長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

岡山市職労の中央委員会で30分講演

報告遅くなりましたが、9日(火)夜は、
岡山市職員労働組合の第11回中央委員会&春闘学習会へ。
「今こそ労働組合の出番!」というテーマで30分講演。
コロナで会議の全体時間も短くなっています。

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リアル学習会では、書籍販売ができる!
ということで『コミュニティ・オーガナイジング』を持参。
講演後、完売しました。講演も好評だったそうで、感謝です。


以下、講演の概要です。

はじめに
「運動とは人間の集団が起こすものだ。運動には正式な
始めと終わりの瞬間はなく、決して1人の人間が始める
ものでもない。運動とは、電気のスイッチよりむしろ波
に近い。波は干満を繰り返し終わることがない。どこで
始めるか、そして終わるかは定かではなく、どこへ向か
うかは、周囲の状況や障壁に左右される。私たちは上の
世代から運動を受け継ぎ、心が折れることがあっても繰
り返し関わる意志を新たにする。運動は私たちが生きて
いくために不可欠なものだからだ」
(『世界を動かす変革の力
~ブラック・ライブズ・マター共同代表からのメッセージ』
アリシア・ガーザ著、人権学習コレクティブ監訳、明石書店、2021年1月)

一。労働組合とは? を考える
 1。生活にゆとりがあれば、「自分らしく生きる」条件が広がる。
  ◇「ゆとり」とは・・・。
   *「当面の必要を満たしたあとに、自由に使うことが出来る
    空間・時間や体力、他のことを考えるだけの気力があること」
               (三省堂『新明解国語辞典』第7版)
  ◇自分の生活や人生を操縦できている実感。手ごたえ。
   ゆとりが欠かせない。
  ◇生活の質と労働条件は連動。だから労働条件にこだわる。
   他人まかせにしない。

 2。使用者(政府や自治体)と労働者との“つなひき”

   「この法律で『労働組合』とは、労働者が主体となって
   自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を
   図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合
   体をいう」(労働組合法2条)

  *職場は人権侵害のデパート。つねに「非人間化」の力が働く。
   労働組合があることで、労使間のパワーの偏りを解消する。
   「資本」対「人間らしく」の綱引きが可能に。さらに、相手
   のパワーを上回るパワーを作り出したとき、変化は起こせる。
   「歯止め」(法律)以上の労働条件を勝ち取る。「歯止め」
   自体を引き上げ改良できる。

二。おかしいことを変える。労働組合で発声練習を。
 1。「日常化された異常(非人間化)」に気づき、仲間と一緒に変える
  ◇人間は劣悪な環境でも、「慣れる」「順応する」ことができる。
   適応力が高い。
   *権利侵害が「常態化された」場所は、それが強固な常識や
    文化になっている場合が多い。
   *残業は人権侵害。有期雇用も人権侵害。尊厳が奪われている。
    非正規労働者がこんなに増えていること、公務労働の役割が
    みえなくさせられていることも異常事態! おまけにストライ
    キ権はく奪。人権感覚をさびつかせないためには、運動と組
    織が必要。
   *人間らしさの「基準」「限度」は、気をつけないとスルスル
    下がる。「折り合い」という名の「がまん」。「どこも一緒」
    「公務員なんだから」「働けているだけで幸せだ」。
   *「健康で文化的な生活」「人間らしい働き方」とは? 問いを
    もち、議論する。
  ◇労働組合は、人権感覚をみがく最適の場所
   *人生1度きり。自分の生活や尊厳にこだわろう。人権感覚を
    みがき、当然の権利を主張しよう。でも現状、日本ではそう
    した異議申し立てする人は少数。訓練機会が少ない。

    「組織は、運動にとって決定的に重要な構成要素である。
    人々が居場所となるコミュニティを見つける場所であり、
    自分たちの周りで何が起きているのか、それがなぜ起きて
    いるのかを学ぶ場所である。そして、それによって誰が得
    をし、誰が害を被るのかを学ぶ場所である。組織とは、行
    動を起こすスキルを身につけ、法律を変え、自分たちの文
    化を変えるために組織化するスキルを身につけるところだ。
    私たちのコミュニティが直面する問題について何ができる
    かを決めるために、つながるところだ。運動に参加するに
    は組織の一員である必要はないと主張する人もいるだろう。
    そのとおりだ。しかし、成功している持続的な運動の一員
    になりたいのであれば、組織が必要である」
                (『世界を動かす変革の力』)

   *1人では声をあげにくい。仲間と一緒に、労働組合で発声
    練習を。学びの力を大事に。月刊誌『学習の友』(1冊500円)
    は、労組活動のイロハや情勢がわかりやすく学べる。岡山県
    学習協「労働組合たんけん隊講座 オンライン」もぜひ(5月~7月)。

 2。コロナ禍だからこそ、組織化(人と人をつなぐ)を意識しよう。
  ◇「リアルに集まる」とは別の手段も構築する。
   ・電話やラインでの対話をこまめに、ていねいに
   ・オンラインの積極活用と創意工夫
    (会議、学習会、企画、交流など応用可能)
   ・アンケート実施―声を聴く
   ・ニュース発行の強化―声をまとめ、労組の取り組みを伝える
   ・動画作成―見える化!
   ・SNS発信―見える化!!
  *いざという時はリアルに集まろう。そして絶対に成功させよう。
  *当事者の発信(声)、運動の「見える化」が、変化を起こす原動力に。

 3。トレーニング機会、その場と時間をたくさんつくろう
  ◇「労働組合の日常活動」については、みな初心者から出発する
   *対話の仕方、会議の進め方、人の誘い方、団体交渉の仕方、
    チラシやニュースの作り方、学習会の持ち方、方針(戦略)
    の作り方、総括の仕方、要求をまとめる作法、目標達成の
    技術、人と人をつなげる活動・・・。でも、こうした「パワー
    をつくりだす活動」のための「訓練機会」がほとんどない。
   *活動の前提となる「労働組合の目的への理解」「人権感覚」
    「労働法の知識」も、みずから学ばなければ、習得する機会
    はほとんどない。みな活動の「初心者」から。学習とトレー
    ニング機会をたくさん、意識的につくる。
  ◇わかりやすい活動指南書が、最近出版された
   *『コミュニティ・オーガナイジング』
        (鎌田華乃子、英治出版、2020年11月)
   *コミュニティ・オーガナイジングとは、「世界中の人々が
    昔から草の根で行ってきた『社会の変え方』を、理論的・
    体系的に学べるようにしたもの」(本書2P)。「社会的に
    パワーのない人たちをオーガナイズし、彼らのパワーを高
    めていくことを重視」(161P)「困難を抱えた人たちの力
    を引き出し、リーダーシップを育てていく活動」(224P)
    がコミュニティ・オーガナイジングの運動論。強い人や、
    すでにパワーをもった人にお願いしたり頼ったりするので
    はなく、立場の弱い人、困難に直面している人の「資源」
    を「パワー」に変えることを通じて変化を起こす。労働組
    合はまるまる応用できる。
   *この本をほしい方は、市職労を通じて購入ください
    (長久が2割引で販売しています)。

さいごに:コロナ禍だからこそ、「なぜ」「今」を言葉に。
要求を勝ち取り、自分たちの力に自信をもてる闘いを。