長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

相変わらずなんの系統性もない、乱読。

最近読み終えた本。
といっても、しばらく紹介してなかったので、たまってしまいました。
本の表紙は省略で、字だけです。


『市民とジェンダーの核軍縮―核兵器禁止条約で変える世界』
                                        (川田忠明、新日本出版社、2020年9月)
前半は国際政治の舞台で市民社会(NGOなどの運動)の
力が大きく前進し、核兵器禁止条約成立にも太く流れていた歴史を。
後半は戦争や核軍縮におけるジェンダー視点の発展。勉強になった。


『「非正規」をなくす方法~雇用、賃金、公契約』
          (中村和雄・脇田滋、新日本出版社、2011年)
刊行から9年たつが、非正規労働者の状況は、
思うような改善がみられない。本書も指摘しているが、
必要なのは個々の労使間での問題解決ではなく、
大きな戦略と産業別の運動、そして立法だ。


『能力・貧困から必要・幸福追求へー若者と社会の未来をひらく教育無償化』
         (渡部昭男、日本標準ブックレットNo.21、2019年3月)
コンパクトながら、多様な論点から、なぜ教育無償化なのか、
どうすれば、を記述。お隣韓国での学費負担軽減の運動と取り組みも。
変えるのはやはり運動だ。


『ソーシャルワーカー~「身近」を革命する人たち』
  (井手英策・柏木一恵・加藤忠相・中島康晴、ちくま新書、2019年)
熱い書であった。ソーシャルワーカーは社会正義とすべての人の
人権擁護を使命にしなければならない、
そのための問題提起を恐れずに発信。「専門性の弊害」には共感。


『自己責任社会の歩き方~生きるに値する世界のために』
             (雨宮処凛、七つ森書館、2017年)
マガジン9の連載を加筆・編集したもの。
このかんの様々な出来事や社会問題を思い起こしながら読んだ。
著者も言うように、自己責任とか、働く苦しさとか、1
0年前から変わってない。早く変えたい。


『食べるとはどういうことか~世界の見方が変わる三つの質問』
               (藤原辰史、農文協、2019年)
12歳~18歳までのわかもの8人と藤原さんの
「食べる」をめぐる座談会。内容もおもしろいし、
藤原さんのコーディネートぶりが素晴らしい。
哲学や学問のおもしろさも熱く語られている良書。


『給食の歴史』(藤原辰史、岩波新書、2018年)
めっちゃ面白かった。とくに、給食の歴史に一貫して流れる
「貧困家庭の子どもたちの救済」には深い感銘を受けた。
また運動史的なアプローチも関係者への取材や丹念な研究で
説得力がある。コンパクトだし、給食に関心ある人はぜひ一読を。


『「桜を見る会」疑惑 赤旗スクープは、こうして生まれた!』
    (しんぶん赤旗日曜版編集部、新日本出版社、2020年9月)
取材過程がリアルで一気読み。健在するジャーナリズム。
地域に根をはって活動している共産党の人脈を生かし、
自民党関係者や政治的立場の違う人にも突撃。すごいわ。


『エンド・オブ・ライフ』
 (佐々涼子、集英社インターナショナル、2020年2月)
『エンジェルフライト』『紙つなげ!』の著者だからという
理由で読んだら、引きが強すぎてひりひりした。
書くことの全人性。佐々さんの実母が相方と同じ神経難病という偶然。
在宅医療と死、そして生の物語。


『朝が来る』(辻村深月、文春文庫、2018年)
ふたりの母、不妊治療、特別養子縁組、そして狂いゆく人生。
ラストシーンに救いと希望。とても良かった。
解説は、この小説を映画化した河瀬直見監督。


『依存症臨床論~援助の現場から』(信田さよ子、青土社、2014年)
なぜこの本を買ったのかすでに覚えていないが、
タイトルから連想する内容とは少し違った。
精神医療から距離をとり、カウンセラーとして依存症患者
(とくにアルコール)とその家族に向き合ってきた著者の歩みと思索。


『買い物難民対策で田舎を残す』(村上稔、岩波ブックレット、2020年10月)
徳島で移動スーパー事業を経営する著者による買い物難民の現状と対策。
買い物なしに生活できないという意味では人権問題だし、
買い物行為には多面的な役割があるという面でコミュニティ維持にも。
公助必要。


『とめられなかった戦争』(加藤陽子、文春文庫、2017年)
著者は、日本学術会議任命問題で菅首相により排除された
学者のおひとり。2011年にNHK教育テレビで4回にわたって
放映された内容に加筆。日本の近現代史が専門。
わかりやすく、日本が戦争へと暴走した歴史と要因を学べる良書。


『障害者とともに働く』
  (藤井克徳・星川安之、岩波ジュニア新書、2020年10月)
人はなぜ働くのかの問いから入り、障害者労働問題に分け入る。
実際の現場の紹介、権利や制度からみた障害者労働施策の課題など。
障害者がともに働く職場があたりまえの社会は、
すべての人が働きやすい社会。


『宇宙飛行士、「ホーキング博士の宇宙」を旅する』
         (若田光一、日本実業出版社、2020年9月)
ALS患者でもあった理論物理学者、ホーキングの言葉を導きに、
宇宙飛行士の若田さんが、宇宙、科学、人間、人生、夢と希望、
生と死、未来などをテーマに語る。深く広く、そしてわかりやすい。


『世界の果てのこどもたち』(中脇初枝、講談社文庫、2018年)
出身も境遇も違う3人の少女が1940年代満州で出会い、
短くも忘れない記憶となった友情体験。
侵略戦争と植民地政策、戦後の混乱に翻弄されていく少女たちの物語。
これこそNHKの朝ドラや大河ドラマでやってほしい、傑作小説。


『言魂』(多田富雄・石牟礼道子、藤原書店、2008年)
再読の書簡集。自宅本棚でみつけてパラパラめくって
読んだ跡がなかったので、「未読のこんな本があったのか」と
思い読み進めていたら、最後のあとがきのところに自分の
線が引いてあった(苦笑)。
自分のブログを検索すると、2008年の出版直後に読んでいた…。


『海をあげる』(上間陽子、筑摩書房、2020年10月)
沖縄で未成年の少女たちの支援・調査に携わる著者によるエッセイ集。
大学教授の肩書きだが、作家並の文才で読みやすい。
しかし、内容は娘さんとの日常など明るさをもちつつも、
現実の重さと理不尽さを。聴くという仕事の厳しさも。


『スーパーリッチ~世界を支配する新勢力』
       (太田康夫、ちくま新書、2020年10月)
100万ドル以上の富を保有する富裕層は世界で4700万人。
10億ドル以上を持つビリオネアは約2000人。
少数者に富が偏る超格差社会だ。
富と社会の支配者の実相を明らかにするが、変革の展望はやはり語られず。


『神、この人間的なもの―宗教をめぐる精神科医の対話』
             (なだいなだ、岩波新書、2002年)
2人の精神科医が宗教をめぐり語りあうという形ですすむ。
徹底して不安や恐怖にかられる人間から、
宗教や神をとらえる姿勢は重要。平易な文体。
この宗教論が正しいのかどうかは、よくわからない。


『自閉症は津軽弁を話さない~自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く』
             (松本敏治、角川ソフィア文庫、2020年9月)
「自閉症の子は津軽弁しゃべんないのさ」。
妻のひと言から始まる10年越しの研究。
方言の社会的機能や自閉症児の社会性障害という特徴が交差しつつ、
真相にせまる。


『海峡の光』(辻仁成、新潮文庫、2000年)
函館で刑務所看守をする主人公。小学生時代に自分を苛め続けた
優等生が受刑者として現れるところから、物語は始まる。
陰鬱な雰囲気だけれど、詩的な描写が包み込む。芥川賞受賞作品。