長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

労働組合のそもそも 福祉保育労の分会にて

きのう(9日)の夜は、久しぶりに
福祉保育労あゆみ保育園分会の学習会に。
「労働組合のそもそもと、あり方・たたかい方」
というテーマで50分ほどお話しました。

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講義の前半は、労働組合の基本のところ。
後半が「あり方・たたかい方」という活動原則の部分で、
だいたい以下のような内容でした。

*   *   *   *   *   *   *   *

三。労働組合のあり方・たたかい方
【前提として】
 ◇労働組合の活動は強制的にさせられるものではない(原則として)。
 ◇仕事以外の時間と労力をつかう。つまり生活を侵食する。だから
  「みんなで分担して活動」が大事。憲法12条が求めている「不
  断の努力」をみんなが放棄したら?
 ◇「活動の主体性」を育むには、「労働組合」への認識を深める
  ことが欠かせない
 ◇ただ、どこまでいっても「たいへんさ」「苦しさ」はつきまとう。
  でもだからこその「喜び」「楽しさ」もある。労働組合の性格や
  魅力を知り、「そもそも」「基本」をくりかえし学ぶことで活動の
  自信につながる。

 1。要求をなにより大事にする
  ◇「要求」が生まれる必然性=労働者の立場。
   雇われる・使われる・労働条件。
  ◇湧き出てくる「思い(言葉)」を出しあえる、セイフティな場を
   *「しんどいなあ」「なんか違和感」「おかしいんじゃないの」
   「先が見えない」「これだけ働いても賃金これだけか・・・」
   「休みがなかなかとれない」「人が足りない」「この仕事内容
    改善したい」「権利がないがしろにされている」
   *それぞれの思いを表現できる場づくり。
    グチを出せる場。それを聴く耳。
  ◇不満を言葉で表現することで(話す・書く)、論議の土俵にあがる。
   共通認識になる。要求への道すじに。
  ◇表出しにくい「思い(言葉)」こそキャッチしようとする労働組合に
   *批判的思考・知識自体が奪われる傾向にある
          -「これがあたりまえ」という感覚。
   *人間はしんどくても「がまん」することもできる。
    あきらめてしまうこともある。
   *力関係のなかで自分の意見を出すのはたいへん。本当に切実な
    「声」というのは、それを表現できる場がないと、けっして表に
    出てこない。
   *痛みや切実さというのは、とても個別性が高いので、「わかった
    もの」としない。
  ◇要求を大事にすることを支えるのが、基本的人権への認識
   *「言わずにおれない」「ほっとけない」「なんとかしたい」

 2。集まりたくなる場を手間ひまかけてつくる
             ―民主主義の条件は「場」があること
  ◇現代人の生活は多面的で多忙。職場も多忙。時間がない、ゆとりがない。
   *組合のことを考える、活動する時間を確保すること自体がたたかい
  ◇「集まる」ことが、労働組合の原点であり、力の源泉
   *労働組合がパブから誕生したワケ―「話しあえる自由な空間」
   *労働者が集まるには、「自由な時間」「集まれる場所や空間」
    「集まれる体力」「集まろうとする意志」が必要であり、現代
    日本では簡単ではない。
   *場所や時間帯の工夫。少人数でもねばりづよく。
  ◇1回1回の集まりの場を成功させる努力
   *「また来たい」「職場の仲間も誘いたい」「疲れていても参加
    すれば元気がでる」「あの人がいるから」「ここにくるとほっとする」
    「話を聴いてくれる」「楽しい」
   *ちょっとした工夫や楽しみの準備。集まる場の雰囲気づくり。
   *力関係の働かない空間と人間関係。ケア的関係。
    自分が自分でいられる場

 3。民主主義的空間・運営(自分たちの力を最大限引き出す)
  ◇大事なことは、「場」のなかで対話・議論が生まれるようにすること
   *講演を聞くだけ、一方的な報告のみ、一部の人しか話さない
     ←効果は限定的。
   *対話・議論は、自分とは異なる考え・経験と出会う機会をつくる。
    成長の機会。
  ◇労働組合は、最大多数の労働者を結集できる
             ―逆にいえば、いろんな人がいる。
   *違いがたくさん。違いばかり。そして違いは目につきやすい。
   *雇用形態、賃金、労働条件、仕事内容、資格の有無、能力、性別・・・
   *生活環境、人間関係、考え方、支持政党、行動パターン、趣味・・・
   *「要求」にたいするとらえ方・考え方は、簡単には一致しない
  ◇一致点(要求)を言葉で確認する作業。そこには民主主義が不可欠。
   *会議・ディスカッション・情報共有の場を大事にする
   *要求づくり、諸活動、組織運営、組合員拡大
             ーみんなで話しあい、考え、実践
  ◇1回1回の会議を大事に。会議は活動のバロメーター。

  ◇民主主義はめんどうくさいが、それ以上に楽しいもの
   *民主主義の反対物→力のあるリーダーによる組織運営・方向づくり
   *ゆとりがなければ「おまかせ」になりやすい
   *運動を広げるためには「みんなで」を追求する。
    自分だけでやらない。頼む。
   *1人ひとりの参画こそが労働組合の力を最大限発揮する方法。
   *1つひとつの課題についてていねいに理解してもらう努力。
    納得と共感。
  ◇経験や生き方の姿勢を次の世代にも伝えていく努力。
   *日常活動のあれこれ、団体交渉、労働相談、
            ・・・一緒にやる。ともに成長する。
   *歴史を伝える。物語を語る。

 4。学習する。学びの場をつくる。
  ◇日本の労働組合運動において、学習教育活動は決定的な役割
   *学校教育で教えてくれない、マスコミも扱わない、ウソの情報が多い 
  ◇学習会は、「やりたい」「知りたい」内容と、制度的に保障する内容と
   *情勢、課題、問題意識・・・
   *あわせて、組合員としての成長を保障する基礎的学習を制度
   *少人数でも継続的な学びの場をつくることが力に
   *個人まかせにせず、目的意識的に学びの場をつくる。
   *学びの場に積極的に(自己投資)。身銭を切る(本や雑誌を買う)。
   *月刊誌『学習の友』(500円)を読もう
  ◇そもそも論を大事にする
   *「そもそも」とは? → 「問題となる事柄を論じるのに先立って、
    その根源にさかのぼって事を説き起こす様子」(三省堂『新明解
    国語辞典』第7版)
   *そもそも労働組合とは、働くとは、人間とは、賃金とは、社会とは、
    仲間とは、団結とは、人権とは・・・。立ち返る。くりかえしが自信に。
    自分の立ち位置の確認。
   *本質をきちんとつかんでいれば、めまぐるしく生起する現象・情報に
    ふりまわされない。自分の力で考えられる。仲間を信頼する立場に
 
 5。組織拡大を追求する
  ◇仲間を増やすには、「労働組合を伝える」ことが必要。
   *自分自身の言葉が問われる。
   *仲間の要求や立場によりそいながら、労働組合の大切さと魅力を。
   *メリット論ではなく。生き方の姿勢として語りかける。仲間として。
  ◇数こそ力。団結が強く大きくなれば恐いものなし。
   *社会を変えるためにも組織拡大
 
 6。職場を基礎に、産業別・地域に結集し、全国の仲間の力をひとつに
  ◇困難だからこそ、外に!―労働組合の力の本質

さいごに:「学習活動は、あらゆる教育活動の中心に位置づけられ、人間を
     できごとのなすがままに動かされる客体から、自分たち自身の
     歴史を創造する主体へと変えていくものである」
                     (ユネスコ「学習権宣言」)

*   *   *   *   *   *   *   * 


感想交流では、それぞれの労働組合への認識や
活動への悩みや思いが率直に出しあわれ、
とても貴重な時間になったと思います。よかった。

ベテランさんも、新人さんも、
あらためて、何度でも、
「労働組合の基本」に立ち返ることの大事さを思います。


参加者の感想文です。

■初めて、労働組合の話をきけて、本当に良かったです。
細かいところまで知ることができ、勉強になりました。
自分の中で、全体的にゆとりはなく、また困っている
ことなど、なかなか言えにくいことが多いですが、
少しずつでも言えるように、変わっていこうと思います。
1人で、ためこんでしまうこともあるので、組合で
言えるようになりたいです。

■ゆとりがあるかないか、と聞かれれば、ない気もする
けど、他の園にくらべれば定時に終われたり、平日に
休みもあるし、超勤もつくので、めぐまれている方で
あるけど、今回、話を聞いて、そもそもとか、なぜ?
など、いろいろ考えてみることで、もっとよりよい
仕事になるのではないかな、と思いました、1人では
なかなかできないことも、みんなですれば、きっと
何か得られるものはあるんじゃないかな、と思いました。
ありがとうございました。

■今回の話を聞いて、自分の中でいつも疑問に思っていた
労働組合のそもそもについて、少しは理解することが
できたのかなと思います。また、その中で、私たち福祉
従事者が、どのように関わっていくのかを知りたいと
いう思いも生まれてきました。利用者に迷惑をかけず
より良いものをつくっていくため、はたまた、同じ悩みや
思いを持つ方々と協力することは国さえも動かし、より
よい社会をつくっていけるのではと感じた時間でした。

■ありがとうございました。あゆみ保育園にいるから、
組合があるから、長く働き続けられてきたと思うし、
もうダメだ…と思っても「人間らしい生活」とまでは
いかなくても、その理念(?)が感じられるから、
生活は大変でもやってこれた。自分らしく生きてこれ
たと思っています。これからの人たちにも伝えたいし、
みんなで支えあって、この職場を大事に、また変えら
れたら…と思います。

■ありがとうございました。労働組合について教えて
もらって、すごくかたいイメージがありましたが、
"自分のために”"仲間と一緒に”というところで、自分
らしく参加し、自分らしく声をあげていけばいいん
だと、前向きになることができました。まだまだ
発言はできていないけど、どんなことでも発言して
いき、そのことで今の現状が少しずつよくなっていけ
ばいいなと思います。そして、毎日の何気ない会話や
何気ない発想を大切にしながら、過ごしていきたい
です。

■改めて、組合とは…の話を聞き、10年も組合員
なのに、ぜんぜん理解してなかったなと思いました。
でもまだ人に語れるほど理解してないので、まだまだ
学ばなければと思いました。あゆみ分会も、学習会を
やっていこうと話していたけど、今まで忙しいことを
理由にまったくできていなくて、今年、どうにか!?
2か月に1回、集まっているので、このまま、続けて
いき、みんなで話し合い考えながら、やっていけれ
たらと思います。今日はありがとうございました。

■「文化」が“1人ひとりの尊厳をつくる”ということは、
もちろん労働組合にとって1人の人間にとって大切な
こと。だからこそ、日々向き合っている子どもたち
にも大切にしたいことだと改めて思いました。分会の
学習からベテランはもちろん若い人たちが自分の仕事
や生き方、想いを持てるようになっていってほしいと
願っています。ありがとうございました。今後もよろ
しくお願いします。