■『経済政策で人は死ぬか?ー公衆衛生学から見た不況対策』
(デヴィッド・スタックラー&サンジェイ・バス著、
橘明美・臼井美子訳、草思社、2014年)
これは説得力のある、素晴らしい研究。
緊縮財政は人を殺す。
国民の命は経済政策に左右される。
アイスランドとギリシャの対比が鮮明。
■『日本とドイツ ふたつの「戦後」』(熊谷徹、集英社新書、2015年7月)
ところどころ、論拠が弱い感じも受けたが、
全体としては「ドイツのいま」が知れる内容となっていてよかった。
あとがきで「考える時間のあるドイツ社会」という指摘があり納得。
民主主義はゆとりがないと脆い。
■『右傾化する日本政治』(中野晃一、岩波新書、2015年7月)
戦後の政党政治史的内容。労働者・国民の運動やたたかいの記述が
不十分だと感じたけれど、テーマはそこではないからしょうがないのか。
でも戦後のさまざまな国民運動の延長線上に、
いまの歴史的たたかいがあるはずで。
■『日本の社会保障、やはりこの道でしょ!』
(都留民子・唐鎌直義、日本機関紙出版センター、2015年9月)
労働組合にたいしてちょっと辛口すぎるきらいがありますが、
全体的に社会保障の本質がよくわかる議論。
社会保障は民主主義を強くするし、労働者階級を強くする。必要な視点。
■『人を育てよ』(丹羽宇一郎、朝日新書、2015年9月)
伊藤忠商事元社長。前中国大使。
主張の7割ぐらいには賛同できなかったが、
あとの3割はひじょうに共感することが多かった。
大学の無料化、非正規労働者の全廃、
軍事力で勝負するのは間違い、とにかく人間に投資せよ、など。
■『科学的社会主義の理論の発展ーマルクスの読み方を深めて』
(不破哲三、学習の友社、2015年9月)
私も所属する労働者教育協会の基礎理論研究会での講演。
70ページほどで、不破氏のここ20年ほどの研究がぎゅぎゅっと凝縮。
理論はつねに現実に試され、磨かれるのであります。
■『実践労働組合講座第2巻ー労働者の権利と労働法・社会保障』
(全労連・労働者教育協会編、学習の友社、2015年9月)
最新の判例などもあり良いが、網羅的で深くはない。
組合役員さんなどは、ざっと目を通して、あとは手元に置き、
ときどき必要に応じて拾い読み、が正しい活用法か。
■『民主主義ってなんだ?』(高橋源一郎×SEALDs、河出書房新社、2015年9月)
学生さんたちの運動感覚、
知識量と思考の洗練さにびびると同時に、
高橋さんの卓越したコーディネーターぶりも。
あらゆる意味で2015年の必読書。
■『自衛隊の転機ー政治と軍事の矛盾を問う』
(柳澤協二、NHK出版新書、2015年9月)
防衛官僚として歩んできた著者の経験と内省にもとづく話は貴重。
冨澤暉氏(元陸幕長)や伊勢崎賢治氏(元国連PKO幹部)との鼎談も勉強に。
でもやっぱり「男の議論」って感じちゃうんだよなー。
■『仁義なき宅配ーヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン』
(横田増生、小学館、2015年9月)
すでに生活に密着し欠かせなくなった「宅配」市場。
その歴史やいま、働く現場がどうなっているのかの秀逸ルポ。
あーしかし、ひどい実態だ。別に翌日配達じゃなくてもいいよ、ぼくは。