最近読み終えた本。
『ケアするのは誰か?~新しい民主主義のかたちへ』
(ジョアン・C・トロント著、岡野八代訳・著、白澤社、2020年10月)
フェミニズムの立場からケアや民主主義を問い直す論考と問題提起。
トロントのケアの定義が広くて新鮮だった。
ケアの普遍性と相互性。社会や政治もこの視点で見る!
「市場は、誰が、どのようなケアを受け取るかについて、
倫理的な決定ができません」(23P)
ケアとは、
「わたしたちがこの世界で、できるかぎり善く生きる
ために、この世界を維持し、継続させ、そして修復
するためになす、すべての活動を含んでいる。世界
とは、わたしたちの身体、わたしたち自身、そして
環境のことであり、生命を維持するための複雑な網の
目へと、わたしたちを編みこもうとする、あらゆる
ものを含んでいる」(24P)
「この世界の隅々に至るまできちんと動かそうとする
努力」(25P)
『人に寄り添う防災』(片田敏孝、集英社新書、2020年9月)
激甚化する災害のなかで、私たちはどのような
心構えでそれと向き合うのか。
被災地での聞き取りや防災会議での経験ふまえながら、
悩みも率直に吐露。
個人の事情や心情まで配慮しながら
「人が死なない防災」を考える良書。
災害時の要配慮者(高齢や障害で逃げづらい人)対応の問題では、
西日本豪雨災害時の真備町のことが詳しく紹介されてます。
災害時における「自助・共助・公助」の関係性とその変遷も。
『いつもいいことさがし 3』(細谷亮太、暮らしの手帖社、2020年9月)
尊敬する小児科医のエッセイ集。
「暮らしの手帖」の連載をまとめた第3弾。
なんと20年以上欠かさず連載を続けてこられたと。
文に人が表れるというけど、細谷先生の文章はまさにそう。
優しいまなざしは不変。
『コロナ・パンデミックと日本資本主義~科学的社会主義の立場から』
(友寄英隆、学習の友社、2020年11月)
副題にあるように、著者が特に力を入れたのが、
科学的社会主義の立場から体系的にコロナ・パンデミックを考察すること。
いやはや、多面的で射程広い研究で、さすがです。
『アルコール問答』(なだいなだ、岩波新書、1998年)
ものすごく面白かった。
いわゆるアルコール依存(アルコール中毒とも言われる)と
向き合ってきた精神科医の臨床知がつまっている。
しかも対話形式での叙述でわかりやすいし読みやすい。
アルコール中毒の歴史もわかるし、これは名著ですな。
むかしは、アルコール中毒などはなかった。
そもそも毎日お酒を飲めるような人はごく一部だった。
資本主義によってお酒が商品化され、大量生産され、
安価になったためだと。だからアルコール問題は
最初から社会問題として立ち現れてきた。目からウロコ。