きのう(27日)は85期岡山労働学校の
第7講義でした。13名参加。
講師は、岡山県高等学校教職員組合書記長の
竹内宏和さん。
「学校現場と主権者教育―憲法・平和・人権」というテーマでした。
竹内先生の教育観と情熱が伝わってくる、
すばらしい講義でした。
もっとたくさんの人に聞いてほしかった~・・・。
竹内先生は、1971年の42歳。大阪の摂津市で
小学校4年生まで過ごされましたが、父親の実家のある
岡山県の勝央町に引っ越してこられました。
京都の大学を卒業後、日本原高校で講師として初仕事。
その後、大原高校に3年間、これも講師としての赴任でした。
その大原高校の3年間は、これまで自分が出会ったことのない
高校生たち(授業を聞かない、家庭訪問での衝撃など…)と
向きあうなかで、自分の教師観というものがつくられていったそうです。
またその当時は、教師集団として生徒に向きあう雰囲気、
先生どうしが助け合うこと、
また仕事自体にもまだ多少の「ゆとり」があったとのことでした。
その後、難関だった社会科の教員採用試験をパスし、
正式に高校教諭となられました。
次に、「高教組は何をやっているの」という話に移り、
先生たちの賃金・勤務条件の改善を中心に、
「いい教育がしたい」という研鑽の場としての教研活動も重視し、
また、さまざまな社会問題にも取り組んでいることを紹介。
賃金問題では、岡山県独自に賃金カットが行われていた
という実態が述べられ、「当たり前の賃金が払われない異常」と
いうことを指摘されました。
また、竹内先生は、ご自身の娘さんの闘病体験から、
先生にゆとりがなければ、見方が狭くなり、生徒に攻撃的になったり、
いい教育はおぼつかない、ということが述べられました。
そのためにも、労働組合で労働条件の改善をすることの
必要性が強調されました。
また、いまこそ組合が必要なときなのに、
先生たちのなかには「多忙化でそれどころでは・・・」
「政治的なことになぜ組合が関わるのか」といった
ことも言われることが紹介されました。
しかし、社会全体と教育というのはさまざまなつながりがあり、
たとえば労働・雇用問題でも、
自分たちの向きあっている生徒が
貧困や格差や劣悪な労働環境が蔓延しているところに
就職していく問題として考えなければならないと語られました。
竹内先生は、「先生の多忙化」「現場の過酷さ」ということにもふれ、
月の平均残業時間は約73時間であること、
残業が過労死ラインの100時間を超えている先生も多くいること、
「特色づくり」「学校再編」などの課題に追われて疲れ果てている現状、
でも、圧倒的多くの先生はほんとうにまじめで情熱を持っていて、
「生徒のため」と言われれば、がんばってしまう状況があると述べられました。
大元には、人が足りていない、貧困な教育予算の問題があることが
指摘されました。
講義は後半、「主権者教育」についてふれられ、
「生きる力を育てるは叫ばれるが、「主権者を育てる」とは言われない。
人権教育について県教委も熱心だが、内容をみると、
「人権問題教育」に矮小化されているのではないかという疑問、
人権教育の第1歩目は、「子どもの意見表明権」(子どもの権利条約)で
はないかと述べられました。
また、伝統的な学校での授業スタイルの問題にふれ、
「生徒はだまって授業を聞くこと」が学校教育では徹底され、
「意見を言うこと」「議論をすること」や、ともに学びあうという
ことが日本の授業のなかでは希薄で、
先生はトークとチョークの職人芸が評価されやすいと言われました。
竹内先生自身も、そうした一方通行の授業スタイルを
なんとか脱皮していこうと、試行錯誤の途中だそうです。
(いまは組合専従で現場からは離れていますが・・・)
ただ、そうした授業スタイルの改革についても、
「大事なこと」とはわかっていても、学校現場のゆとりのなさ、
進学校ではとにかく点数の取れるようになることが重視され、
なかなかそこに踏み出せないという葛藤があること言われました。
竹内先生は、その主権者教育の延長線として
長野県辰野高校の「三者協議会」の実践に学び、
当時赴任していた落合高校で「先生」「生徒」「保護者」が
いちどうに会して自由に学校運営や授業に意見を
言う場としての「三者協議会」の取り組みをねばり強い努力で実現。
その「三者協議会」の場でみえた生徒や先生の
驚く変化や成長に、生徒観が変わる芽生えをみつけることが
できたと報告されました。
最後に、教育の「受益者」は、子どもや保護者だけではないこと、
社会全体が教育の営みの成果を受けていること、
どの子にも学ぶチャンスを平等に保障することの大切さ、
学校のなかでも、いろいろな先生がいることの大切さ(「学校の生物多様性」笑)、
先生自身への管理・評価のなかで萎縮している現状、
もっと子どもを交えて「理想」を語りあうことの
大事さを強調され、講義をしめくくられました。
学校現場での先生たちの「たいへんさ」を実感する
講義でもありましたし、教育のゆがみ、社会のゆがみ、
そのなかで、先生自身も変わらなければいけないこと、
組合活動の大切さ、
なにより政治が変わらなければいけないこと痛感する
講義でした。先生たちのがんばりにも限界があります…。
竹内先生の実践や経験をたっぷりふくんだ講義で、
とても楽しく聞くことができましたし、
おおきな共感を生んだ内容だったと思います。
ありがとうございました!
以下、参加者の感想です(一部)。
◆私には高1と高3の子どもがいるので、先生のお話に
出てきた子どもたちの話を聞いて、うちの子と一緒だと
思いました。親子だけでも、先生と親、先生と生徒だけでも
出来ない話が三者協議会は出来るところがとても良いと
思います。もっと長く続けてこの三者の話が出来たらいい
なあと思います。そのことでお互い理解しあえればもっと
良い教育が出来るんじゃないかと思いました。また
竹内先生の憲法の話が聞きたいです。
◆私も親が教員です。先生の残業は本当、多いです。
おそくまで帰れないです。竹内先生の話、おもしろく
聞きました。主権者教育の「三者協議会」、私が高校の
ときあったらよかったと思いました。成績のことや服装の
しめつけや、押さえつけられたことだらけなので・・・。
『「だまって聞け」といわれていたのでしゃべれと言われ
ても話せない』という言葉、私も同感です。
◆おもしろかったです。三者協議会が広まればいいですね。
◆目に見えない先生の大変さが多少なりとも知ることが
できました。未来の子どもたちのためにも先生にゆとりを!
◆教員の仕事はきりがない仕事だと思っています。最近は
少しコントロールしていますが、学校で仕事をしていなければ、
労働学校にも来ていなかったと思うくらい、生活の色々な
ことが仕事につながっています。今日の講義は、共感できる
ところがたくさんあって、おもしろかったです。
◆今日の話は、すっごい楽しかった。残業代がつかず、
4%つくって知らなかった。「人権教育」が「人権問題教育」
になっているのは、ホーっと思った。
◆学校の授業以外で学校の先生の話を聞く機会って、
あまりない気がしました! いろいろな体験が聞けて
楽しかったです。三者協議会は私が学生のときにやって
みたかった・・・!! 学校の先生は大変だなぁ・・・と思う
と同時に、人間の成長に向きあえるステキな仕事だなと
思いました。