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長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

ストライキについてのメモ(1)

東海林智『15歳からの労働組合入門』(毎日新聞社、2013年)
75P~78Pより


 ストは東部労組のメンバーの支援も受け、メトロコマースや
背景資本の東京メトロへも要請を行い、成功裏に終わった。スト
後の団交で、65歳を超えた組合員の契約更新を約束させた。
ただ、半年間の更新を認めただけで、制度としての確立は実現
しておらず、今後も交渉を続けるという。とはいえ、ストライキ
が大きな力を発揮した
 労働組合のストは1960年~70年代、春闘が定着する中で増え
ていった。厚生労働省の調査によると、74年には半日以上の
ストライキが5197件(参加人員362万人)にも上っている。その
後、労使協調路線を取る労組が主流となり、労使の対立構図が
薄れたこともありストは減少に転じた。11年は28件(参加人員
1674人)である。74年の件数で186分の1、参加人員で2162分の
1にまで減った。今やストライキのやり方を知っている組合の
方が少数派だろう。中小の私鉄やバスの労組では春闘時期にスト
ライキを行う組合が、ごく少数だがある。その労組の元役員は
「ストライキをやると報告すると大手を始め多くの組合が支援
に来る。でも良く聞くと、『ストのやり方を勉強してこい』って
派遣されている」と笑った。ストが減ったのにはもう1つ背景が
ある。通信産業の労組役員が春闘時期に言っていた話だ。「今は
ストライキをやっても全然効果がないんですよ。仕事が止まら
ない。例えば、店舗の受付業務なんかはみんな派遣や非正規。
じゃ現場はといえば、そこも非正規。組合がストやっても日常
業務はなんてことなく動いてしまうんですよ。ストより残業拒否
闘争のほうがはるかに効果がある」。会社内で非正規の仕事領域
の拡大に歯止めをかけることができずにきたことが、ストの無力
化という形で労組に跳ね返ってきていることが浮かぶ。
 「ストなんてうっている時代じゃない」と訳知り顔に言う組合
幹部は実に多い。また、「お客や社会、市民の反応を創造すると、
とても(怖くて)ストなんてできない」と言う幹部も多い。スト
は時代で行うものでもないし、客や市民の反応が怖いというの
は、労組が社会的な運動に参加せず、うちにこもった運動に終始
してきたからだろう。言い過ぎかも知れないが団結権と団交権
だけで済むなら、なぜスト権が認められているのかをもう一度
考える必要がある。ドイツでは「ストライキ権を背景としない
労使交渉は使用者に対する集団的な物乞いに過ぎない」とまで
言われているのだ
 (中略)後呂委員長は、スト後、さまざまな労組の集会に招か
れ、経験を話している。その中で象徴的な言葉を述べている。
「ストをやるまではもちろん不安だった。けれど、たった6人で
も、仲間の支援も得てストができたのが大きな収穫です。私た
ちはこれまで団交で労働条件の改善を獲得してきました。それ
は、人の良い労務担当やっぱり『お願い』するような部分が
あったんだと思うんです。それが、定年廃止とかそういう話に
なるとなんともならない。ストは『おとなしく会社にお願いすれ
ば何とかなる』という幻想を打ち砕いてくれた。労働者にはスト
が必要なんだ、ストしかないんだってことが分かりました
 錆び付いていても、“伝家の宝刀”がなければ団交権も団結権も
輝くことはない。後呂委員長の言葉は多くの労働者を元気づける。
立ち上がり始めた若者にも、まだ声を上げることができずに立ち
すくんでいる非正規の仲間にも静かに深く広がっている。