『塚本晋也「野火」全記録』(塚本晋也、洋泉社、2016年8月)
を読み終える。
昨年、映画館でみた塚本晋也監督の『野火』。
太平洋戦争のフィリピン・レイテ島での日本兵の苦悶と
徹底した戦場の非日常性を描いている。
あまりの凄惨な戦場の描写に、見終わったあとは呆然。
もう2度と見たくない映画だが、見てよかった映画でもある。
本書は、その制作過程と関わった人のインタビューなどで、
作品の深層にせまる。
金がない人がないという、自主映画。数々の壁。
なぜ、そこまでこの映画製作にこだわったのか。
塚本監督の時代認識と危機感。
戦争映画をつくる視点にも共感。
あ、でもまだ原作、読んでないんだよな~。
気の重い読書になるけど、読まなきゃな~。
以下、塚本監督の言葉。
「作っても総スカン喰らう世の中になるか。それなら
いまのうちに、このイヤ~な空気に一石を投じる映画
を作るしかない。平和ボケした人たちの頭をハンマー
でひっぱたくような映画を世に送り出さねばならない」(20P)
「戦争のことだけはムキになってしまうんですね。ど
うしても戦争に近づいているとしか思えなくて」(90P)
「恐ろしい過ちをした過去に美徳を見いだそうとして
いる空気」(91P)
「戦争へ行ってしまうと、そこで行われるのはやりす
ぎの世界ですので、ここまで描かないと(表現が)足
りなくなってしまいます。戦争はそこへ行けば人間の
体が尊厳もなく急に物に変わってしまいますので、映
画の中でもきっちりと、やりすぎな表現をしました」(126P)
「自分としてはやられたことを声高に言うよりは、や
ってしまう可能性が十分にある、人を殺してしまうこ
ともある、という戦争の恐ろしさのほうなんです。こ
の映画では、加害者に誰しもがなってしまう恐怖を描
いてみたかった」(128P)