土曜日(2日)の午前中は、岡山医療生協へ。
第19回生協学校の第1講義
「憲法と医療生協―情勢を学ぶ」の講師を担当。
岡山医療生協の理事さんと
職員さんと、半々ぐらいの参加。
60分間、ばーっと話を。
みなさん、熱心に聞いていただきました。
ありがとうございます。
以下、講義のレジュメです。
一。健康(+文化)、平和、いのち―憲法とのかかわりで
1。健康と文化を考える(憲法25条の人間観を考える)
◇肉体的・精神的・社会的
*バラバラでなく、相互に関係
*国際的な調査では、「孤独を感じる」という子どもの割合が
日本はダントツに高く、「ありのままの自分でいい」という
自己肯定感情も低いのが特徴…。
*先進国でとびぬけて長い労働時間
◇ゆとりが文化を育てる
*文化が決定的な役割を持っているのは人間だけ
*お金・・・下がる雇われ組の賃金。消費税上がる。年金下がる。医療費上がる。
*自由な時間・・・時間の貧困を生み出すもの
*人間関係・・・孤独のなかからは、文化は育まれない
*貧困は文化を蝕む。戦争は文化を壊す。
2。いのちは「かけがえのない」ものー私たちの不動の立ち位置
◇「すべて国民は、個人として尊重される」(憲法13条)
*取り替え不可能。命はひとつ。人生は1回。
*無条件の「生」の肯定。無条件の「あなた」の肯定。
*この立場に立ちきれるかが、医療生協の理念の実践のカナメになる
*お金のあるなしで「命の格差」「尊厳の格差」があってはならない。
*使い捨て労働の蔓延(ブラック企業問題)を許してはならない
◇戦争は、「個人の尊重」とはまったくかけ離れた、対極にあるもの
*その究極のものが、「核兵器」―その無差別性
*人間性の欠如―戦争指導者の罪
・アジア太平洋戦争での死者→アジア2000万人、日本310万人
・中国人は「チャンコロ」、フィリピン人は「黒んぼう」
・兵士の命は「鴻毛より軽し」(軍人勅諭)-消耗品として
「ひとりにはひとつの命、というのは実感だもんねえ。海軍に入って、夜はハンモックをつるして寝るんですが、当時の軍隊では人間よりハンモックのほうが大事だった。練兵場の一番はずれにハンモック用の防空壕があって、空襲警報が鳴るとまずハンモックをたたんでそこへ持って行き、ハンモックの安全を確保しなければならない。一番安いものは人間だということになっていて、『おまえらの代わりは1銭5厘(はがきの値段)でいくらでもくる。ハンモックがいくらするかわかるか』と何度いわれたことでしょうか。もうめちゃくちゃだったねえ。僕らは員数として扱われた。員数のひとつだと思い知らされた。けれども数じゃない。ひとつひとつが大事な命だぞ、と。それは、本当の、僕の心の底からの叫びだもの」
(島本慈子『戦争で死ぬ、ということ』岩波新書より、
城山三郎さんのインタビュー部分を引用)
3。平和という空気が、どんどん汚染されてきている、見通しが悪くなってきている
◇自衛隊は「戦場に行けない軍隊」「人を殺せない軍隊」―9条2項のしばり
・しかし、近年、自衛隊は戦力も装備も飛躍的に向上。日米の共同訓練も激増。
◇集団的自衛権の行使へ―日米同盟を絶対視する安倍内閣の暴走
*集団的自衛権は、これまでつねに大国による侵略の口実になってきた
*国家安全保障会議(日本版NSC)設置法。軍事・外交をトップダウンで強力に。
◇特定秘密保護法案(臨時国会に提出。今国会の成立を狙う自民・公明)
「日本国民は、…(略)…政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こる
ことのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣
言し、この憲法を確定する」
(憲法前文より)
*政府の行為を「秘密」で覆いつくす。それは、戦争への道につながっていく。
*この法律の問題点(ぜひ別途学習会してください)
①政府や行政機関にとって都合の悪い情報はなんでも「特定秘密」にできる。
②なにを特定秘密にするのか、国会議員も、誰もチェックできない(自由裁量)。
③何が秘密にされたのかも秘密。「特定」ではない。なんでも秘密になる。
④行政機関の長が秘密指定する範囲「防衛」「外交」「特定有害活動」「テロリズム」
⑤特定秘密の「指定期間」は5年だが、政府の判断でいくらでも延長可能。
⑥文章の廃棄や特定秘密の更新も知らされない。ブラックホールへ吸い込まれる。
⑦漏らした人間に重い罰則。内部告発の封じこめ。最高10年の懲役。
⑧秘密を漏らす恐れがないか「適性評価」。本人だけでなく、まわりも。人権侵害。
⑨「知ろうとする」行為自体が処罰対象に。教唆(そそのかし)、煽動(あおる)。
⑩自分がなぜ逮捕されたのかも分からないで逮捕という事態も。
⑪自治体も国の情報をキャッチできず。原発、基地、TPP。もの言えぬ自治体。
⑫「触らぬ神にたたりなし」。「知る行為」事態を萎縮させる。民主主義が死ぬ。
⑬アメリカには情報がダダ漏れ。日米軍事同盟の一体化のもとでの秘密保持。
二。いま、私たちが何をすべきか
1。ひとりひとりが、主権者として成長する―個人まかせにせず、組織の目標として
◇憲法12条が求める「不断の努力」とは
*憲法の理念を、自分のものとしてつかみなおす(とくに第3章の基本的人権)
*その「憲法のメガネ」で社会や政治をみる力を(政治に強くなる)
*お上にもの申すことができる(16条の請願権)。署名、集会、請願、抗議行動…。
*集まる、組織を強くする、話しあう、書きあう、表現する!(憲法21条)
*学ぶことをいつも大事に。歴史も。―「知識は力なり」(フランシス・ベーコン)
2。ノーマ・フィールドさんの言葉から(『女性のひろば』2012年6月号より)
「そうは言っても個人はそんなに強いものじゃないんだよなあ。
“ひとりひとり”じゃ無理なんだよなあといつも思うのです。1人で
突出したことをやらなくてはならない、それができない自分は
ダメだと責める。そういうやり方では運動は進まないような気がしています」
「私は子どものころは、勇気は個の中から出てくる、本質的に
個に根ざしたものだという気がしてきました。でも今は、それは
大きな取り違えで、勇気というものは個人のものではなくて、
もっと社会的なものかもしれないと思うのです。つまり、仲間が
いるからこそ勇気が出てくるというのがありますよね。そういう
意味で運動の大切さを感じます」