長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

「疑問や怒りを自分の中にとじこめない」

昨夜(25日)は、92期岡山労働学校の第4講義でした。
テーマは「職場におけるジェンダー」です。14名の参加。

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いつものようにグループ交流を入れながらの講義。

職場だけでなく、日常生活のなかに
“こびりついている”ジェンダー。
どのグループでも、
話題には事欠かないようでありました。


以下、レジュメです。


一。ジェンダーとは

 
◇「取り分けるのは誰の役目?」(毎日新聞10月4日付)


   「社会及び家庭における男子の伝統的役割を女子の役割と
   ともに変更することが男女の完全な平等の達成に必要である」
                (女性差別撤廃条約、1979年)

 ◇自分自身が経験・感じてきた「小さな“当たり前”」を出しあってみよう
  *「男なんだから○○」「女なんだから○○」
  *「○○するのは男」「○○するのは女」

二。職場におけるジェンダーに入る前に・・・
 
1。「はたらく女性」をめぐる客観的事実を押さえておきましょう
  ◇賃金格差(国税庁「民間給与実態調査」2016年)
   *男性の平均給与(年収。正規・非正規込み)―521万円
   *女性の平均給与(年収。正規・非正規込み)―280万円
   *正規に限ると、男性540万円・女性373万円(男性の約7割)
  ◇役職に占める女性の割合9.6%(民営・企業規模100人以上)
  ◇女性労働者の割合が高い職種の低賃金…保育、介護、医療
  ◇女性の非正規率55.9%(2016年)。
   女性の非正規労働者の平均給与は148万円
  ◇女性労働者の44.9%が年収200万円以下

  ◇第1子出産後に約半数の女性が離職―典型的なM字型雇用は日本の特徴
  ◇失敗すると職を失う「保育園探し」(保活)…待機児童問題
  ◇妊娠・出産、育児休暇取得を理由とする解雇も
   ―マタニティ・ハラスメント
  ◇男女雇用機会均等法制定から33年たつが…
   *女子を意図的に排除…東京医科大の不正入試問題。
    合格女子の55名が不合格に。
   *これは医大だけのことではなく、就職活動でも実際に
    はびこっている差別

 2。みなさんは、この現実をどう捉えますか? どう思いますか?


三。ジェンダー構造がこびりついている職場のあり方
 
1。仕事内容からはじまる「性差」
  ◇総合職より一般職が多い女性労働者(昇進・昇格の差に)
   *総合職とは、社内の中心的業務にかかわる基幹職のこと。
    一般職というのはその周辺部分の事務処理などを中心
    とした補助職のこと。
   *補助的業務、お茶くみ…。
    女性の離職理由の大きなひとつに「やりがいがない」
  ◇職場はセクハラ・パワハラのデパート
   (力の差がハラスメントを生む要因)

 2。構造的につくられてきた「男は仕事」「女は家庭」
  ◇持てる労働力のすべてを職場に吐き出す男性労働者。
   *職場で生息。ではその男性労働者の「生活」は誰が支えるのか?
    ケアの支え手として、家庭の中の女性労働力が位置づけられる。
    その役割は男性会社人間の周到なメンテナンスと、未来の労働力
    である子どものたちの育成。
  ◇1950年~70年代。女性だけに対する若年退職の強要。
   *『男は職場で過剰労働、女は家庭に全責任』という財界の労働者
    家庭管理政策の一環でもあった。高度成長期後半の労働力不足に
    際して財界は中高年女性のパート活用をすすめ、家庭責任と低賃
    金労働力の両方を強制しはじめる。
  ◇企業にとって都合のいい労働力としての「女性の労働力」の活用
   *雇用の調整弁。人件費抑制の手段。
    賃金抑制を、社会保障・税制で誘導。
  ◇女性が働き続けることを阻む最大の障壁―長時間労働問題

 3。ジェンダー規範は私たちに何をもたらすか
  ◇ジェンダー規範の一般的傾向は、男が上で女が下。不平等の押しつけに。
   *とくに権力や企業から強いられるジェンダー規範は、私たちの
    自由選択への侵害。「こうでなければならない」の押しつけ。
   *ジェンダーギャップ指数で144か国中114位の日本。それは男性も
    女性も、LGBTなどの性的マイノリティの人も、「生きづらい
    社会」「すすむ道を強制されやすい社会」。そして、持っている
    潜在的力を発揮できない社会。

 4。では、どうしたらこの現実を変えられるのか?
   あなたには何ができる?

以上。


以下、何人かの感想文です。

■意識していなくても、ジェンダーギャップ的な
価値観を持ってしまっているところがある。注意
しておきたい。

■ジェンダーの意識は、小中学校を通してつくられ
ているような気がして、いろいろ反省もしました。
とりあえず、教育勅語を使わせない!ことをつらぬ
きたい。ランドセルの黒か赤か論争に、いろんな色
が増えていって、黒か赤かに限らなくなったように、
男か女かにこだわらない、個性を大切にする社会に
していきたい。

■話をしていると、あれもジェンダーこれもジェン
ダーになってしまう。日頃、意識するしないに関係
なく、しばられている事実。この事実を話し合う場
があることが大切。

■あるあるジェンダーがたくさんありすぎて、かな
りおもしろかった。知らず知らず染まっている。そ
れを意識すること。男、女とくくるのではなく、そ
の人らしさを大事に。女性の家庭での力を頼りすぎ
なのが政府。

■どうしたら現実を変えられるのか。マイレボリュ
ーション。疑問や怒りを自分の中にとじこめない。
私らしさを尊重してもらう。同様に、自分以外の
人のその人らしさを尊重する。

■「幸せは他人が決めることではない」というグル
ープ発表の言葉が印象に残りました。「それぞれの
幸せ」を「男だから」「女だから」でジャマされた
くない! そして、つくずく長時間労働は日本から自
由と幸せを奪っているな…と思いました。自分も
知らず知らず、子どもたちに「○○らしさ」を押しつ
けないよう、そういうことに敏感でいたいと心しま
した。そのために、労働学校みたいな場所は大事だ
なと。