憲法の心に耳をすます~連載6回目
毎月、山口県の医療生協健文会の機関紙
「健康のひろば」に連載している憲法の話、6回目です。

憲法25条は「生存権」を規定した条文と言われますが、
よく読むと「生存」という言葉はどこにもなく、「健康で
文化的な最低限度の生活」と書いています。私は「生活権」
と呼ぶべきではないかと個人的には考えています。生活は
一人ひとりにとっての「小宇宙」であり、かけがえのない
ものだからです。生活は人権です。
健康で文化的な生活とは?
大事なことは、「健康で文化的な生活とはどのようなも
のか?」「その基準はどこにあるのか?」を具体的に考え
ることです。
フランスの貧困指標のひとつに、「過去1年間で、1週
間以上の旅行をしなかった」という項目があるそうです。
たかだか1週間の旅行ができない状況は貧困である、人間
らしい生活とはいえない。これがフランス社会がつくりあ
げてきた「最低限度」の基準です。日本とはすいぶん違い
ますね。
「人間は、草木とちがって、ただ生きてゆくだけでなく、
人間らしい生活をしてゆかなければなりません」(文部省
『あたらしい憲法のはなし』)。では人間らしい生活、文
化的な生活とはなにか。1人ひとりが考え、議論すること
が必要です。人間らしさの基準は、勝手には上がらないの
です。
異常な日本の年金水準
安倍政権は、過去最高の防衛予算を計上し、自衛隊が海
外で武力行使が可能になる憲法無視の政治をすすめていま
す。同時に、それは国民の人間らしい生活を置き去りにす
る政治と表裏一体のものです。
日本の年金水準は現在、現役時の収入の35.1%だそうで
す(平均)。フランスは55.8%、一番高いオランダは90.5
%です。オランダでは現役時代とほとんど変わらない生活
水準を維持できます。夢みたいな話ですが、こういう社会
もきちんとあるのです。
日本は世界第3位の経済大国であり、お金がないのでは
ありません。無理ではないのです。富の分配が大企業や富
裕層にあまりに偏っていることが問題です。「政治は1人
ひとりの人間らしい生活をまもれ!」の声を広げましょう。
憲法は私たちを励ましています。