月刊誌『学習の友』のエッセイ2回目(12月号掲載)です。
第2回「時間尺度を相対化してみる」
私たちの宇宙、少なくともあと1400億年は「安泰」
です。
こんなニュースに、9月の終わりごろふれました。宇宙
の膨張のありようを調べている東京大学と国立天文台など
のチームが論文を発表して話題に。
人の一生はせいぜい100年ほどですから、時間のスパ
ンが違いすぎますし、「そんな先のことは関係なし!」と
も言えますけど。でも、はてしなく広大な宇宙のなかの地
球というちっぽけな星の人間という生き物が、宇宙のスケ
ールを測ることができるって、すごいと思いませんか。
ここで、ひねくれものの私は、こんなことも考えてしま
います。あと数十億年したら、太陽が膨張したり、もろも
ろの要因で地球自体が消滅。あるいは生き物が住めない惑
星になる。人間は、時間の尺度として、太陽のまわりを地
球が一周(公転)する周期性を認識して、それを「1年」
としました。もし人間が他の惑星に移り住んだとしたら、
「1年」の尺度も変わる(自転も惑星ごとに違うので「1
日」の尺度も変わります)。これはややこしい。1400
億年というのは、あくまで地球尺度です。
たとえば、おとなりの惑星、火星の「1年」は地球の
1.88年に相当するそう。簡単にいえば、約2年かけて太
陽のまわりを一周しているわけです。ちなみに火星の自転
は24時間40分ほどで、ほぼ地球と同じ。太陽を一周す
るあいだに686日(火星時間で)かかるそうです。この
ように、時間を測る尺度というのは相対的なものです。
さらに、人間の歴史のなかでも「時間の測り方」という
のは、時代とともに変わってきました。暦の作り方も変化
してきましたし、時計技術の未発達だった資本主義以前の
時代には「分」「秒」という単位はありませんでした。1
人ひとりが時計を身につけていなかった時代には「時間に
追われる」なんてこともあまりなかったのでしょう。うら
やましいです。
人間は時間を認識し、時間とともに生活を営んでいます
が、その時間の測り方は、時代や社会によって変化してき
ています。現代の私たちの「時間とのつきあい方」を相対
化してみると、あたりまえの常識から自由になって、おも
しろいかもしれません。