長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

心理的安全性について。メモ。

最近、心理的安全性に関する本を2冊読みました。
心理的安全性の重要性は認識して語ったりもしていましたが、
より具体的にイメージと整理ができそうな学びでした。

『恐れのない組織~「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』(エイミー・C・エドモンドソン、野津智子訳、英治出版、2021年2月)

『心理的安全性のつくりかた~「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える』(石井遼介、日本能率協会マネジメントセンター、2020年)

それぞれ自分用のメモとして残しておきます。

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●「恐れのない組織」メモ
「心理的安全性とは、大まかに言えば『みんなが気兼ねなく意見を述べることができ、自分らしくいられる文化』のことだ。より具体的に言うなら、職場に心理的安全性があれば皆、恥ずかしい思いをするんじゃないか、仕返しされるんじゃないかといった不安なしに、懸念や間違いを話すことができる。考えを率直に述べても、恥をかくことも無視されることも非難されることもないと確信している。わからないことがあれば質問できると承知しているし、たいてい同僚を信頼し尊敬している。職場環境によりかなりの心理的安全性がある場合、いいことが起こる。まず、ミスが迅速に報告され、すぐさま修正が行われる。グループや部署を越えた団結が可能になり、驚くようなイノベーションにつながるかもしれない斬新なアイデアが共有される。つまり、複雑かつ絶えず変化する環境で活動する組織において、心理的安全性は価値創造の源として絶対に欠かせないものなのである」(14~15P)

「個人および集団の能力を引き出したいと思うなら、リーダーは心理的に安全な企業風土——従業員が不安を覚えることなくアイデアを提供し、情報を共有し、ミスを報告する風土——をつくらなければならない。従業員が、自分の意見が職場で重視されていると実感するのが当たり前になったら、どんなことを達成できるようになるか想像してみよう。そのような組織を、私は『フィアレスな組織』と呼んでいる」(15P)

「心理的安全性は、個人と個人の間ではなく、職場集団のなかに存在する」(29P)

「心理的安全性は、グループ内の相性がよくて生まれるものでも、知らぬ間に生まれるものでもなかった。明らかなのは、心理的安全性の条件をうまくつくり出せるグループ・リーダーがいる一方で、つくり出せないリーダーがいることだった」(37P)

「心理的安全性とは、支援を求めたりミスを認めたりして対人関係のリスクを取っても、公式、非公式を問わず制裁を受けるような結果にならないと信じられることだ。心理的に安全な環境では、失敗しても支援を求めても、ほかの人たちが冷たい反応を示すことはない。それどころか、率直であることが許されているし期待されてもいるのだ」(40P)

「人は、言いたい内容が組織や顧客、あるいは自分自身にとって重要だと思われるときでさえ、黙っている場合が多いということである。こうしてみると、なんとも悲しい。沈黙をして得をする人は、誰一人いないのだ。チームは、有用な意見を知るチャンスを失う。考えを口にできない人たちは、しばしば後悔や苦痛を訴える。率直に言えばよかったと嘆く人もいる。もっと貢献できたら仕事へのやりがいと意味が増すのにと思う人もいる。同僚の意見を聞くことができなくなっている人たちは、自分が何を聞き損ねているか、気づいていないかもしれない。だが実は、問題が報告されないままになり、改善の機会を逃し、ときには、回避できたはずの悲劇的な失敗が起きてしまっているのだ」(56P)

「驚くべきことに、業務プロセスを改善する提案であっても、人々は言おうとしない」(57P)

「言うまでもないが、悪いニュースはヒエラルキーの上のほうには伝わらない。ただ、調査してわかったこととして、人々は職場で『転ばぬ先の杖』の姿勢を強く持ちすぎているために、悪いニュースだけでなく素晴らしいアイデアまでも言わないのが当たり前になってしまっている。……安全第一で行こうとする本能は強力だ」(60P)

「建設的な考えについて率直に話すのは、ミスのことを話すより簡単だと、あなたは思うかもしれない。では今、あなたは職場にいて、自分の考えは建設的だ、あるいは注目に値するという自信を95パーセント持っているとしよう。あなたは多分、何ら苦労することなく発言できるであろう。では、やはり職場にいるが、自分の考えに40パーセントしか自信がないと想像してみよう。多くの人は躊躇し、同僚が受け容れてくれるかどうか状況をうかがおうとするだろう。つまり、述べようと思う事柄の価値や正確さに大いに自信があるときには、さっと口をひらいて発言する可能性が高い。だが、考えや知識にあまり自信がないときは、尻込みしてしまうかもしれないのだ。……面白いのは、心理的に安全な職場では、人々が自信のなさを克服しやすくなることである。つまり、職場が心理的に安全なら、自信がなくても話せるようになるのだ」(67~68P)

「詐欺と隠蔽は、返答として『ノー』も『無理です』も認めないトップダウンの文化でおのずと生まれる副産物である。そして、そのような文化と、過去に練られた素晴らしい戦略は未来永劫続くのだという思い込みが組み合わさると、確実に失敗することになる」(104P)

「よい知らせしか歓迎しないリーダーは、不安を生み出し、そのせいで真実の声が聞こえなくなってしまう」(105P)

「言うべきことがあるのに言えないと感じているという心理的経験は、多くの従業員にとって他人事ではなく、組織階層で当たり前に起きている。……多くの人が、厳格なヒエラルキーが存在するときには発言できないと感じると述べている。一方、耳を傾け学ぶべき上層部の人々は、自分の存在が下位層の人々を押し黙らせてしまうことに、なかなか気づかずにいる」(110P)

「率直に意見を言うことが当たり前になるためには、心理的安全性(および発言を期待すること)が制度化・組織化される必要がある」(114P)

「沈黙の文化とは、懸念の表明より周囲との同調が大勢を占める文化」(125P)

「キーワードは、『耳を傾ける』である。……リーダーは、悪い知らせや早期の警告に対し、はねのけるのではなく耳を傾けるのだ」(132P)

「沈黙の文化は、すなわち危険な文化である」(133P)

「集まった人が心に思っていることを述べないかぎり、より賢く考えることはできないのだ」(139P)

「率直さを特徴とする職場は、創造性、学習、イノベーションに対し、計り知れない恩恵をもたらすことができる」(163P)

「『知らない』『わからない』と言うことにやぶさかでないリーダーは、従業員の心を驚くほど強く惹きつける」(163P)

「気さくで話しやすく、自分が完璧でなくミスをする人間であることを認識し、他者から積極的に意見を求めるリーダーは、組織に心理的安全性をつくり、高めていくことができる」(211P)

「意見を引き出す仕組みをつくる」(215P)

「発言する勇気に対して、ちょっとした感謝の言葉をかける必要がある」(217P)

「心理的安全性が基盤になって、学習する組織が築かれる」(229P)


●「心理的安全性のつくりかた」メモ
「心理的安全性とは、…組織やチーム全体の成果に向けた、率直な意見、素朴な質問、そして違和感の指摘が、いつでも、誰もが気兼ねなく言えることです」(3P)

「『結束したチーム』は実のところ、異論を唱えることが難しいチームともいえます。心理的に安全なチームはむしろ、チームメンバー大勢の意見が一致しているように見えるときでさえ、『それは違うと思います』と容易に反対意見が言えるチームのことなのです」(33P)

「健全な衝突(ヘルシー・コンフリクト)がチームを育てる」(43P)

「もしこれまで『衝突=悪』として、意見の対立を避けてきたのだとしたら、『健全な衝突かどうか』『健全なら促進し、不健全なら調整する』という方向へと、舵を切ってみることはチーム学習の重要なファーストステップです」(45P)

「みんなが、同じ方向を向いて『これだ!』となっている時、それでも反対意見があれば、それをシェアすることができるか? 『問題』や『リスク』に気づいた瞬間・感じた時に声をあげられるチームか? 知らないことや、わからないことがある時、それをフラットに尋ねられるか?」

「問題が起きた時、人を責めるのではなく、建設的に解決策を考える雰囲気があるか? チームリーダーやメンバーは、いつでも相談にのってくれるか? このチームは減点主義ではなく、加点主義か?」

「このチームでは、チャレンジ・挑戦することが損ではなく、得なことだと思えるか? 前例や実績がないものでも、取り入れることができるか? 多少非現実的でも、面白いアイデアを思いついたら、チームに共有してみよう・やってみようと思えるか?」

「役割に応じて、強みや個性を発揮することを歓迎されていると感じるか? 常識に囚われず、さまざまな視点やものの観方を持ち込むことが歓迎されるか? 目立つことも、このチームではリスクではないと思えるか?」

「組織には昨日やっていたことを、今日も続けようという慣性の力が働きます」(74P)

「心理的安全性とは、組織・チームの『関係性・カルチャー』(または風土・文化など)だという言い方もできる……。『関係性・カルチャー』は、実際には1つ1つの行動の集積、つまり『学習の産物』であり、チームとしての行動パターンであると捉え、その行動をどう変えていくかを論じることで、はじめて『何をしたらいいか』が分かるようになります。行動にフォーカスするという1歩目を踏み出すことで、やがては『関係性・カルチャー』を変えうるのです」(95P)