長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

朝鮮戦争、治安戦、アダムスミスの夕食、非戦論

最近読み終えた本。


■『朝鮮戦争 無差別爆撃の出撃基地・日本』(林博史、高文研、2023年6月)
朝鮮戦争のなかで米軍による朝鮮北部への徹底的な破壊、
無差別爆撃。その出撃・輸送・兵站基地としてフル回転した在日米軍基地。
もう10数年前だけど、朝鮮戦争を集中的に学んだことがあって、
ほんとうに日本は隣国の悲劇の上に戦後歩んできたことを痛感した。
今回あらためて、ナパーム弾を製造していた日本人労働者の写真などみて、
ガツンと頭を殴られた気持ちになった。
あと米軍の無差別爆撃。徹底的な破壊と殺戮。日本への空襲や
ベトナム戦争などもそうだけど、国際法に違反する無差別殺戮の空爆を
アメリカはずっと、裁かれてない。だからイスラエルの大量無差別爆撃や
殺戮に対して寛容なのだろう。痛みを感じていない。

■『日本軍の治安戦 日中戦争の実相』
 (笠原十九司、岩波現代文庫、2023年12月)
日中戦争全体のなかでの、華北での治安戦の経緯や実相を学べる。
笠原さんの『南京事件と三光作戦』を2006年に読んで以降、
華北での日本軍の蛮行は「2度と読みたくない」と思っていたけど、
また読んでしまった。プロローグの記述がしんどすぎた。
とてもここで紹介できない。映像化不可能の、悪魔の所業だ。
でもそれがあたりまえになってしまう、戦争の狂気と差別意識。
また、「三光作戦」=燼滅掃討(じんめつそうとう)作戦は、
まさに現瞬間にガザ地区で行われているものでもある。
「治安戦は過去のことではなく、現代の戦争である」(317P)の
指摘がずしりときた。

■『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か? これからの経済と女性の話』
 (カトリーン・マルサス著、高橋璃子訳、河出書房新社、2021年)
フェミニズム経済学者による16話。エッセイ風で読みやすい。
新しい発見はあまりなかったけど、
ジェンダーやケア視点を見落とさない経済学は重要だ。

■『イスラエル軍元兵士が語る非戦論』
 (ダニー・ネフセタイ、永尾俊彦構成、集英社新書、2023年12月)

イスラエルの教育の中で育ち、愛国心や抑止力による平和を
当然のものと考えていた著者(埼玉県秩父在住)が、
それを問い直し、「抑止力論」を否定、
日本国憲法の精神にたどり着く過程や実践が語られる。
イスラエルの人の「見方」「考え方」も自身の経験をともなって語られ、
なぜガザでの大量虐殺を多くの国民が「仕方のないこと」と
肯定するのかも、背景がよくわかる。
語られる内容は安全保障のみならず、日本の政治のこと、
私たちの日常の実践までと幅広い。
すべての問題は「人権」に行きつくという気づきもふくめ、
とても説得力があり、良書。
民医連の平和ゼミナールとかでも課題図書にしたらいいなと思った。