長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

「見直そう、ものの見方、考え方」レジユメ

きのう(1日)、全教青年部の「TANE!」で
お話した内容の骨子です。

一。そもそもを問う(哲学する姿勢)
 1。人間は、「問い」をもつ
  ◇「有限の時間を生きている」ことを知りながら生きている(命はひとつ人
生は1回)
   *つきつめて考えていく。生きている、生きていく、生き方を考える。
  ◇言葉をもっている。自分の頭で考える力。話しあうこと。伝えあうこと。
  ◇「自分のこと」「自分のまわりのこと」をきちんと説明したい(哲学の欲求)
   *「自分」をふくめた「まわり」のことを「世界」とも言う。世界観=哲学。

 2。哲学発祥の地・古代ギリシャ
  ◇討論によって真理を追求する文化、時間のゆとりも(ここポイントです)。
   *万物の元は何か? 世界はどのようにできてきたのか? 人間とは何か?
*神話的説明からの脱却(ものごとをありのままに観察するなかで考える)
◇タレス、デモクリトス、ソクラテス、プラトン、アリストテレス・・・。
  ◇以後、2000年以上をかけて、問い続けられてきた学問。幅の広い学問。
   →自然科学、生物学、歴史学、社会科学などの諸科学が、哲学に磨きをかける

 3。世界観=哲学を磨けば、生き方が豊かになる
  ◇「自分」と「まわり」をあるがままの姿で認識しようということ
   *世界観のことを、ひらたく直して「ものの見方」と言っている。
   *私たちは、ひとりひとりが、
世界とともに生きている(自然、生き物、人間、社会)。
だからその世界をありのままに認識することが、問題になる。
  ◇哲学は、日常の生活や仕事や活動のなかで活かせてこそ、身についたとい
える。
  ◇あやまった世界観は、あやまった選択や行動をもたらす
*例えば戦前の教育。日本は神の国。天皇陛下のために死ねることが尊い生き方。

二。ありのままに認識することの難しさ―ゆとりがポイント
 1。認識の出発点は、つねに「部分」
  ◇私たちの目の前に見えるのは、「現象」「結果」「瞬間」としての姿
   *現象の背景にある本質へ認識を深める努力
   *結果を生み出した原因へ認識を深める努力
  *「今の姿」をつくってきた「流れ」「歴史」を知る努力
◇木も森もみる。森だけでなく木も。木だけでなく森も。木と森の往復運動。
   *F・ナイチンゲールの看護観→生活と労働、地域や社会の中で疾病をと
らえる

2。脳は楽をしたがる(ゆとりがなければ特に)
-先入観、偏見、思い込み、決めつけ・・・
  ◇目の前の現象(結果)に対して、すぐに答えをだしたがる
  ◇「どうせ・・・」というものの見方。
その先取られる結果は、必ず否定的・消極的
*「どうせあの人は」「どうせ自分は」「どうせムダ」「どうせ世の中」

【ゆとりがないと、とくにそういう見方になる傾向がある】
・じっくりと対象を認識しようという時間的余裕がない。対話、新聞、本。
・集団で学んだり議論したりする機会がないとキビシイ。ひとり思考はキケン。
・どうせ、と思えば、なにもしなくてよいので、ある意味ラクになる。
・それは、「どうしたら」「どのように」の問いをしぼませる
  ◇「先入観という便利なメガネ」(臨床心理士・土屋由美さん)
  ◇「変わらない」のも、対象・ものごとの「一側面・要素」ではある
   *一直線の変化や前進などない。停滞・後退をふくみながら、
うねうねと進むのが現実。ときには激しい逆流もふくみつつ、
ものごとは動いていく。人間も社会も。職場も運動も。これを
弁証法的な見方という(変化にも法則性がある)。

 3。支配するもの、されるもの。ものの見方をめぐるたたかい。
◇「どうせ」と思わせることは、社会や経済を支配するものの利益と結びついている
*現状を本質的に不変のもののように思わせる。競争と分断でバラバラにし、
ゆとりを奪い、考えさせない。歴史を学ばせない。
行動のしかた(労働組合、デモ、政治活動、市民運動・・・)を
伝えないマスコミ。学校教育の奮闘を期待したい。
*蜘蛛の巣のようにウソを張り巡らせる。部分だけしか見せない。
「どうせ」と思ってくれる人が多数であれば、支配もラクチン。
政治も低投票率で政権与党が安泰。
   *つまり、「ものの見方・考え方」をめぐっても、たたかいがある!
学習活動大事!

4。事実のたばを集め、集団で対象を認識すること
―1人ひとりの認識には限界がある
◇話しあう。教えあう。聴きあう。書きあう。
◇集合知への飛躍。認識の統一と共有化。
◇1人ひとりの「個の認識」の前進的努力も必要。

  ◇会議・ディスカッション・情報共有の場を大事にする
-民主主義にはゆとりが必要
   *講演を聞くだけ、一方的な報告のみ、一部の人しか話さない ←効果は限
定的。
*民主的な討論、集団的な調査・分析でつくられた目標や方針は科学的な力をもつ。
◇本や雑誌(まともな)を読む。新聞を読むこと。ネットの活用。

 5。ゆとりの獲得、集団的に認識する-哲学するためには、労働組合。
  ◇自由な時間、集まれる条件を闘いとる(労働条件改善)
-労働組合にしかできない。

さいごに:ものの見方・考え方は、ときどき、必要に応じてメンテナンスが必要。
  ◇職場をみるとき、社会をみるとき、生徒をみるとき、自分自身や仲間をみ
るとき…
  ◇ものごとの本質をみることができているだろうか。流されていないだろうか。
  ◇自分や自分たちは、対象の真の姿をありのままにとらえているだろうか
   *どうせ、となっていないか。思い込みはないか。細部にとらわれすぎて
いないか。
   *断片的にものごとをきりとって判断していないか。現象に目を奪われて
いないか。