『学習の友』4月号に書いた
ミニ文章です。
【Q&Aでつかむ労働組合】
「団結って普段あまり使わない言葉ですが、
なんで労働組合ではよく使うのですか」
団結だ、たたかいだ、ダンコー(団体交渉)だ。
労働組合の「言葉」には、日常会話にあまり登場
しない、独特の響きがあります。言葉は世界を
つくりますから、「ちょっと違和感」をもつ人がいて
も、当然なのかもしれません。
言葉を言い換えても構わないとは思います。
「団結する」を「ひとつになる」「手をつなぎあう」
としても、間違いではありません。でも、「団結」
という言葉をやっぱり大事にしたい、とも思うの
です。
たとえ「古くさい」と言われても、「団結する」と
いう言葉がなくならないのは、その言葉を使わざ
るをえない人たちがいるからです。会社の経営者
は、「団結してがんばろう」という言葉を職員に
対して命令的に使うことはあっても、「自分の生き
方」として使うことはありません。
団結する、という言葉を、自分の生き方として
使うのが、「労働者」と呼ばれる人たちです。なぜ
なら、労働者にとっては、団結することが、自分や
仲間の生活、自分たちの職場の働き方を改善して
いく、ほとんど唯一の方法だからです。
労働者の特徴のひとつは、「雇われて働く」という
ことです。そのさい、どのような雇われ方(仕事内
容や労働条件)になるのかは、使用者との労働契
約によって決まります。形式的には、この労働契
約は「対等な立場」という建前のもとに結ばれま
すが、じっさいには、大部分の人が「雇う人(使用
者)」の言われるがままの「雇われ方」で働かざる
をえません。
なぜなら、労働者は、「雇われないと賃金が手
に入らず、生きていけない」という客観的立場にお
かれているからです。「そんな雇われ方はゴメンで
す」と断れる立場にない人が多いのです。使用者
は労働者のそうした立場の足元をみます。「あなた
の代わりはたくさんいるんだよ」「この条件がイヤな
らどうぞおやめください」と。
つまり雇う側の立場は強く、雇われる側の立場は
弱いのです。労働者は、ひとりでは弱い。バラバラ
にされると弱い。対等な交渉はまず無理です。これ
は、資本主義社会であるならば、どんな国、地域で
あろうと、労働者に貫かれる立場性です。
だから労働者は世界中で、「バラバラにならない
よう」「みんなで交渉する」ための舞台としての労働
組合をつくりました。そして、「労働組合を組織しか
つこれに加入する権利」(世界人権宣言)、「勤労
者の団結する権利及び団体交渉その他の団体
行動をする権利」(日本国憲法)というように、団
結することを、「人権」として認めさせてきたのです。
もちろん、「団結だ!」 と叫べば、職場の仲間が
ひとつになるかといえば、そうではありません。
団結をつくり出すためには、日々のねばり強い努
力が必要であり苦労多き営みです。かなめは、
「要求」です。一人ひとりの苦難に心を寄せ、それ
を形にし、「みんなの問題」として練りあげられるか
どうか、です。ここが一番難しく、でもやりがいのあ
るところです。
そして要求をかかげ団結することの中に、「たく
さんの人間らしさの発現」があります。だから、「団
結」という言葉は、いまもなお、世界中の労働者に
よって使われ、生き方となっているのです。