長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

労働組合における民主主義と学習活動

きのう(14日)の夜は、
県労おかやまの常任幹事会にて前段学習会8回目。
3月から連続的に基礎学習をしてきましたが、昨夜で最終回。

「労働組合における民主主義と学習活動」というテーマで、
基本のところを押さえつつの問題提起させていただきました。
その後の議論はあたりまえだけど面白かったです。

以下、そのレジュメです。


一。労働組合の質を高める(1)-表現の自由と民主主義
 
1。表現の自由の意味
  ◇人間は応答関係のなかで、自分(たち)を育てる
   *自分の考え、思いを伝える(表現する)。また他人の考え、
    思いを知る(伝えられる)ことによって、人は人間的・
    人格的な成長をしていく。とくに決定的なのは言葉による
    伝えあい(話す―聴く、書く―読む)。
   *知的存在・社会的存在である人間にとって、表現の自由は
    人間の尊厳そのもの。

  ◇表現の自由の具体的形態として-集会・結社の自由

    「集会・結社の自由を保障する理由は、第一に、それが
    個人の人格の発展に不可欠だということにある。個々人
    は様々な集会・結社に参加・帰属することを通じて自己
    のアイデンティティーを確立し、人格の形成・発展を行
    う。・・・第二に、集会・結社の自由は、政治的力を表明す
    る手段として不可欠である。国民が政治過程に参加する
    場合、集会・結社によってその力を結集することが可能
    となるのである。この観点からは、現代のマス・メディ
    アから排除された一般大衆にとって、集会・結社を通じ
    ての表現活動は重要な意味をもつ」
    (高橋和之『立憲主義と日本国憲法 第3版』有斐閣、2013年)

   *1人ひとりの主権者を主権者らしく成長させ、また勇気
    づける役割を、集会や結社はもっている。だから基本的
    人権であり、奪えないもの。

  ◇1人ひとりが言葉をもって参画する-伝えあいが大事
   *職場のなかで、地域のなかで、異議申し立てや政治的議論が
    できないのが日本の現状 
   *自分の意見をみなの前で発言する訓練、議論する訓練の機会
    や場が少ない。
   *「自分の言葉」の発声練習の場に労働組合がなる。
   *1人ひとりが、「違和感に蓋をしない」こと。それができる
    関係性の構築。
   *大事なことは、「場」のなかで対話・議論が生まれるように
    すること。しかけと工夫。
   *講演を聞くだけ、一方的な報告のみ、会議で一部の人しか話
    さない ←効果は限定的。

 2。労働組合における民主主義的空間・運営
              (自分たちの力を最大限引き出す)
  ◇労働組合は、最大多数の労働者を結集できる
                ―逆にいえば、いろんな人がいる。
   *違いがたくさん。違いばかり。そして違いは目につきやすい。
   *雇用形態、賃金、労働条件、立場、仕事内容、資格の有無、
    能力、性別・・・
   *生活環境、人間関係、考え方、支持政党、行動パターン、
    趣味、特技・・・
   *「要求」にたいするとらえ方・考え方は、簡単には一致しない
  ◇一致点(要求)を言葉で確認する作業。参画と尊重を軸とした
   民主主義が不可欠。
  ◇「いろんな人がいる」のは、プラスのエネルギーに転化しうる。
   集団の力。
  ◇人間関係はさまざまな「力」が働いている(そしてそれはなくせない)
   *役職とそうでないひと。先輩と後輩。年齢。知識のあるなし。
    経験のあるなし。雇用関係。ジェンダー。多数と少数。
   *強者と弱者、声の大きいひと小さいひとがかならずいる、という
    こと。組織なので、どうしても理解・認識の違いは生まれる。
   *労働組合は職場よりは人間集団がフラットだけれど、完全に
    フラットにすることはできない。どうしても活動経験豊かな
    人の「発言力」が大きい。
   *「力」をもっている側の姿勢(民主主義)が問われる。聴く姿勢。
    集団の力を信頼する。そうした努力方向なしに、組織力の底上げ
    はできない。
   *関係性がよくなると、自己を否定される恐れがなくなるので、
    その場が安全になる。様々な異なる意見が提示される。議論が
    生まれる。
   *民主主義は疲れるけど、「私」「私たち」が変わるプロセス。
    職場と社会を変える力に。

二。労働組合の質を高める(2)―学習教育活動
 
1。学習する。学びの場をつくる。
  ◇人権としての学習権

    「学習権とは、読み書きの権利であり、問い続け、深く考え
    る権利であり、想像し、創造する権利であり、自分自身の世
    界を読み取り、歴史をつづる権利であり、あらゆる教育の手
    だてを得る権利であり、個人的・集団的力量を発達させる権
    利である」         (ユネスコ「学習権宣言」)

   *労働者(主権者)としての発達を保障するという観点。
    その担い手としての労働組合。

  ◇日本の労働組合運動において、学習教育活動は決定的な役割を
   もっている
   *学校での労働者教育・主権者教育の不十分さ、マスコミも扱わない。
   *人権が脅かされる強い領域である労働市場に認識が不十分なまま
    放り込まれている現状。
   *自分たちを力づけるものを、まず知る
    「27条・28条は、経済市場において労働者等を勇気づける
    (empowerする)ことを要求しているのである」
        (青井未帆・山本龍彦『憲法Ⅰ 人権』有斐閣、2016年)

 2。組織的・系統的に位置づける。そして体制も。
  ◇労働組合は課題が山盛り。学習会は人が集まらない・・・。
   *どんな組織でも、「教育」という営みはある。教える・伝える・
    高まりあう・学びあう。それなしに組織の力量は高まらない。
    人が育たないから。ただし、労働組合には職場の労働者の要求
    実現という第一の目的がある。教育それ自体が第一の目的には
    ならない。
   *課題が多いと、どうしても学習教育活動の議論が乏しく。目的
    意識性が弱くなり、方針がなくなる。方針がないと点検・総括
    もなくなり、議論もしなくなる、という状況に。
  ◇労働組合執行部の構えと方針の確立・具体的、および体制保障がカギ
  ◇継続的な学びの場をつくることが力に
  ◇月刊誌『学習の友』(500円)もご活用を。集団学習用に編集され
   ている。
  ◇そもそも論を大事にする-基礎的な学びは活動の自信に。
   *そもそも労働組合とは、働くとは、人間とは、賃金とは、社会
    とは、仲間とは、団結とは、人権とは・・・。立ち返る。くりか
    えしが自信に。自分の立ち位置の確認。