今夜(12日)は、県労おかやまの常任幹事会での
6回目の学習会です。これから。
「企業(使用者)に人権を守らせる」という
テーマです。これって、すごく大事な、組合活動の
根源にかかわることだと思っています。
以下、レジュメを紹介します。
1。筒井晴彦論文に刺激を受け
◇「企業は人権をまもれ! 企業の社会的責任を強化する国際社会」
(『学習の友』8月号)
*企業行動が人権におよぼす悪影響(国家権力なみの強さ。とくに
多国籍企業)。労使間の基本的人間関係のうえでも、使用者が圧
倒的に立場が強い。人権侵害が起きやすい領域。
*国連は2000年代にはいってから、企業に人権尊重をもとめる国際
文章をあいついで採択。国連「グローバル・コンパクト」、国連
「保護、尊重および救済:ビジネスと人権のための枠組み」、国
連「ビジネスと人権にかんする指導原則」(いずれも法的拘束力
はない)。
*①企業は人権を尊重する義務がある、②企業は人権侵害に加担し
てはならない、③国家は人権侵害を救済する義務がある。
*国連は、ビジネス分野における人権尊重をいっそう強化するため
に、2015年夏、法的拘束力のある条約づくりをスタート。多国籍
企業への規制強化の方向。
2。あらためて、人権とはなにか
◇人権とは
*すべての人が生まれながらにもっている、人間らしく・その人ら
しく生きるための自由および権利。誰にも奪えない固有もの。
*その核心となる価値観は、「個人の尊重」「個人の尊厳」。
*そこから導き出される「幸福追求権」。さらにそこから個別の具
体的人権が派生。
「尊重されるのは、だれだろう。それは、『わたし』であり、
『あなた』である」(文部省著作教科書『民主主義』)
◇個人とは、人権の主体であるということ
*私たちは、1人ひとりが、生命・自由・幸福追求、そして生活に
ついて「自分でプロデュースすることのできる存在」であること。
封建制社会の人間とは区別される近代市民。
*人権の主体である「個人」であるということは、自分の生命や
自由や幸福追求や生活について「奪おうとするもの」「侵害す
るもの」に対して、それを除去するための努力を行う存在であ
るということ。「不断の努力」(憲法12条)を担う人、とい
う意味。
「人民を絶対的暴政のもとに圧倒せんとする企図を表示する
にいたるとき、そのような政府を廃棄し、自らの将来の保安
のために、新たなる保障の組織を創設することは、かれらの
権利であり、また義務である」(アメリカ独立宣言、1776年)
◇「人権目録」としての日本国憲法
「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年
にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、
過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すこ
とのできない永久の権利として信託されたものである」(97条)
*13条「個人の尊重」「生命・自由・幸福追求」
-1人ひとり、かけがえがない
*14条「法の下に平等」―みんな平等だ。差別はゆるさない。
*15条「公務員の選定権」―選挙で代表を選ぶ
*16条「請願権」―お上にもの申せる
*18条「奴隷的拘束を受けない」―だれの奴隷にもならない
*19条「思想及び良心の自由」―なにを考えなにを正しいと思うかは自由
*20条「信教の自由」―なにを信じるのか(信じないのか)も自由
*21条「集会、結社、言論、出版、その他一切の表現の自由」
―伝えあう自由
*22条「居住」「職業選択の自由」―どこに住むのか、なにを職業とするか
*23条「学問の自由」―なにを学ぶか
*24条「両性の本質的平等」
―両性は平等であり誰と結婚するかは本人たち次第
*25条「健康で文化的な生活」―誰もがゆとりのある生活をおくる権利がある
*26条「教育をひとしく受ける権利」―ひとしく教育を受けられる
*27条「勤労の権利」―人間らしく働けることの権利
*28条「団結権・団体交渉権・団体行動権」―労働者の人権をまもる組織
*前文の平和的生存権(平和は人権の前提条件)
◇人権をとらえる難しさ
*目にみえにくい。数値化などもできない。
*自分の生活や人生の「質」「あり方」を考え問うこと
―そうした訓練や環境が必要
「人間は、草木とちがって、ただ生きてゆくだけでなく、人間
らしい生活をしてゆかなければなりません」
(文部省『あたらしい憲法のはなし』)
■マイケル・ムーア監督『世界侵略のススメ』を観て
―人権感覚がしみ込んでいる市民
*歴史を学ばなければ自覚が育ちにくい(歴史のなかで1つひとつ
勝ち取られてきた人権)
*人間は劣悪な環境でも、「慣れる」「順応する」ことができる。
あきらめることで自分の気持ちを保つことも。「しょうがない」
「こんなもんだ」「なんとかやっていこう」。
*人権感覚は、つねに磨かないと、もろい。
「人権の保障を実効的ならしめるには、どうしても、国民1人
1人が『人権の感覚』ともいうべきものをおのおの身につける
ことが欠くことのできない前提条件」
(『人権宣言集』はしがきより、岩波文庫、1957年)
3。人権意識・感覚をどう労働者のものにしていくか―労働組合の役割
◇さまざまな「権利」(働くルール)の土台には「人権」がある
*労働法がある根本理由は、労働者の人権保障。憲法27条2項の
勤労条件の法定主義。
*労働条件を交渉できなければ、働き方・職場環境、労働者の生活・
人生の質は良くならない。労働基本権が不可欠。労働条件を交渉
できる法的根拠を唯一もつのが労働組合。
*27条・28条と25条はつながっている。そして根本には個人の尊重・
尊厳という価値。
◇労働組合の活動のうえで、「人権感覚」というのはとても大事
―自分の人権、他人の人権
*労働条件・職場環境において、不当なことへの異議申し立てを
する原動力。
*自分の生活や人生を大事にする(尊厳)。だから労働条件にこだ
わる。他人まかせにしない。
*8時間労働は労働者にとって人権のかなめ。生活時間の確保。
余暇も人権。
*さまざまな差別・ハラスメントを無くしていく
―個人の尊厳が踏みにじられない職場に
*最低賃金の水準や非正規労働者への差別処遇は「憲法違反」
「人権問題」ととらえられるか。
◇学習と実践との両輪で、人権をまもる職場をつくる
*憲法学習、近現代史学習、じっさいの様々なたたかいのなかで
人権感覚をみがく。
*企業・使用者・管理者に人権をまもらせる最大の保障
―労働者の団結とたたかい。