きのう(8日)は20時から
全医労岡山地区協議会の執行委員会へ。後半の学習会講師。
内容は、前回(12月)「ストライキのそもそも」の続編、
「ストライキの方法論」。
20分講義して10分ほど感想交流。
日曜日の福祉保育労の学習会では、
「組合がストライキを構えて交渉しないと、ほんとの
ところで使用者と対等にはなれないし譲歩を引き出せない」
と強調。でもどうしても「ウチではできない」という
感想がでます。気持ちはわかりますが。
でも必要不可欠な権利を労働者の側から放棄しないでほしい。
そこから1歩、議論をすすめてほしいと思います。
「ウチではストライキは無理」と考えるのではなく、
「どうしたら労働組合の特別な権利である争議権を
活用できるか、どんな方法があるか」と議論できないでしょうか。
権利は議論し使わなければ錆びつくし
最悪の場合奪われてしまいます。
日本では公務員のスト権は
なんと約70年も不当に奪われている。異常なことです。
きのうの学習会でも、
「じっさいに出来るかどうか」ということが少しですが
話しあわれました。
もちろん団結力がなければストライキは逆に危険です。
でもほんとうに切実な要求を実現するためには、
ストを構えることは必要不可欠だと思います。
以下、きのうの講義概要、後半のみ紹介します。
一。簡単にストライキのそもそもについて振り返り(省略)
二。医療労働者もストライキの歴史あり(省略)
三。労働法ではストライキをどうあつかっているか
◇労働争議とは
*労働関係の当事者間において、労働関係に関する主張が一致
しないで、そのために争議行為が発生している状態又は発生
するおそれがある状態をさす(労働関係調整法6条)。
◇争議行為とは
*同盟罷業(ストライキのこと)、怠業(サボタージュ)、作業
所閉鎖(ロックアウト)その他労働関係の当事者が、その主張
を貫徹することを目的として行う行為及びこれに対抗する行為
であつて、業務の正常な運営を阻害するもの(労働関係調整法7条)。
◇届出義務
*争議行為が発生したときは、その当事者は、直ちにその旨を
労働委員会又は都道府県知事に届け出なければならない(労働
関係調整法第9条)。
◇公益事業での争議行為の届出
*次にあげる事業においては、争議行為を行う日の少なくとも
10日前までに労働委員会及び厚生労働大臣または都道府県知事
に通知しなければならない。1.運輸事業。2.郵便または電気通信
の事業。3.水道、電気またはガス供給の事業。4.医療または公衆
衛生の事業。(労働関係調整法37条)
◇批准投票
*ストライキを行うためには、組合規約にしたがって組合員(又は
代議員)の直接無記名投票を行い、その過半数の賛成を得て
開始する(労働組合法第5条)。
◇刑事免責
*正当な争議行為について刑事罰を科すことはできない(労働
組合法第1条第2項)。
◇民事免責
*正当な争議行為を行ったことによって使用者に損害を与えても、
使用者は労働組合又はその組合員に対し損害賠償を請求する
ことはできない(労働組合法第8条)。
◇不当労働行為制度による保護
*使用者は正当な争議行為を理由に組合員に不利益な扱いをして
はいけない。たとえば、使用者は正当な争議行為を指導したり
参加したりしたことを理由に、組合役員や組合員を解雇する
などの不利益な取扱いをすることはできない。また、組合が
ストライキをするかどうかといった重要な決定をしようとして
いるときに介入してはいけない(労働組合法第7条)。そして、
そのような使用者の行為があれば、労働委員会による救済の道
が開かれている(労働組合法第7条、労働組合法第24条など)。
■「正当な」争議行為とは
*正当性の判断基準は、争議行為の主体、目的、手段、開始時期・
手続、態様等によって個々の事案ごとに判断される。(1)労
働組合が主体となって行う争議行為であること(一部の組合員
が組合の正式な了承なく勝手に争議行為をするのはダメ)。
(2)争議行為の目的が、労働組合の目的(労働条件の維持・
改善)に沿う正当なものであること。(3)手段、態様が正当
であること。暴行や傷害等の暴力行為はどんな場合においても
正当ではなくなる(労働組合法第1条第2項)。
*政治ストライキは争議行為の内容によって正当性の判断が分か
れる。スト権投票などの手続きをふまなかった場合や予告なし
に行われる場合、正当性を疑われる根拠となる。
四。労働組合としてのストライキの構え方・取り組み方
1。ストライキをじっさいに構えるうえで配慮する点
◇団結力を背景にしなければ、ストライキは成功しない
*スト権投票などで圧倒的に賛成がなければ、そもそも行う
こと自体が厳しい
◇そのために、ストライキの目的・要求項目を、組合員全体のものにする
*要求の切実さ、実現性をみんなのものに。
*職場集会・討論が大事。「これだけは譲れない」要求の意思統一も。
*ニュースやチラシなどの宣伝活動を徹底しておこなう
*患者さん・利用者さんへの配慮や理解、管理職・非組合員
などの支持を得ることも大事
「ストライキはいつでも成功するとはかぎらない。これは労働者
と資本家とのあいだの1つの階級闘争であって、両者の力関係に
よって、成功することもあれば失敗することもある。これを規定
する労働者側の条件とすれば、なにより団結の固さいかんである。
団結が弱ければ、足もとをみすかされて、資本の譲歩をかちとる
ことはできない」(藤本正『ストライキ』新日本新書)
2。ストライキの形態について
◇全面スト→組合員全員参加のストライキ
◇部分スト→企業のある部分においてのみ行われるストライキ。
◇指名スト→特定の職場の特定の組合員を指名して、その人だけに
ストライキを行わせる。
◆ストライキの実施時間
*時間的な範囲を制約する法令はない。争議の解決まで継続して
行う「無期限スト」、一定の期限を定めて行う「時限スト」
などがある(15分、1時間、半日、8時間、24時間、3日間、
1週間etc)。
◇スト形態・時間にもよるが、保安要員を配置するのが一般的
(不足の事態を避ける理由)
3。妥結に関して
◇力関係を見極める
*労使の力関係(組織率、要求の切実度、団結の度合い、組合
周辺の支持など)も分析して妥協点をさぐることも大事。執
行部の思いだけでは勝てない。
◇組合員の気持ちを大切に
*争議中に組合員がまだ納得していないのに早々と妥結すると、
組合員が「裏切られた」などの挫折感や執行部不信をもつ
こともある。交渉団は何よりも組合員の気持ちを大切に、
討議も重ね、ねばり強い交渉で少しでも要求が前進するよう
にたたかう必要。
4。たたかううえでの基礎的力は
◇労働組合の役割、ストライキのそもそも論をみんなの認識に
高める学習活動
*日本ではストライキが激減しており、「迷惑」「そこまで
しなくても」などの認識が一般的。「労働組合の正当な手段」
であり、「ストライキなしには対等の立場で交渉できない」
という、そもそも論を組合員の共通認識にすることが大切。
◇そして団体交渉の場がなにより大事。団結の度合いがもっとも
あらわれる場のひとつ。