長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

コミュニティ・オーガナイジング入門本

『社会はこうやって変える!~コミュニティ・オーガナイジング入門』
(マシュー・ボルトン著、藤井敦史・大川恵子・坂無淳・走井洋一・松井真理子訳、
法律文化社、2020年9月)を読み終える。

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イギリスの市民活動家による社会変革の技術書。コンパクトです。
関係こそがパワー。自己認識、1対1対話、パワー分析など。
あらためて整理、意識化できたことも。

日本の労働運動やら学習運動にも役立てたいが、
自分なりの咀嚼が必要で、ほかの実践理論とも組み合わせ、
リーダー研修などで引き続きみがいていきたい。

以下、メモ。

「もし変化を望むならば、パワーが必要だ。共通の利益を
めぐって、他の人々との関係を通してパワーを構築するの
だ。そして、共通に直面している大きな問題を具体的課題
に分解し、必要な変化を作り出せるパワーを持っている意
思決定者が誰なのかを特定することが重要である。それか
ら、意思決定者の反応を引き出すアクションを起こして、
彼らとの関係を構築する必要がある。もし、彼らが変化を
実行することに同意しないのであれば、アクションのレベ
ルを上げるか、より創造的な戦術を駆使することになる。
そして、実践しながら学び、徐々に小さな成功体験を積み
重ねながら、より大きな課題に対する準備を進めていく」(3P)

「私は、対面では誰とも話をしていなかったし、彼らが何
を本当に大事にしているかを知ろうともしていなかった。
私の失敗は、起こるべくして起きたのだ。だから、誰も現
れなかった。その会議に参加することは、彼らの自己利益
の中には入っていなかったのだ。彼らは、提供された課題
や戦略に対して、全く自分事として考えられなかったし、
私との間には、全く関係性がなかった。(中略)…あなたが
変化を欲するならば、パワーが必要である。そして、あな
たは、パワーを他者との関係性を通して作り上げるが、そ
うした関係性は、共通の自己利益や共通の目標を軸に作ら
れる」(46P)

「変化のための協働に耐えうるような関係性を作り上げる
ことは、Eメールでは無理なのである。それでは、答えは、
何だろうか。フェイス・トゥ・フェイスの対話が、その答
えだ。これこそが、コミュニティ・オーガナイジングの際
に最も重要なツールとなる。残念ながら、そこに近道はな
い。それは、時間がなくて、急ぐ必要があると感じられる
時でさえ、人々との対話に時間を割くこと、つまり、人々
と関係性を優先することを意味している。(中略)…私た
ちの多くは、人々と対話することができるし、このやり方
でパワーを作り出すことができる。ただ、私が言おうとし
ているのは、特殊なタイプの対話であり、これを上手に行
うには、本当に技と呼べるようなものがある。実践とコー
チングによって、こうした対話はどんどんうまくなる。他
の対話と区別するために、私たちは、それを『一対一の対
話』と呼ぼう」(51P)

「『でも、そんな対話をすべての人とするためにでかける
時間はない。』確かに、そんな時間はないだろう。だから、
誰との関係性を構築すべきなのか、どのようにパワーを作
り出していくべきなのかという点について戦略的でなけれ
ばならない」(53P)

「私たちは、『市民』になることを教えられていない。具
体的には、政治の技術、変化を起こす闘い方や現実的な妥
協の仕方などを学ぶことだ」(62P)

「仲間を連れてくることのできるリーダーに焦点をあわせ
よ」(94P)

「私は、社会を変えるということを、自分自身より上位に
置くことをお勧めしない。自己犠牲は必要ない。必要なの
はより多くの戦略である」(115P)