長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

労働組合と選挙―いま憲法をめぐって

きのう(18日)の夕方は、
岡山医療生協労組の中央委員会前段学習会にて
「労働組合と選挙―いま憲法をめぐって」の講師。
30分ほどお話しました。

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以下、講義の概要です。

はじめに:『民主主義 文部省著作教科書』(径書房、1995年)より
 *1948年~1953年に中学・高校用の社会科教科書として文部省が作成

  「組合は、勤労大衆の自主的な団結であるから、その組織
  の力を正しく発揮して行けば、民主政治の発達に強い影響
  を及ぼすことができる。経済民主主義の実現を図る上から
  いって、労働組合の健全でかつ建設的な政治活動に期待す
  べきものは、きわめて大きい」

  「労働組合の任務は、勤労大衆の基本的人権の擁護であり、
  適正な労働条件の獲得であり、働く人々の精神的文化的水
  準の向上である。ゆえに組合は、これらの目的にかなった
  法律が制定されるように、国会に向かって要望すべきであ
  るし、これらの目的を妨げるような立法に対しては、それ
  を阻止することに努力すべきである」

一。非常事態! 憲法なんて関係ない!という政治の向かう先
 
1。憲法とは何か―3つの自己紹介
  ◇第97条 「この憲法が日本国民に保障する基本的人権
   は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、
   これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来
   の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信
   託されたものである」
  ◇第98条 「この憲法は、国の最高法規であつて、その
   条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他
   の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。
   ②日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、こ
   れを誠実に遵守することを必要とする」
  ◇第99条 「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁
   判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務
   を負ふ」

  ■憲法を守ることを約束するからこそ、私たちは権力担当
   者にその力を負託している。

 2。憲法9条は政府に何を命じているか

   「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実
   に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は
   武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久
   にこれを放棄する。
    ②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、
   これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」

  ■自衛隊は「専守防衛」「日本を守るための必要最小限度
  の実力組織」だったはずだが・・・

 3。憲法違反の安全保障関連法(戦争法)。3月29日に施行。
  ①歴代自民党政府が「憲法上認められない」としてきた
   集団的自衛権行使が可能に。
  ②地理的制約をなくした(日米安保条約でも説明できな
   い地点に踏み込んだ)。
  ③自衛隊の活動場所や活動内容も、憲法上の制約を逸脱
   (戦地派兵&武器使用)

 4。戦争へ向かう国家は、国民の命や生活をかえりみない。置き去りにする。
  ◇2016年度の防衛予算は5,054,100,000,000円。史上最高。
   *日本の軍需産業の勃興。武器輸出は国家戦略に。防衛
    装備庁が1,800人体制で発足。
   *「武器を売る」ことで生活を成り立たせる人を増やし
    ていけば、後戻りできにくく。
  ◇貧困と格差の深刻化。社会保障の削減と改悪。高すぎる
   学費。奨学金のローン化。保育園入れない。TPPは大
   企業の利益優先。消費税増税。法人税減税。労働者派遣
   法改悪で「一生派遣」の労働者増。原発再稼動の無責任。
   沖縄の民意を無視し新基地建設強行。
  ◇つまり国民全員が「戦争に向かう国家」のなかですでに
   当事者に。国家のための国民に?

 5。政治が本来しなければならないこと
          ―私たちの命と生活、人権をまもること。
  ◇憲法13条―「すべて国民は、個人として尊重される」
  ◇私たち1人ひとりの命や人権がまもられ、人間らしい
   生活を送ることができる
   *法律や制度をつくる、行政のさまざまな仕事・・・。目的
    は国民の基本的人権の保障。
   *ひとりも見捨てない社会、誰も置き去りにしない社会を。
     ←憲法の要請
  ◇憲法なんて関係ないという政治
         ―立憲主義の崩壊。権力の暴走。人権の蹂躙。

 6。大きく進む野党共闘
   (野党―民進党・共産党・社民党・生活の党と山本太郎)
  ◇安倍政権(自民党・公明党)で日本の政治は非常事態に
  ◇大きく育ってきた野党共闘
   ―戦争法反対のうねりのなかで。そして2月19日の合意。
   ①安保法制の廃止と集団的自衛権行使容認の閣議決定撤回
    を共通の目標とする。
   ②安倍政権の打倒を目指す。
   ③国政選挙で現与党およびその補完勢力を少数に追い込む。
   ④国会における対応や国政選挙などあらゆる場面でできる
    限りの協力を行う。
  ◇野党共同での法案提出
         ―私たちの生活や働き方に関わる大事な法律案
   ①戦争法廃止法案
   ②戦争法廃止法案
   ③介護・障害者福祉従業者の人材確保に関する特別措置法案
   ④保育等従業者の人材確保等に関する特別措置法案
   ⑤児童扶養手当法及び国民年金法の一部を改正する法律案
   ⑥労働基準法の一部を改正する法律案
   ⑦民法の一部を改正する法律案
   ⑧被災者生活再建支援法の一部を改正する法律案
   ⑨畜産物の価格安定に関する法律及び独立行政法人農畜産
    業振興機構法の一部を改正する法律案
   ⑩性暴力被害者の支援に関する法律案
   ⑪法人税法の一部を改正する法律案
   ⑫会社法の一部を改正する法律案
   ⑬金融商品取引法の一部を改正する法律案。

  ■参議院選挙の1人区(岡山も。全国で32ある)での
   候補者1本化。現在26まで合意。
  ■衆議院選挙も「できる限り協力」の合意(5月13日)

二。「不断の努力」の担い手としての労働組合の活動、その目的
 
1。憲法12条の「不断の努力」の担い手としての労働組合
  ◇1人ひとりの尊厳、人間らしい生活を守る砦
   *それを壊している、危機にさらしているのが「政治」で
    あるならば、政治に対して強い関心をもち、働きかけて
    いくのは労働組合の当然の役割。
   *労働組合は「要求で団結」する組織。思想信条で団結す
    るわけではない。だから政党支持は強制しない。そのこ
    とと、要求をたたかいの出発点として確認しながら、政
    治に積極的に関わることは、矛盾しない。
  ◇労働組合は、主権者として育ちあう場でもある。
   学びあう、伝えあう、話しあう。
   *一致点にもとづく共同行動

 2。いま労働組合がどう政治と関わっていくのかが問われている。
  ◇生活に直結する政治。生活や働き方を左右する政治。
   医療や介護と政治は切り離せない。
  ◇しっかり議論を。政治へのたしかな認識を。そして学びと
   行動を広げよう。