長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

ケア、魔女、成果主義、人事評価制度、あきない世傳

最近読み終えた本。

『ケアとは何か 看護・福祉で大事なこと』(村上靖彦、中公新書、2021年)
当事者やケアラーの語りをとおして、ケアの技法や倫理を考える。
声をかける、相手の立場にたつ、ニーズをキャッチする、
居場所をつくる、存在を肯定する、言葉を紡ぐ…。
シンプルなことの中にケアはある。

『カラフルな魔女 角野栄子の物語が生まれる暮らし』
(角川書店、2024年1月)
NHKEテレ番組をもとにしたもの。番組自体最近知って、
オンデマンドで見られる分(最近の4回ぶんぐらい)を見てビックリ。
素敵。88歳の暮らしに「ああ、こういう気持ちで過ごしたい」なと。
本も良かったです。

『職場ルポ 成果主義を追って』(「しんぶん赤旗」職場取材チーム、
日本共産党中央委員会出版局、2006年)
ある講義準備のために読んだのだけど、本当に成果主義って○ソだなあと。
日本企業衰退のひとつの要因が、人件費抑制のために
成果主義賃金制度に飛びついてしまったことだろう。

『人事評価制度 17の大間違い』(白潟敏朗、すばる舎、2023年)
これもある講義準備のための読書。中小企業社長向けなので
立場の違いは明確だけれど、
「本来、人間が運用してはいけない制度が人事評価制度」
「人事評価制度で人は育たない」「モチベーションは上がらない」
などその通り。

『あきない世傅 六 本流篇』(髙田郁、ハルキ文庫、2019年)
冒頭の展開に「えっ…」と言葉を失う。五鈴屋七代目となった
幸は身を切り刻まれる難局を乗り越え、いよいよ江戸へ。
五鈴屋の商いへの姿勢や知恵をしぼる努力は、
学習運動を進める上でも刺激になる。考えて考えて、次の一手を。

『あきない世傅 金と銀 七 碧流篇』(髙田郁、ハルキ文庫、2019年)
シリーズ7巻目。今巻は安心して読み進められた。
「固まった思考を解そう」「正しい知識に経験が加わって、
知恵の生まれる土壌が出来る。あとはそれを、充分に柔らかく
耕すことが大事なのだ」(54P)

『あきない世傅 金と銀 八 瀑布篇』(髙田郁、ハルキ文庫、2020年)
順調だった江戸での商いだが、いくつもの禍が襲う。そしてやっぱり
惣次が江戸に! そして結が…。シリーズ8巻目も楽しみました。
「買うての幸い、売っての幸せ」、学習運動でも目指すところですな。

この週末のあれこれ

きのう(2日)午前中は、岡山県労働組合会議の春闘決起集会に。
全労連副議長で生協労連委員長の柳さんがミニ講演。
福祉保育労、岡山県医労連、岡山県高等学校教職員組合、
生協労組おかやまから、現場の労働者の報告と決意。
グループ交流も4回ぐらいあり参加型の集会で良かったです。
労働者の尊厳を求めて連帯!

きのう(2日)午後は、
岩手県の胆江労連といわてローカルユニオン共催の
春闘学習会&新入組合員教室でオンライン講演。
「労働組合のそもそも〜労働者、労働組合とは」をテーマに60分。
その後質疑応答とグループディスカッションという流れ。
基本を学ぶことはいつでも重要ですね。

今日(3日)午前中は博多に。福岡県労連の労働学校第1講義での講師でした。
労働組合の歴史から入り、労働者という自己認識の大事さ、
パワーを大きくするためのコミュニケーションの基礎、会議を変える、
最後はコミュニティ・オーガナイジングの戦略の有効性まで。
オンラインではおなじみのみなさんとリアルで会えて嬉し(^^)

さあ、今週もがんばろう。

2月は髙田郁さんメイン

最近読み終えた本。

髙田郁さんの「みをつくし料理帖」シリーズ特別巻を読み終えて、
「あきない世傳」をずんずんと進んでいます。
いま6巻の途中(全13巻+特別巻上下)。どんどん面白くなっています。
2月に読んだ24冊中、16冊が髙田郁(笑)。以下、読んだ本のメモです。

『花だより みをつくし料理帖 特別巻』(髙田郁、ハルキ文庫、2018年)
シリーズ完結から4年…。種市、小野寺数馬、野江、そして澪。
それぞれの道と様子が語られる。にんまり、しんみり、
そして「美味しいもの」の力。ああ、本当にこれで最後か…。
またいつか、最初から読もう。

『あきない世傅 金と銀 源流篇』(髙田郁、ハルキ文庫、2016年)
読みはじめました!シリーズ1巻目。呉服商に奉公に出た「幸」が主人公。
まあ、NHKBSのドラマ見ているので
大筋の流れはわかっているのが残念であるが…。ゆっくり楽しみます。

『あきない世傅 金と銀 二  早瀬篇』(髙田郁、ハルキ文庫、2016年)
シリーズ2巻目。五鈴屋の「ご寮さん」となった幸。
4代目徳兵衛は救いようのない店主であり夫だが、
幸は商いを学ぶ機会を得ていく。しかし徳兵衛がある日突然…。
まあドラマで知っていたからハラハラせず。

『あきない世傅 金と銀 三 奔流篇』(髙田郁、ハルキ文庫、2017年)
シリーズ3巻目。次男の惣次の妻となり、商いの知恵を発揮しはじめる幸。
しかし惣次の新しい挑戦が思わぬ落とし穴に…。
まあ、これもテレビドラマで知っていた展開。
商いの大事なキモは、運動にも共通することだすな。

『あきない世傅 金と銀 四 貫流篇』(髙田郁、ハルキ文庫、2017年)
シリーズ4巻目。いよいよテレビドラマ以降の展開に入る。
やっぱりストーリーがわかっていないほうが楽しいですなあ。次いこ、次。

『あきない世傅 金と銀 五 転流篇』(髙田郁、ハルキ文庫、2018年)
シリーズ5巻目にして、いよいよ幸のセンスが冴えわたる。
なんでテレビドラマはあんな中途半端な終わり方をしたのか…。
こんなに面白さが増しているのに…。
悲痛で辛い出来事もあったが、商いへの挑戦は続く。

『家父長制と資本制 マルクス主義フェミニズムの地平』
(上野千鶴子、岩波現代文庫、2009年)
1990年の出版というのが驚く…(現代文庫で再版)。
たしかに様々な議論や批判を受けそうな内容だったけど、
いくつもの新鮮な理論的視点をもらったし、
上野さんの研究者としての態度や姿勢は本当に刺激になった。

学習会の日々が続く2月

先週の木曜日・金曜日(15日・16日)と、
長野の松本で、長野民医連・中信連絡会の
主任研修・職場管理者研修。
丸2日間の充実の時間でした。久しぶりの北アルプス眺望。

土曜日(17日)は徳島健康生活協同組合のリハビリテーション部の
全体学習でオンライン講義。心理的安全性をテーマに90分。

日曜日(18日)は、こんなこと誰も教えてくれなかった講座の
3回目。16名が参加。
こんなか講座3回合計では60名の参加でした☆
「すごく実践的な講座ですぐに試すことができる」と感想も。
みなさんの受けとめが毎度嬉しい学びです。

月曜日(19日)はひだまりの里病院(民医連加盟)の
中堅職員研修で「本当に必要なの?防衛費の大増額」を
テーマに1時間ちょい。

火曜日(20日)は講義ではないですが、
19時から岡山市職労の執行委員会の前段『学習の友』学習会。
災害対応と自治体の役割の記事を読み合わせ交流。
94期岡山労働学校に市職労から3人目の受講者という朗報も☆

そして今日(21日)は、
13時半から岡山医療生協の平和サークル「おりづる」で
「戦争をとめる力を育てよう」のテーマで60分の講義。
18時からは岡山医療生協労組の3・1ビキニ集会事前学習会で
「核兵器の非人道性—ヒロシマ・ナガサキ、そしてビキニ事件」
をテーマに45分ほどの講義。

↑ いまここまできました。

↓ まだ続きます。

明日(22日)は19時から
岡山県医労連の執行委員のみなさん対象に
「組織強化・組織拡大のための日常活動」をテーマにした学習会。

金曜日(23日)は山口県の周南で、
山口県自治労連の組織集会で心理的安全性の講義。

土曜日(24日)は、岡山県民医連の青年育成の集会で
「コミュニケーションの役割と基礎スキル」の講義。

日曜日にようやくオフ!!!
2泊3日で、愛媛の宇和島に行ってきます☆
これ楽しみにがんばります。

みをつくし料理帖、全10巻読み終える。

素晴らしい作品を世に出してくれた作家さんに感謝しかありません。
文庫の頁をめくる日々のしあわせ。
もう1度初めから読みたいですが、
特別編を読んだら、「あきない世傳」にいきます。

『心星ひとつ みをつくし料理帖』(髙田郁、ハルキ文庫、2011年)
身をひき裂かれるような選択が連続するシリーズ6巻目。
なにかを選ぶことは、なにかを捨てることでもあると、しみじみ。
己の信じた道をまっすぐ進むがゆえの苦難。

『夏天の虹 みをつくし料理帖』(髙田郁、ハルキ文庫、2012年)
シリーズ7巻目。辛い展開が続き、表題の「夏天の虹」の最後は
まさかの事態に泣きながら読む。又次・・・(涙)

『残月 みをつくし料理帖』(髙田郁、ハルキ文庫、2013年)
シリーズ8巻目。前巻の苦しい展開から徐々に光が差し込みはじめ、
最後の「寒中の麦」で訪れた幸せをかみしめる。
残り2巻。それぞれの登場人物にどんな人生、どんな選択が待っているのだろう。

『美雪晴れ みをつくし料理帖』(髙田郁、ハルキ文庫、2014年)
シリーズ9巻目。芳が一柳に。息子の佐兵衛の今後も気になる展開…。
澪の「ゆく道」は揺れ動きながらも定まっていく。
ああ、あと1巻で終わってしまうのか…。

『天の梯 みをつくし料理帖』(髙田郁、ハルキ文庫、2014年)
シリーズ10巻目(完結)。
最終話は涙、涙、じんわりと胸にしみる喜びを味わいました。
ありがとう、澪。ありがとう、つる家。ありがとう、髙田郁さん。
特別編も買ってあるので、あと少し、楽しみます。

「みをつくし料理帖」シリーズを読んでいます

髙田郁、みをつくし料理帖シリーズ(ハルキ文庫)を
先週から読み始めました。全10巻の折り返し、5巻まで読了。
1日1冊ペースで読んでます。今週は長距離移動の出張もあるし、
一気に完結までいきそうです。堪能してます!

『八朔の雪 みをつくし料理帖』2009年)
シリーズ第1巻目。久しぶりに時代小説読んだけど、これはいいなあ。
主人公の料理人・澪(みお)、親代りの芳、「つる家」の種市。
それぞれが背負う過去と現在の苦難。
「何かを美味しい、と思えれば生きていくことができる。たとえどれほど
絶望的な状況にあったとしても、そう思えばひとは生きていける」

『花散らしの雨 みをつくし料理帖』(2009年)
シリーズ2巻目。下足番のふきが登場。「つる家」の面々の
ふきへの眼差しが温かく、じんとくる。幼馴染の野江との交信…。
りうの存在感…。登場人物それぞれの魅力がたんと味わえる。

『想い雲  みをつくし料理帖』(2010年)
シリーズ3巻目。澪のつくる料理に想像をふくらませながら、物語の
世界にどっぷり浸かる。人物描写とストーリーが絶妙でどんどこ読める。

『今朝の春 みをつくし料理帖』(2010年)
シリーズ4巻目。1話1話が味わい深く、心地よい余韻が残る。
生活と季節が密接に結びついている江戸の暮らしもいいなあ。
幼なじみの野江への想い、浪士小松原への恋心…。

『小夜しぐれ みをつくし料理帖』(2011年)
くー。種市の過去が垣間見える「迷い蟹」、
野江を想い心尽くしの「夢宵桜」、
美緒と源済と澪の選択は…の「小夜しぐれ」、
初めて小松原の素性が描かれた「嘉祥」。
シリーズ第5巻もまんぞくでした。全10巻折り返し。


*きっかけは、NHKBSのドラマ「あきない世傳 金と銀」を
オンデマンドで観たことから。おもしろいけど、続きが気になる
終わり方だー!と思ったら、原作ではやはりその後の展開もあるよう。
原作読もう!と本屋に行ったら「みをつくし」が目に入り、
たしか映画化もされていたな、このシリーズの作家さんかと思い、
「まずこちらから読もう」となった次第。
これ読んだら、あきない世傳にいきます。

オンライン学習会3連チャン

きのう(10日)は、オンライン学習会講師3連チャン。

午前中は、福岡・佐賀民医連の第45期職責者研修で
心理的安全性のオンライン講義。約120名の参加。
12月、1月、そして今日と、
合わせて300人ほどの職責者が研修に参加されていました。
大きな県連です。

13時からは、岐阜県診療放射線技師会 第16回人材育成分科会
にてオンライン講演。
「心理的安全性を職場づくりに活かす」をテーマに1時間弱。
約50名の参加だったそうです。質問も3つほど。

15時からは、オンライン憲法講座の第5講義土曜回
「主権者になる!表現の自由と不断の努力」でした。
参加は7名とやや寂しかったですが、チェックイン交流も感想交流も、
全員発言で学びあいました☆
憲法は奥が深い、もう一度最初から学びたいなど、
憲法学習の大切さを実感しあえた講座になりました。

しゃべくりまくりの1日でした。
オンラインは移動なしでラクですし、
こんな3連チャンも可能。

2月もしっかり学ぼう。

最近読み終えた本。

■『ケアの倫理-フェミニズムの政治思想』(岡野八代、岩波新書、2024年1月)
新書だが研究書に近く、政治思想史やフェミニズムの議論に
慣れていない人にとっては難解かな…。途中で挫折しそうになったら、
5章と終章だけでも読んでほしい。
ニーズに応えるケアの責任から社会を見つめ直す。

 ■『地下鉄で隣に黒人が座ったら』
(イェロン著・村中千廣訳、かもがわ出版、2024年2月)
韓国在住漫画作家の実体験にもとづく漫画エッセイ。
めちゃ読みやすいのと、自分や社会の抱く無自覚な偏見を学べて素晴らしい。
マイクロアグレッションのダメージもリアルに伝わってくる良書。

■『海の中から地球が見える〜気候危機と平和の危機』
(武本匡弘、あけび書房、2023年)
プロダイバーであり環境活動家である著者。
実際に海中で写されたサンゴ白化の様子や太平洋の島々での
気候危機による変貌ぶりが胸に痛い。人類は戦争なんかしてる場合ではない。
軍隊もなくすしかない。

■『社会を結びなおすー教育・仕事・家庭の連携へ』
(本田由紀、岩波ブックレット、2014年)
戦後日本が急速に作り出してきた、
仕事(父の賃金)→家庭→教育→仕事→家庭→教育という循環モデルの破綻。
新しい循環モデルの見取り図を提示。
こうした視点からの分析もあるのかと思った。

■『NHK 100分de名著 ローティ 偶然性・アイロニー・連帯』
(朱喜哲、NHK出版、2024年2月)
うーん、イマイチだった。放送見たら印象少し変わるかもしれないけど。
「会話」を守る、という姿勢や態度には共感した。

■『夜明けのすべて』(瀬尾まいこ、文春文庫、2023年)
ケアに満ちた小説だった。相手の状態やニーズに関心をもち、応えようとする。
ケアから生まれるもの。
PMS(月経前症候群)、パニック障害についても、抱えている人の
苦しみや思いについてまったく知らなかったので、そこも良かった。

■『ハグとナガラ』(原田マハ、文春文庫、2020年)
おたがい仕事や介護を抱えながら、時々、女ふたりで旅に出かける。
作者の体験がベースにある旅小説。
原田さんの『旅屋おかえり』も大好きな小説だし、
こんなふたり旅もいいなあ、と思う。ぼくも、旅を続けよう。

2月は走ってます

また更新が滞ってしまった…

2月に入ってからは、かなりバタバタの日々。
2日(金)夜は憲法講座の第5講義。
3日(土)は京都で学習会講師+市長選挙お手伝い
4日(日)は東京で全日赤の春闘学習会。
5日(月)夜は学習協の常任理事会
6日(火)は林精研の中堅職員研修。

という公式仕事以外にも、あれやこれやと。

わが家の猫はまったりのんびり。はやく春よこい。

 

休暇のマネジメント

『休暇のマネジメント 28連休を実現するための仕組みと働き方』
(髙崎順子、KADOKAWA、2023年)を読み終える。

これは、はげしくオススメの1冊。

著者は、バカンス大国といわれるフランスに在住。
移住当初は、長期休暇の文化に慣れず戸惑っていたが、
次第にバカンスの効能について実感。
日本人の「休み方の文化」を変えるべく、
本書を執筆(熱量すごいけど、文体はやさしく読みやすい)。

フランスの労働者・管理者への調査・インタビューにもとづいた、
豊富なバカンスの仕組み化と実践例が非常に参考になる。
「うちの業界では無理」という反応も想定し、
バカンスを取りにくいであろう医療や保育や自営業の
職場などでのバカンス取得の工夫や考え方も紹介。

フランスの有給休暇の取得方法は一般的な労働者の場合、
夏の期間に3週間、クリスマス期間に1週間、その他の期間で1週間、
合計5週間(法律で義務化されている)。
日本のように1日細切れなどではない(時間休とか理解不能だろう)。
まとまった長期余暇をとるのが基本だ(病気休暇などは別にあるので安心)。

著者の労働組合への言及は少ないが、日本でも、
労働組合として団体交渉、労働協約締結を通じてできることは
たくさんあるし、本書から学ぶことは多いと思う。
有給休暇の連続取得を協約で勝ちとる
(たとえば5日間は連続取得を協約で義務化するなど)、
また仕組み化するために具体的な業務改善を組合から提案するなど、
労働者側からの発信も重要だと思う。

ちなみに! 私は今年8月に2週間のハーフバカンスを取る。
来年以降も取っていこうと思っている(取りやすいのは8月)。
学習運動の仕事上、おそらく連続休暇の上限は3週間だけど、
そこを目指したい。まずは今年実践してみる。
長期休暇の意義や役割を「自分の言葉で、実感をこめてスラスラ語れる」
ことを目指したい。
本書で紹介されているフランス人の「バカンスの言葉」がそうであるように。

以下、本書より自分のためのメモ。

「今の日本には、働き方と同じだけ、休み方を考えることが必要だ」(8P)

「バカンス文化の始まりの時代から、『社会にはバカンスが
なぜ必要か』『どんな過ごし方をするのが望ましいか』を、
国レベルでしっかりと言葉にして考え、整備してきた」(22P)

「まとまった年次休暇とは、余暇=『自分の好きに使える、
自由な時間』のこと。そして余暇とは、生きる喜びと、
人としての尊厳を知ることができる時間である」(30P)

「長期間かけて余暇を過ごした経験のない庶民は、その価値も
意味も理解できていなかった、ということ。働きづめに働いてきた
人々には、週休の1日ですら、『働く』以外の過ごし方がピンと来ず、
『休みの日には別の労働をする』風習があったくらいでした」(35P)

「『生きる喜び』を年次休暇で国民に感じてもらうには、
公助が必要だった」(51P)

「労働時間が収入に直結する自営業者は長期休暇なぞ
取れないのでは…と思いがちですが、ここはバカンスが
『人としての尊厳』として普及している社会。自営業者でも
休める仕組みと理解があります」(80P)

「まず業界・職場全体で『休む』と決めること。必ず休む
前提で仕事と年間計画を段取りし、優先順位を明確につけて、
業務管理をすること。そして長期休暇取得を優先事項の高い
『業務』として扱い、遂行する思考」(81P)

「『休めたら休もう』『休めなかったら仕方ないから働こう』は、
あり得ない。なにがなんでも休む。そしてその責務を担うのは
雇い主というのが、フランスのバカンス制度の柱です。
年次休暇の運用は、マネジメントの職務なのです」(82P)

「だからといって仕事をイヤイヤやっている人は彼女の
周りには見当たらず、Rさん自身も『仕事はとても好き』だそう。
同僚との関係も良く、不満はありません。『それでもバカンス
なしに仕事をすることは、考えられないです。区切りなく
延々と仕事が続いてしまったら、私はきっと心身ともに病んで
しまう。仕事を愛し続けるには、そこから離れて、心と体に
栄養を与える時間が必要です。仕事に生きる発想やアイデアを
得るためには、自分が広くものを見なければならないですしね。
バカンスから戻ると、より自分の反応が良く、生産性が
上がっている自覚もあります。もしバカンスがなかったら…
想像できないけど、死刑判決を受けたように感じるかも』。
最後は冗談めかした口調だったものの、その目は笑って
いませんでした」(94P)

「週末の休みだけではできないことが山ほどあるし、バカンスは
自分のことを考えて、自分を大切にできる時間です」(111P)

「看護師がバカンスを取ることを悪く思う患者さんには、
フランスでは会ったことがないです。みなさんむしろ、
『しっかり休んできてね』と送り出してくれる。看護師が
休養できないと、その余波は自分達に返ってくると知っている」(132P)

「『休暇のマネジメント』の考え方や実践法にもやはり、
原則的とも言える4つの共通点が見えました。その1.年次休暇は
給与と同様、人件費の必須項目と考えて計算する。その2.長期
休暇のメリットを認め、業務の一時的な停滞や縮小を恐れない。
その3.前もって段取りし、早めに決める。その4.業界・仕事の
特性を反映し、合理的かつ明快なルールを設定する」(138P)

「夏は社会全体がペースを落とす。フランスではもう何十年も
そうして回ってきている」(143P)

「もしもバカンスがなかったら? はぁ……それは大変だなぁ。
私達の仕事は肉体労働ですし、心も体ももたなくなってしまう。
長期休暇を取らないなら、働くのは週3日くらいにしないと
いけませんね」(145P)

「休暇取得を含め、医療福祉職のウェルビーイングに配慮した
人員管理を怠ることは、その職務上でケアすべき対象の人々を
『危険に晒す行為』につながるという認識が、フランス社会
にはあります」「保育士の長期休暇は労働問題だけでなく、
保育の質の面でも、非常に重要」(169P)

「病気など、余暇以外の私的事情の休業制度を別に整えることが、
1つの大切なポイントです。病気休業や家族事情の休業の
仕組みが別にあるヨーロッパ諸国では、労働者は年次休暇を
バカンス、つまり余暇時間のために心配なく使えています」(296P)

ナチス、幻夏、夜明け、暇と退屈、社会地図、台湾

最近読み終えた本。

■『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』
(小野寺拓也・田野大輔、岩波ブックレット、2023年7月)
評判どおりの良書。研究蓄積の上にたった論証で、
わかりやすくも書かれている。ありがたい。事実から解釈、そして意見へ。
ナチス支配や政策の入門書としても素晴らしい。

■『幻夏』(太田愛、角川文庫、2017年)
冤罪って、ほんとうに辛すぎる。日本の警察や司法の
構造的問題に切り込みつつ、ミステリとしても十分読み応えあり。
『犯罪者』『天上の葦』も読まなきゃな~。

■『夜明けのはざま』(町田そのこ、ポプラ社、2023年11月)
『52ヘルツ』の町田さん新刊舞台が家族葬専門の葬儀社!
…ということを新聞の書評で知り、即買い即読み(葬儀もの大好き…)。
人の死に関わる各々の立ち位置、背景、葛藤と決断。
登場人物みなの人生を応援したい気持ちになった。

■『暇と退屈の倫理学』(國分功一朗、新潮文庫、2022年)
ヒマとタイクツについて、こんなに大真面目に思考していた
哲学者(ハイデッガーとか)がいるんだな〜と。
まあしかし、ヒマに飢えている労働者からしたら
呑気な議論だとも感じてしまう。面白い視点もあったけど。

■『格差と分断の社会地図』(石井光太、日本実業出版社、2021年)
雑な主張もあるし、最後の若い人へのメッセージもイマイチ。
だけど、格差と貧困、「あたりまえ」の環境がない中で
生きる人たちの声やストーリーがたくさん読めるのは良し。
自分の生きている世界は狭いという自覚は大事。

■『台湾のアイデンティティ 「中国」との相克の戦後史』
(家永真幸、文春新書、2023年11月)
3月に台湾旅行を予定していて、その予習。
複雑で単純化できない台湾の戦後史が、中国や日本との
関わりのなかでコンパクトに学べる。
もう少し経済的な視点からの分析がほしかったような。

 

文化的に生きる権利-憲法25条の可能性

昨夜(19日)はオンラインの憲法講座第4講義の金曜回。
「文化的に生きる権利-憲法25条の可能性」をテーマに学びました。
リアルタイムで30名が参加。

憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」という規定の
「文化」にスポットをあて、25条制定の過程、
なぜ「文化」の言葉が挿入されたのか、またその意義、
文化権としての25条の可能性についてお話しました。

めずらしく講義が早めに終わったので、感想交流の時間がたっぷり取れて、
みなさんとのやりとりでめっちゃ深まりました。
文化的に生きるとは? を考えるって楽しいですね。
以下、ある方の感想を紹介します。

 ■文化権…新鮮な感覚です。十分に受け止め切れないほど内容が深く、
まさに目からウロコです。私自身は文化水準が低く、退職するまでは仕事、
組合、家庭の24時間で睡眠を削るしかないような日々で文化、
芸術はもとよりホッとしたり、振り返るゆとりはありませんでした。
でもそれは仕事に対してでも何に対してでも、一面的な見方、
考え方しかできていなかったのだ。いい仕事はできていなかった
のではと今更ながら思い返す次第です。退職後、近くの美術館を
訪ねたり映画を観る時間を作ったり、市民劇場に誘ってくださる人ありで
舞台観劇をする機会もあり、初めてそれらしきものに触れているこの頃です。
でもコロナあり、また今ある震災の中でもペットを置いて避難せざるを
得なかったことなど…人が人らしく生活を作っていく中であれか、
これかの選択を迫られました。でも本当は困難な時だからこそ選択ではなく、
あれも、これも人が人であるためには欠くことのできないものなのだ…
それこそが豊かさなのだろうかなんてことをつくづく考えています。
次回も楽しみにしています。