長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

連載「チラシ・ニュースづくりの基礎知識」(2)

 

第2回「チラシのメカニズム」

 

【「受け手」をつねにイメージする】

 

 チラシは、メッセージを伝えたい「送り手」が、「受け手」に

たいして発信するものです。このメッセージを「伝えたい思い」

だけがひとり歩きし、自分の「書きたいこと」が先行して、

つい詰め込みすぎたり、自分の問題意識が前に出すぎる

場合がよくあります。

 

 しかし、「送り手」(チラシの作り手)がまず配慮しなければ

ならないのは、「受け手」側のことです。チラシを受けとった人の

ことを具体的にイメージしながらつくることです。

 「受け手」といっても、いろいろな人がいます。たとえば私が

活動している学習運動の場合でも、学習会などのチラシを

見てもらう対象は、活動家の人もいれば、そうでない人もいます。

老若男女、さまざまな人、さまざまな立場、さまざまな問題意識を

もった人が「このチラシを受け取ったとき、なにを感じてくれる

だろうか」「関心をもってくれるだろうか」「わからない言葉はない

だろうか」ということを具体的に考え、イメージし、その配慮を

チラシづくりに反映させます。

 

 前回書いたように、「受け手」は、こちらの思いなどほとんど

意に介さず、自分の問題関心を中心にものを見聞きしています。

また、忙しい人ほど、チラシをじっくり読む時間もありません。

そんな人に、どうメッセージを伝えるのか。しっかり熟慮したい

ものです。

 

 運動団体のチラシによくあることとして、運動体のなかでは

「常識」になっている言葉、たとえば「構造改革」「憲法改悪反対」

「統一戦線」などのようなものをチラシでつかっている場合が

ありますが、好ましくありません。「労組」「ベア」「全労連」など、

言葉を説明ぬきに略してしまうのも、配慮を欠いていると思い

ます。

私たちの運動は、つねに多くの人と手をつなぐこと、それを

広げることが大事な課題のひとつです。運動のなかにいる

人だけにしかわからない、通じない言葉をチラシでは使っては

いけません。

 労働学校のチラシなども、ときどき街頭で配ることがあります。

「ほんとうに労働学校の『ろ』の字も知らない人が、このチラシを

みて、どう思うか」ということをイメージする。そうするだけで、

チラシづくりには、言葉選びやレイアウトなど、だいぶん工夫が

生まれてくると思います。

 

【文字と絵を、レイアウトしていく】

 

 そうした「受け手側」へのイメージをしっかり持ちながら、実際に

チラシづくりをしていくわけですが、チラシの構成材料は大別する

と2つしかありません。文字と絵(イラストや写真)です。

 

 まず、文字(文章)です。文字の位置づけも、並列ではありま

せん。「キャッチコピー」「見出し」「情報」「解説」など、区別され

ますし、字体や大きさも、大事なデザイン要素です。

 絵(イラストや写真)は、たいていのチラシの場合は必要です。

次回の「読む流れ」に詳しくは書きますが、絵や写真は、まず

人間の関心や注目をひきつける「アイキャッチャー」の役割を

果たしてくれます。文字だけのチラシは、「読んでもらう」という

ところで、まず拒否される場合が多いです。

 

 チラシのメカニズムは、「送り手」のメッセージ(何が、どこで、

いつ、どのように、対象は、メリットは)を、文字と絵を組み合わ

せたレイアウト(構成や配色)として表現し、「受け手」の反応

(印象、理解、好感、意欲と行動など)を呼び起こすものです。

文字と絵と、さらにあともうひとつ付け加えるならば、「空白」

です。これも「受け手」の「読みやすさ」や「どこに注目してほし

いか」への配慮です。空白を上手に組み込む、空白を生かす

ことも、チラシデザインの技術なのです。さまざまな商業チラシ

などを見ながら、プロの技をぜひ真似てほしいと思います。

 

 チラシづくりは、「受け手」の反応を具体的にイメージしつつ、

伝えたいメッセージを全体のチラシデザインに込めていく作業

です。難しいですが、そこに、おもしろさもあるのです。

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(イラスト図:『チラシデザイン』(南雲治嘉、グラフィック社、2003年)より)