青森民医連での講義その2。
ちょっと時間がないので、とりあえず
レジュメのみはっつけておきます。
はじめに
ものの見方・考え方とは、考え判断するさいの根幹をなす「ものさし」。
根幹だから、職場や社会にも応用できるし、人や自分をみるさいにも活きる。
一。そもそもを問う(考える力)
1。人間は、考える力があり、それをもとに選択をする
◇考える力=知性をもっている(言葉)
*五感で得た情報を統合、分析し、判断することができる。
*「雨が降りそうだ、傘をもっていこう」
*自分で直接得た情報と、他者(人、メディア、本など)から
得られる情報とがある
◇生きていることを知っている
◇「どう生きるのか?」を問うたソクラテス(紀元前469~399年)
―考えて、分け入って
*なぜギリシャで「哲学」という学問が生まれたのか
*討論によって真理を追求する文化、
時間のゆとりも(ここポイントです)。
*ゆとりとは、「当面の必要を満たしたあとに、自由に使うことが
出来る空間・時間や体力、他のことを考えるだけの気力がある
こと」(三省堂『新明解国語辞典』第7版)
*万物の元は何か? 世界はどのようにできてきたのか?
人間とは何か?
◇「自分のこと」「自分のまわりのこと」をきちんと説明したい
(哲学の欲求)
*「自分」をふくめた「まわり」のことを「世界」とも言う。
世界観=哲学。
2。分け入っていく、認識を発展させる難しさ
◇深く考えなくても、日常は動いていく(生活・仕事・社会)
*じっくり、討論しながら、考える「ゆとり」も少ない。
*「ちょっとまてよ」「これってどうなってるの?」と立ちどまり
追求する力
◇私たちの目の前に見えるのは、「現象」「結果」「部分」「瞬間」
としての姿
*認識の出発点はつねに「部分」。そして「部分」でだいたいの
判断をしてしまう。
*「つながり」「背景」「全体像」を欠いた情報。まずそれに接する。
*認識を発展させる作業が必要(めんどうくさい)
◇現象から本質へ。結果から原因へ。木も森も見る。
川の下流だけでなく上流も。
*「生活と労働から疾病をとらえる」という民医連のものの見方。
*たとえば、日本の雇われ組(労働者)の現状を考える
*日本の戦争への認識。9月に成立した安全保障関連法について
歴史的にみる。
二。分け入っていくための前提―事実から出発すること
1。事実をありのままに見る
◇事実とは
*あるとき、あるところに「起こった」もしくは「あった」こと
がらのこと。
*客観的性格のもの(つまり誰にでも確認できるもの)
◇事実と違うことも、人間は言えるし、想像できる。事実を隠す
こともできる。
*言葉、想像力というのはもろ刃のやいば。
*社会では、意図的に事実と違うことが流布される
(とくに利害関係が発生する時)。
*事実と違うことを言ったり書いたりして、得をする人がいる
*「消費税の増税分はすべて社会保障のために使われます」←ウソです。
*原発はいちばん電気代が安い。クリーン。
「完全にコントロール」←ウソです。
*尖閣問題がたいへんだから集団的自衛権だ!←個別的自衛権の問題。
*蜘蛛の巣のように「事実でないこと」が「ほんとうのこと」の
ように張り巡らされる。マスコミ、とくにテレビの影響力。少
数者が多数者をコントロールする方法。
*権力者にとって不都合な事実は、隠蔽されやすい。「2015年、
日本は世界報道自由度ランキングで61位に順位を下げる(先進
国最低水準)」(国境なき記者団発表)
◇事実から出発するものの見方(姿勢)を大事にしよう
*このような見方や姿勢を「つらぬく」ことは、じつは簡単ではない。
*事実を確かめる作業はたいへん。学習。調査。討論。
労力、てまひまかかる。
*先入観、決めつけ、偏見、同調、あえて考えない・・・こっちの
ほうがラク。
*目の前の現象・部分だけで、すぐに「判定」の傾向。
木を見ただけで森を想像する。
*つまり人間は認識活動の過程で間違いを犯しやすい。
自分の認識を絶対化しない。
*事実から出発し認識を深め、真実を見抜く目が必要。疑える力。
メディアリテラシー。
2。集団の認識で、事実のたばを集め、認識を深めていく
◇なんといっても、集団で認識すること
―「ひとりひとりの認識には限界がある」
*話しあう。教えあう。聴きあう。書きあう。仲間がいること。
集合知への飛躍。
*認識の統一と共有化。1人ひとりの「個の認識」の前進的努力が必要。
◇本や雑誌や新聞(まともな)を読むこと。ネット、SNSも活用を。
◇会議・ディスカッション・情報共有の場を大事に。
ひとりで考えると間違いやすい。
◇民医連の優位性。民医連綱領。
憲法の理念に立脚(主権者としての力量を育てる)。
*職場の仲間、全国の仲間とつながりあいながら、学びあえる。
*「場」があること。「場」に出かけていくこと。「場」をつくること。
*『いつでも元気』『民医連新聞』などは最低限読みましょう
三。社会や情勢は、どのようなあり方をしているのか?
1。弁証法というものの見方を紹介(そのポイント)
①すべてのものは変化の過程にある
②変化のしかたにも法則性がある
③すべてのものはつながりのなかで存在している
2。「どうせ・・・」ということ(変化しない予測・固定的に考える傾向)
◇「どうせ」と先取られる結果は、否定的・消極的なもの。
*こうした見方をしてしまうのは、一定の根拠があるから。
◇「変わらない」「うまくいかない」のは、対象・ものごとの
「一側面・要素」
*職場でも、社会でも、人間でも
*変化の仕方は一直線の右肩あがりではない。ときには後退・逆流も。
◇「どうせ」という見方におちいってしまう背景や事情もふくめて考える
*「ゆとり」や「場」がないと、とくにそういう見方になる傾向がある。
*どうせ、と思えば、なにもしなくてよいので、ある意味ラクになる。
*それは、「どうしたら」「どのように」の問いをしぼませる。
◇弁証法的でない見方は、権力をもつ人の利益と結びついている
*現状を本質的に不変のものであるかのように思わせる。競争と
分断で認識をバラバラにし、ゆとりを奪い、考えさせない。
本質をみせない。歴史を学ばせない。行動のしかた(労働組合、
デモ、政治活動、市民運動・・・)を教えない学校とマスコミ。
*「どうせ」と思う人が多数であれば、支配も簡単。政治も低投票率で
政権与党が安泰。
*つまり、「ものの見方・考え方」をめぐっても、たたかいがある!
学習活動大事。
3。世界の生きた姿、その法則性をとらえる“努力”
◇すべての対象・ものごとは、「動いている」という認識。
◇変化のしかたにも法則性がある―発展をつらぬく糸筋をみつける努力
*停滞・後退をふくみながら、うねうねと進むのが現実。ときには
激しい逆流もふくみつつ、ものごとは動いていく。
*日常の変化は目立ちにくい。視野のスケールを変えてみる
(学習によって)。
*たとえば、100年前の社会を考えてみよう。人権、働くルール、
参政権、平和・・・
*世界(人類史)は大きく進歩している。動かしているのは無数の
人びと。「基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の
成果」(日本国憲法97条)
*現実のなかで芽生えつつあるもの、発展しつつあるもの。発展の
原動力は、そのもの内部の矛盾。過去と未来がぶつかっているの
が「現在」。
「私たちが生きいきしてくるときというのは、自分をふくめた
現実のなかに成長・発展しつつあるものを見いだし、育て、
そこに現実の生きた姿をとらえるとき、ということができます」
(労働者教育協会編『新・働くものの学習基礎講座1 哲学』
学習の友社)
◇民医連綱領の生命力―人類の進歩の方向性と合致
4。ものの見方・考え方は、つねに「メンテナンス」が必要
◇職場をみるとき、社会をみるとき、自分自身や仲間をみるとき…
*固定的にみてしまっていないか。どうせ・・・という見方に陥ってないか。
*細部にとらわれすぎていないか・・・木も森もみているか。
*断片的にものごとをきりとって「○×」「白黒」を判断していないか
*背景や原因を考えられず、現象・部分に目を奪われていないか。
思い込みはないか。
◇集団での認識がカギ
-1人ひとりの認識をたばねる努力(リーダーの役割)