毎月、山口県の医療生協健文会の機関紙
「健康のひろば」に連載している憲法の話、8回目です。
憲法は、私たちの人権を保障するものです。人権が
保障されるとは、「私が私でいられること」です。と
ころで、国家権力と国民との関係以外でも、「私の人
権」が侵害されやすい領域があります。それが会社と
労働者の労使関係です。
労使関係に介入するワケ
雇う人(使用者)と雇われる人(労働者)の関係は
法的には対等ですが、実質は雇う側のほうが圧倒的に
立場が強いです。労働者はひとりで会社と労働条件の
交渉ができません。「いやならやめてもらっていいで
す」「別の人を雇います」と言われてしまいます。労
働条件は生活の質と直結しているにも関わらず、労働
者はひとりでは交渉できないのです。
この労使関係を自由契約にまかせておくと、労働条
件は悪くなり、極端な低賃金や長時間労働がはびこり
ます。電通という会社に殺された24歳の高橋まつり
さんのように、過労死も起きてしまいます。そこで憲
法は、労使関係に介入します。
介入その1。労働条件の基準を法律で定め「使用者
に守らせなさい」と国家に命令します。27条2項で
す(「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関す
る基準は、法律でこれを定める」)。これを根拠に一
連の労働法がつくられています。その中心は労働基準
法です。
憲法は労働組合の活動を応援
介入その2。労働者が労働組合をつくり団体交渉し
て労働条件を労働基準法以上のものに改善・向上する
ことを全面的にバックアップします。憲法は、労使関
係のうち労働者のほうに一方的に肩入れしています。
それが28条の労働基本権です。団結権・団体交渉権・
団体行動権の3つを法的に保護し、労働者のたたかい
を応援します。
労働者が団結し労働条件を交渉する。ときにはスト
ライキも構えてたたかう。このことなしに、労働者の
人権は守れません。使用者と対等になれないからです。
労働条件にこだわりましょう。労働者が声をあげるこ
とは、「私が私でいられる」ことを保障するものです。
憲法は、やっぱりみなさんの味方なのです。