きのう(5日)の夜は、
第86期岡山労働学校「超入門! 資本論教室」の
第9講義でした。10名とちょい少なめでした。
風邪も流行っているようです。みなさんお気をつけください。
テーマは「資本の本源的蓄積」。
はじめて話をしたテーマで、
前回に続きまったく未熟ですが、
レジュメ(省略部分あり)をさらしておきます。
一。資本の本源的蓄積
1。いちばんはじめの資本家はどうやって資本家になれたのか?
◇お金をもっているだけでは資本家にはなれない
◇「雇ってください」という労働者の存在が不可欠
*たとえ小さくとも生産手段をもっていれば、雇われなくても生きていける
*封建制社会のなかの大多数は土地を所有する農民だった
*資本主義の生成期、労働者は勤労者のなかでまだまだ少数派だった
「人間の大群が突如としてかつ暴力的にその生活維持手段から
引き離され、鳥のような自由な(人間社会の拘束から放たれ、そ
のため法律の保護も奪われた)プロレタリアとして労働市場に投
げ出される瞬間である。農村の生産者である農民からの土地収
奪が、この全過程の基礎をなしている」
(『資本論』第24章、新書版1227P)
◇雇う人間を「時間を守る人にする」ことが不可欠
*ちゃんと定時に工場に来る人間、遅刻しない人間をつくる
*太陽とともに働くというのはダメ(農民スタイルの変更を強いる)
2。資本の本源的蓄積の歴史的過程(イギリスの場合)
◇教会領の略奪、国有地の詐欺的譲渡、共同地の盗奪
◇横暴、暴行によって封建的所有の近代的な私的所有の転化
◇15世紀末以来の被収奪者にたいする流血の立法&労賃引き下げの
ための諸法律
「自分たちの歩き慣れた生活の軌道から突然投げ出された人々も、
そう突然には新しい状態の規律に慣れることができなかった」
「15世紀末から全16世紀にわたり、西ヨーロッパ全体で浮浪罪に
たいする流血の立法が行なわれた。こんにちの労働者階級の祖先
は、なによりもまず彼らの余儀なくなれた浮浪人化と受救貧民化のた
めに罰せられた」 (『資本論』第24章、新書版1257P)
*「働かないもの」は罪である→鞭打ち、拘禁、烙印、拷問、奴隷、死刑・・・
*法定賃金よりも高く支払うことが罪に…払ったほうも受けとったほうも
*支配者の暴力と国家権力の力を総動員して「自由な労働者」を強制的に
生み出してきたのが、資本の本源的蓄積の歴史的過程。
*労働者の団結は1825年まで重罪
「資本主義的生産様式の『永遠の自然法則』に道を切り開き、労
働者と労働諸条件との分離過程を完成し、一方の極では社会的
な生産手段および生活手段を資本に転化させ、反対の極では人
民大衆を貧労働者に、近代史のこの芸術的作品である自由な『労
働貧民』に、転化させるには、“このような骨折りを必要とした”の
である。・・・資本は、頭から爪先まで、あらゆる毛穴から、血と汚物
とをしたたらせながらこの世に生まれてくる」
(『資本論』第24章、新書版1300~1301P)
3。資本の本源的蓄積の歴史的過程(日本の場合)
◇地租改正
◇低賃金・劣悪な女工たちによる「資本の拡大」
◇国家権力を総動員して、人民の犠牲のうえに大資本家の集団をつくりだす
*明治政府(松方大蔵卿)が大商人たちに、工場や鉱山をただ同様で
与えて、産業資本家たちをつくりだした。
*官営鉱山、各種工場、造船所・・・
*三菱は、明治17年に官営の長崎造船所を無料で貸し下げられ、3年後に
はそのまま払い下げをうけ、そのことが三菱重工業の基礎をつくっていく。
*三井の場合は、日本最良の炭鉱といわれ、明治政府の外貨獲得のドル箱
であった三池炭鉱を、その技術、その囚人労働者ともども手に入れたこと
が、御用商人から産業資本家への脱皮のきっかけとなっている。
*植民地を持たなかった日本の支配層は、計画的な収奪を国民の大多数
をしめていた農民・小市民にむけてやりとげようとした。
4。資本の集積と集中―「反抗」の増大も
◇ひとつの企業は、資本をどんどん増やしていく(資本の集積)
◇強い資本が、他の多くの資本を淘汰・合併していく(資本の集中)
◇生産のあり方はますます大規模に高度化され、社会化される
*協業、科学の技術的応用、土地の計画的利用、労働手段の共同化
*世界市場網への世界各国民の組み入れ
*しかし、このことは次の社会の物質的準備ともなる
【補論1―市場経済の効用について】
*「売れる」ために「安く」「新しく」「いいもの」をつくることを強制される
・多様な文化の発展、商品開発
*しかし、弱肉強食的な競争性をもっている
*なんでも商品になってしまうことの功罪。スポーツの商業主義化etc
【補論2―人権と社会保障の発展】
*自由権の拡大―居住・職業選択の自由、財産権
*社会権の確立―人間的生存権、両性の平等、教育権、勤労権、団結権
*資本主義の生み出す弊害のセーフティネットとして
*労働者階級がたたかい勝ち取ってきた社会権・人権の到達点
◇生産の目的はあくまで「もうけ」のため
*富の蓄積は貧困の蓄積を増大させる
「一方の極における富の蓄積は、同時に、その対極における、す
なわち自分自身の生産物を資本として生産する階級の側におけ
る、貧困、労働苦、奴隷状態、無知、野蛮化、および道徳的堕落
の蓄積である」 (『資本論』第23章、675P)
*強い「反作用」を生み出す
「貧困、抑圧、隷属、堕落、搾取の総量は増大するが、しかしまた、
絶えず膨張するところの、資本主義的生産過程そのものの機構
によって訓練され結合され組織される労働者階級の反抗もまた
増大する」 (『資本論』第24章、1306P)
*労働者は、労働組合に団結し、数の力で資本と対決する。必然的法則。
*その労働者の団結が広がり、たたかいが大きくなればなるほど、資本を
規制する力が強くなっていく。資本をコントロールする力を人民がもつ
こと。政治権力の奪取と労働運動などのたたかいの発展。
二。現代の「人間の疎外」について
◇生産物が自分(たち)と対立するという疎外
*資本の巨大化をうながすのも労働の結果。グローバル化の進展。
*たばこ、原発、ギャンブル、不必要なものでも売る・・・
*交通事故で毎年5000人も死んでいるのに車社会の見直しはされず
*通信技術の発達、IT技術の発達・・・。モノにふりまわされる。
◇人間らしい生き方からの疎外
*賃金を得る、ということが目的化してしまう傾向
◇自由な時間からの疎外
*長時間労働(搾取強化)による自由時間の減少(発達の場の減少)
*24時間型社会(資本の行動原理)による生理的錯乱
◇自発的労働からの疎外
*指示命令下のもとでの従属的労働となりやすい
◇協同労働からの疎外
*自己責任、成果主義、競争の仕組み。
助けあい、教えあい、支えあいからの疎外。
◇職住分離による地域からの疎外
*働く場所と住む場所がこんなに離れた時代はない。
コミュニティ形成からの疎外。
*転勤することの意味
◇人間観・ものの見方の疎外
*部分、能力、成果、容姿などで、人間を評価する(資本の人間観)
*子育て、教育、就職、職場のなかでも、この人間観が入り込んでくる
*基本的人権は、これらの価値の下位におかれる
◇人間社会全体の共同性の疎外
*対立を不可避・本質とする資本と賃労働の関係
◇自然からの疎外(資本主義は自然を壊す。温暖化問題)
以上。
感想文を少し。
◆「遅刻をしない、時間を守る」ということが資本主義
によって作られたということにショックをおぼえました。
「働かないもの」は罪という考え方が人を処刑にした
ということが哀しいことだと思いました。
◆現代の「人間の疎外」について、考えさせられました。
職場の状況が、そのまま当てはまる。仕事量、多すぎ
ないか…と思う。
◆1つの企業は巨大な資本蓄積を行い(資本の集積)、
他の多くの資本家を倒し合併する(資本の集中)って
いうところの説明がふにおちた。
◆イギリスの資本の本源的蓄積では、自分だったら
鞭打ちや拷問を受けただろう。この時代の労働は
どこまでガマンをしていたのだろう。蓄積の一般的
法則の図を見たら、富の蓄積が増大していくと貧困も
増大していく。これはまさに今の時代。
◆資本主義は政治と密接な関係を持って発展した
ということが分かった。権力のあるものに政治を
まかせないことが大事だと思った(政権につくと権力を
今のようなきびしい働きではますます余裕がなくなって
ひどくなる気がする。