きのうのソワニエ看護専門学校の授業で紹介した本です。
『国が地域医療を滅ぼす日―迫りくるデュオ・ピークスの脅威』
(大野健次、ワニブックス、2016年4月)」
*著者は「笑って死ねる病院」で有名になった、金沢の
城北病院の院長です。専門は消火器内科。
*高齢者数のピークをむかえるが2025年。死亡者数の
ピークは2040年。この2つの「危機」について語られて
います。しかし本当の脅威を招くのは国の政策だと告発。
*第3章の“「相談室日誌~命をまもるトピックス~」よ
り20の物語”は、医療ソーシャルワーカー(MSW)
さんの現場報告集。貧困と格差が広がる状況のなかで、
「病院にくること」がいかに高い壁になっているかが、
よくわかります。
*ちなみに、医療や介護において、親身に相談にのって
くれる医療ソーシャルワーカーは欠かせない職種ですが、
診療報酬上でMSWは認められていないため、MSWの
方々がどんなに仕事をしても、病院に収入には直接結び
つかないとということを初めて知りました。そのため、
どの病院も十分なMSWを配置することができていない
そうです。おかしなことです。
*医療費の伸びは高齢者の増加に原因があるのではなく、
医療の高度化に原因があることも、データを示しながら
紹介されています。
*全体的に、いまの医療や介護をめぐる情勢がどうなっ
ているのかをコンパクトに学べる内容になっています。
国の政策によって現場のたいへんさが左右されるのが
医療や介護です。だからこそ、職場のあり方とともに、
社会や政治にも関心を向けなければ、ほんとうに安心し
た医療をすべての人が受けられる国にはなりません。
*関連して、以前読んだ『笑って死ねる病院』(テレビ
金沢、ワニブックス、2009年)も城北病院のすばらしい
実践が紹介されていて、おすすめです。