最近読んだ本。これで2016年は146冊。
目標の年間150冊まであと5日で4冊・・・。いけそうだが微妙。
『遠い空ーシベリア抑留記・病床雑記』(岡本良三、静山社、1988年)
シベリア抑留を体験し、退職後ALSを発症した著者。
「子や孫のために」と自身の体験をパソコンに1字1字
9か月かけて病床で打ち込んだ記録。内容は客観的かつ壮絶。
地元、岡山の方で入院病院もよく知っている。
そしてじつは、私の自宅すぐ近くに神経内科のクリニックを
出されている難波玲子先生が「病気と共に生きる岡本さん」
という一文を寄せている。
難波先生、とっても気さくな方ですし、
神経難病のプロフェッショナルです。
『永い言い訳』(西川美和、文春文庫、2016年8月)
胸に食い入る感はてしなく。妻の突然の死。
そして夫たちと「小さなひと」たちとの交差と
「喪失をかかえた生」の始まり。
これは女性でないと書けない小説かもなあ。
映画も観てみたくなった。
『修羅果てしなくー相馬で考える』(中沢正夫、萌文社、2013年)
精神科医・中沢正夫が東日本大震災と原発事故を受け、
福島県相馬市に支援に入った経験を通じての思索エッセイ。
精神科医ならではの視点になるほどと思いながら読む。
内容は重たいが気張らない文体はいつもどおり。
『患者のカルテに見た自分ー精神科医のノートから』
(中沢正夫、情報センター出版局、1986年)
患者のストーリーを中心に。人間的とはなんなのかなあ、
などとフト読む手が止まり考えてしまう内容であった。
不可解さを本質的に持ち合わせているのが人間。
心とはじつにヤッカイである。
『だから荒野』(桐野夏生、文春文庫、2016年11月)
はてしない荒野とも思える日常から
「逃げ出し」「解放されたい」という思い。
強弱や質は違うけれど「違った人生」「やり直し」を
求める人間的欲求はたくさんの人に在る思いだろう。
家族関係を軸にした主婦の「逃避行物語」。
『ねころんで読める 呼吸のすべて
~ナース・研修医のためのやさしい呼吸器診療とケア』
(倉原優、MCメディカ出版、2015年)
今すぐためになるところは少なかったけど、
安心のために手元に置いておこう。
『私と介護』(島田洋七・春やすこ・ねじめ正一・酒井章子
・大久保朱夏・新藤風・南田佐智恵・安藤桃子
・富田秀信・城戸真亜子・関口祐加・秋川リサ
・岡野雄一・岩佐まり・野中真理子・沖藤典子
・香山リカ)、新日本出版社、2016年12月)
しんぶん赤旗日曜版での連載をまとめた1冊。
いちばん苦しいのはやはり介護負担が1人だけに
加重にかぶさるときだと感じる。
『家事労働ハラスメント』(岩波新書)を著した竹信三恵子さんも、
「分配が加重になるとき、『家事』は、その担い手を
破壊しかねない」(はじめにより)と述べている。
身体的・体力的にもたいへんであるが、
精神面でも負担は大きい。
人間には関係性によっていくつもの顔(属性)を
もっているのであり、生活場面によってさまざまな自分に
変化することで、精神的バランスを保っている。
平野啓一郎さんは、『私とは何か-「個人」から「分人」へ』
(講談社現代新書)のなかで、
「いつも同じ自分に監禁されているというのは、
大きなストレスである」と指摘されている。
24時間、毎日、『介護者』『母親』という属性に
「監禁」される状況は、その人らしさの「枠」を
極端に制限することになり、大きなストレスとなる。
たまには「違う自分」でいられる時間や場をつくらないと、
人間は「やってられない」のである。