きのう(20日)の午前中は、
ソワニエ看護専門学校で教員のみなさん対象の
哲学学習2回目。
前回は唯物論やら弁証法やらを学んだので、
今回はまた別のテーマで。
合計3時間近い学習会でした。
最後に質疑応答や感想交流も。
「ソワニエの理念でかかげているものの中に
ヒューマニズムという言葉があり、いままで
それがしっくりきてなかったけど、今日の話を
聞いて、自分のなかでしっかりおちた」と
感想をいただいた方も。感謝。
教員のみなさん、おつかれさまでした!
以下、講義の概要です。
一。哲学とは何か(ふりかえり)
1。そもそもの意味は
◇世界観ともいう
*自然や社会や人間に対する、芯になるような「ものの見方・考え方」のこと
*世界観をより区分けすると、自然観、生命観、人間観、社会観、人生観など・・・。
*「ものの見方・考え方」=「ものさし」によって、行動や実践が変わってくる。
◇手とは、言葉とは、時間とは、働くとは、社会とは、文化とは、死とは・・・
*こういう「つきつめて考える」訓練をほとんどする機会がない
二。人間の文化について-社会的側面から
2。補論―10代・20代の文化的変遷について
◇家庭環境の経済的・社会的「格差」―家庭文化の影響
*ゆとりのあるなし―家庭環境のちがい
*家族関係の複雑さと困難―親の経済状態が影響
◇学校空間のなかにある「競争文化」「努力神話」
*ともに~する、という経験の少なさ。聴きあい、励ましあい、学びあい、
高めあい、認めあい、支えあい、助けあい…。
*ソワニエの文化を培うためには
◇文化の個別化・多様化
◇ネット文化の影響
*情報過多。安易さ。じっくり、つきつめて、討論して、ということの不足。
*SNS。つながり。ネット上では本音が言える。依存問題。
◇文化のギャップを否定せず、楽しみつつ、背景を見極め共感する姿勢で。
三。人間だからこその「問いかけ」(1)-人間らしさ
1。人間らしさを問う―ヒューマニズムの歴史的そもそも
「人間とは何か」「人間らしさとは何か」を問うてきたヒューマニストたち
それを奪うものとの不断のたたかい。
その時代、その時代の課題と格闘し、発展させられてきた思想と運動。
4。ヒューマニズムの積荷目録
◇高田求『君のヒューマニズム宣言』(学習の友社、1983年)から
*ヒューマニズムとは、特定の理論体系をいうのではない。「人間らしさ、人間
くささを大切に!」「人間らしく生きるために不可欠なものとは何か?」
①笑いを大切にするー「人間は笑うことのできる唯一の動物」(アリストテレス)
②寛容とユーモアの精神ー自分の意見を絶対化しない
③非人間的なものに対するたたかいー人間の名において、許せないものがある
④個性の尊重ー人間らしさ、人間くささは、色とりどりの形をとって表れる
⑤文化の尊重ー人間の諸能力は文化によって育てられる。より豊かな文化を!
⑥教養の尊重ー学問・知識を身につけることによって養われる、心の豊かさ
⑦平和を愛するということー人間を押しつぶす最大のものが戦争と暴力
四。人間だからこその「問いかけ」(2)-時間の使い方
五。人間だからこその「問いかけ」(3)-死の認識。生の自覚。
1。死の認識
◇「死んだら生き返らない」という認識。死への手持ち時間、という認識。
◇死は1度しかないから、自分自身で経験を語ることはできない(他者評価)
◇「死に方」「見送り方」について、人類は文化をつくってきた。死への距離の変遷。
◇誰でも死ぬ、という認識。死ぬまでは「生きている」という認識。
◇いつ死ぬかは、わからない。死は身近にある。生のはかなさ。認識の強弱。
【授業前の「読書日記」で過去に読んだ「死」「死に方」関連の本】
『病院で死ぬということ』(山崎章朗、主婦の友社、1990年)
『「死の医学」への日記』(柳田邦男、新潮文庫、1999年)
『自宅で迎える幸せな最期』(押川真喜子、文藝春秋、2005年)
『生と死の美術館』(立川昭二、岩波書店、2003年)
『看護のなかの死』(寺本松野、日本看護協会出版会、1985年)
『死ぬ瞬間ー死とその過程について』
(E・キューブラ・ロス、鈴木晶訳、中公文庫、2001年)
『デス・スタディー死別の悲しみとともに生きるとき』
(若林一美、日本看護協会出版会、1989年)
『死ぬのは、こわい?』(徳永進、理論社、2005年)
『「平穏死」のすすめー口から食べられなくなったらどうしますか』
(石飛幸三、講談社、2010年)
『「葬儀」という仕事』(小林和登、平凡社新書、2009年)
『お墓めぐりの旅』(新井満、朝日文庫、2010年)
『桜葬-桜の下で眠りたい』
(井上治代・NPO法人エンディングセンター、三省堂、2012年)
『おもかげ復元師』(笹原留似子、ポプラ社、2012年)
『死に逝くひとへの化粧―エンゼルメイク誕生物語』
(小林照子、太郎次郎エディタス、2013年2月)
『ぼくがいま、死について思うこと』(椎名誠、新潮社、2013年)
2。生の自覚
◇人生は1度しかない。命はひとつしかない。
◇「生きている」と「どう生きるか」の区別
―「生き方」が問題になるのは人間だけ
◇社会のなかで生きている
―「どう生きるのか」はさまざまな人間諸関係のなかから
*社会と無関係には「問い」が立てられない
*自分が生きている社会・時代への認識
さいごに:あらためて、哲学の姿勢の問題について
以上。