昨夜の89期労働学校最終講義のレジュメです。
(一部割愛しています)
一。マルクスが考えた「次の社会」(未来社会論)
1。未来(理想)社会は、目の前の社会の分析のなかから
◇未来社会を描くのは人間の力でもあるが
*マルクス(1818~1883)以前にも、資本主義ってダメなんじゃない
かと、理想社会を描いた社会活動家はたくさんいた。
◇マルクスは、徹底した資本主義分析から、未来社会の芽をつかみだした
◇資本主義の矛盾とそのあらわれ(あらためて確認)
2。利潤第一主義を克服する社会
-マルクスは「社会主義」「共産主義」社会と呼んだ
◇矛盾の解決策。利潤第一主義を生み出す仕組みそのものの変更。
*下流での対処(資本主義の矛盾への対処)と同時に、上流での解決。
どんなにすばらしい「社会的バリケード」を築いても利潤第一の
生産のあり方は変わらない。そこを根治する。具体的には、
“生産手段の社会化”がポイントになる。
*生産手段の私的所有がさまざまな諸問題の源流となっているから。
「資本どうしのはてしなき競争」を生んでいる。
◇生産手段を社会化するとは?
3。「次の社会」への道すじについて
◇段階的に、1歩1歩国民合意を経ながらすすむ
◇過渡期が長期にわたる(すぐに資本主義は終わらない)。
市場経済との併存。
◇国家(権力)を、支配階級による国民支配の道具から、国民の
民主的管理に。
4。貧困の一掃。労働の性格の転換。
◇富の合理的な分配が可能となるー貧困の解消
◇経済の計画的運営を本格的にすすめることができる
◇労働は、本来の人間的な性格を取り戻す
二。「次の社会」の目標は「1人ひとりの発達」と「人間的幸福」に
1。人間の全面的発達の機会と条件を保証することが、
社会全体の目標となる
◇労働時間の大幅な短縮がその前提に
◇労働時間の短縮が、なぜ人間の全面的発達につながるのか
*人類の歴史をみよう。哲学、学問、芸術文化、音楽、スポーツ・・・。
自由な時間の獲得により発展してきた。創造する。「つかう」と
「つくる」の相互発展。人との交友。旅行。趣味。ぼんやり。
考える。読書。自然満喫。
*1人ひとりには多様な能力。発達させるには時間が必要。時間が
なければその能力は埋もれたままに。「時間は人間の発達の場で
ある」(マルクス『賃金、価格および利潤』)
*「労働時間は、たとえ交換価値が廃棄されても、相変わらず富の
創造的実体であり、富の生産に必要な費用の尺度である。しかし、
自由な時間、自由に利用できる時間は、富そのものである」
(マルクス『資本論61~63年草稿』)
◇ひたらくいえば「ゆとりの拡大」
*労働時間が1日7時間→6時間→5時間となっていくイメージ
(その分自由時間が拡大する)。あるいは週休3日とか、
バカンス(長期休暇)の拡大など。
*たとえば年間200日労働し150日は休日。あるいは、いずれ
労働日と休日の数が逆転していくようになるかも。
→ただこの労働時間の短縮は、現在の人類の生産力からすれば、
そう遠い未来ではないとも言われている。現にヨーロッパでは
7時間労働の国もあるし、スウェーデンなどでは、一部の企業
や自治体で「6時間労働制」の試みが行われている。日本のよう
に働きすぎれば病気にもなりやすく、逆に非効率とも言われている。
◇人間社会の飛躍的発展の時代が開かれる
*すべての人の自由時間の拡大により、すべての人の多様な能力の
発達が保証される社会になる。その当然の結果として、個人の
発展が、社会の発展へと結びつく。「各人の自由な発展が万人の
自由な発展のための条件である共同社会」(マルクス・エンゲルス
『共産党宣言』)。人類史の新時代。
2。未来を引き寄せるための手段を、私たちはすでに持っている
◇1人ひとりの人間の発達が保障され、健康で文化的な生活が守られる。
◇個人の尊厳。ひとりも見捨てない社会、誰も置き去りにしない社会。
*このようなスローガン・理念は、じつはすでに日本国憲法でかかげ
られている「社会像」でもある。だから未来を引き寄せる手段の
ひとつを私たちはすでに手にしているといってもよい。憲法どおり
の国をめざすことが「次の社会」へとつながる。
3。労働時間の短縮は現在の社会変革の条件でもある
(ゆとりはたたかい取るもの)
◇民主主義、主権者としての成長、集まれる時間、考える時間・・・
「われわれは、労働日の制限こそ、それなしには改善と解放のため
の他のいっさいの企てがむだに終わるような予備条件であると考え
る。それは労働者階級、すなわちあらゆる国民の基幹をなす多数者
の体力と健康とを回復させるために必要である。それは、知識的発
達や社会的交際や社会的政治的活動の可能性を労働者に返還させる
ためにも、それにおとらず必要である。われわれは、労働日の法定
限度として8労働時間を提案する」
(1866年9月、ジュネーブの国際労働者大会の決議)
三。「経済学教室」のまとめとして
1。私たちは、どんな時代に生きているのか
◇いま私たちが生きている資本主義社会は、人類史の1つの通過点
◇21世紀という時代ー「次の社会」へ向けた助走が加速される世紀
*資本主義の矛盾が世界的に表出。ピケティの問題提起。資本主義
のままで人類はいいのか?の問い。資本主義をのりこえた「次の
社会」をめざす流れが、おおきく広がる時代に。そのためには
「万国の労働者よ、団結せよ!」の呼びかけの実現。
2。1人ひとりが歴史の主体者として成長する
―学びあい・伝えあいを身近な場所で
◇「次の社会」を引き寄せる力は、それを自覚し努力する人びとの
「自発性」「団結」
*社会に適応するだけでなく、社会の進歩に主体的に参画する生き方を。
◇手をつなぐ仲間を増やす。そのために自分が成長する。場をつくる。
学びを大事に。
*「自分のまわりは…」と嘆くだけでなく、きっかけや場をねばり
強くつくる努力。
*1人ひとりが発信する。表現する。自分の言葉で。
*伝えあいの質が、連帯・協力の質を規定する。納得と共感。
高まりあい。
さいごに:1人ひとりを大事にしない政治、憲法なんか関係ないという政治。
ならば私たちは、活動のなかで、1人ひとりを大事に、
育ちあう運動をつくろう。
そうした努力は、かならず未来へとつながる。
2か月間、おつかれさまでした☆