができます。

 たくさんの人が登場し、たくさんの人が記事や感想を投稿してく

れるニュースや機関紙は読者に愛されます。運動の力にもなり

ます。逆に、一方的なお知らせ、上位下達のニュースや機関紙

では、なかなか前向きな変化はつくれません。

 

 「人にこだわり、人に執着する」。言うのは簡単ですが、いざ

ニュースづくりをするとなると、たいへんです。私も岡山県学習協

の会報をつくるときには、できるだけたくさんの人に登場してもら

いたいと思いますが、忙しいとどうしても「安易」な方向に流れて

しまいます。「安易」とは、「自分ひとりだけで書ける記事」で埋まっ

てしまう傾向です。

 「この本の書評書いてほしい」「あの集会の参加記をぜひ寄せ

てほしい」「インタビュー記事を載せたい」など、多くの人との協力

のなかで生まれる記事は、思いどおりにいかないこともあり、

手間ひまもかかりますが、やっぱり面白い。

 つねに「人」が登場し、伝えたい声、届けたい気持ちがあふれ

ているニュースや機関紙づくりに、こだわっていきましょう。