長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

岡山民医連SW交流集会にて「人権から平和を考える」

きのう(9日)の午前中は、
岡山民医連ソーシャルワーカー交流集会にて講師仕事。
テーマは「人権から平和を考える」。30数名参加。
1時間半ほどしゃべりまくってしまいました。

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あたりまえの人権感覚(人間の尊重、個人の尊重)って、
とても“もろい”ということを、戦争の歴史のなかから考えてみました。
あと安保法、自民党改憲草案なども人権の視点で。
戦争に向かう国家は人権を置き去りにします。

以下、講義前半の概要です。
(パワーポイントでの講義でしたのでイマイチ伝わりませんが)


一。あたりまえの人権感覚(個人の尊重)は、もろい。
 
1。ポーランド。アウシュヴィッツを訪れて(2015年2月)
  ◇人類最大の負の遺産である「絶滅収容所」跡
   (現在ポーランドの国立博物館に)
   *第2次世界大戦中(1939年~1945年)に、ナチスドイツに
    よってヨーロッパ全土から130万人がこの収容所に送り込ま
    れ、110万人が殺戮されたと言われている。
   *ユダヤ人、ポーランド人政治犯、ソ連軍捕虜、
    ロマ民族(ジプシー)・・・。
   *ナチスドイツは、ユダヤ人こそがドイツの苦しみの原因で
    あるとし、憎悪をかきたて続けた。「ユダヤ人絶滅計画」
    をたて、1939年時点でヨーロッパにいた830万のユダヤ人
    のうち、約600万人を殺害したと言われている。
  ◇「いったいなぜこんなことが起こったのか(できたのか・・・)」という問い

 2。戦場は人間から人間らしさを奪いつくす。本を紹介しながらその一部分を。
  ◇『証言 沖縄戦の日本兵―60年の沈黙を超えて』
   (國森康弘、岩波書店、2008年)
  ◇『ぺリリュー・沖縄戦記』
   (ユージン・B・スレッジ、講談社学術文庫、2008年)
    *米国テレビドラマ(2010年)
     『ザ・パシフィック』(The Pacific)も。DVD6枚。
  ◇『冬の兵士―イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実』
   (反戦イラク帰還兵の会・アーロングランツ、岩波書店、2009年)
  ◇『戦争における「人殺し」の心理学』
   (デーヴ・グロスマン、ちくま学芸文庫、2004年)
  ◇『総員玉砕せよ!』(水木しげる、講談社文庫、1995年)

 3。「国家のため(お国のため)」というロジック
           ―暮らし・内心の自由・民主主義などを抑圧
  ◇日本の戦中。国防婦人会の活動。「国防は台所から」。
   「正しく純(きよ)く健やかに 我が子を育て国のため
    献(ささ)ぐる母の誠実(まこと)こそ 世にも尊き使命(つとめ)なれ」
  ◇靖国神社の果たした役割
    ―悲しみの吸収。内心の自由までもが国家によって奪われる。
   *「死んで靖国で会おう」「九段で会おう」が合言葉に。
    「天皇陛下のため」「お国のため」に戦死すれば、「英霊」
    として靖国神社に祀られる。それが、最大の光栄とされた。
   *「戦時中は、自分の肉親が理不尽に途中で生を断絶させられ
    た場合、妻であっても母であっても、あるいは兄弟であって
    も、公的な言説空間だけでなく、私的な言説空間でも、悲し
    みや怒りを露(あらわ)にすることを奪われていた。遺族は、
    感情を抑圧させられていたわけです。『名誉の戦死』『誉(ほ
    まれ)の戦死』は悲しみや怒りを回収する言説でした。あるい
    は喜びに転化させるということだった」
    (田中伸尚『現代思想』2005年8月号
             「討議・<靖国>で問われているもの」)

 4。人権感覚を支えるもの
    ―理性(科学的思考)、想像力、倫理、自尊、ゆとり、民主的議論・・・
  ◇4月4日毎日新聞報道。
    「在宅介護2割が『殺意』」「7割『限界感じた』」
  ◇もし日本でテロが起きたら、国民世論はどうなるか・・・


二。平和が崩れるとき、同時に人権は抑圧される―安倍政権の向かう先
 
1。日本国憲法前文は何を語っているか
      (段落はひとつの思想をあらわしている)

   「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配
   する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸
   国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持し
   ようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧
   迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会
   において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世
   界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに
   生存する権利を有することを確認する」

 2。憲法9条は何を政府に命じているか
  ◇国際紛争を解決する手段としての武力行使、戦力の保持、交戦権

   「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、
   国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際
   紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
    ②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを
   保持しない。国の交戦権は、これを認めない」

 3。安全保障関連法によって、何がこれまでと変わったのか?
                       ―なぜ違憲なのか
  ①歴代自民党政府が「憲法上認められない」としてきた集団的
   自衛権行使が可能に。
  ②地理的制約をなくした
   (日米安保条約でも説明できない地点に踏み込んだ)
  ③自衛隊の活動場所や活動内容も、憲法上の制約を逸脱
   (戦地派兵&武器使用)

 4。まっさきに想定される「現実のリスク」は何か
  ◇集団的自衛権行使の可能性は低い
   (米軍が他国から攻撃されることが想定しにくい)
  ◇南スーダンでの自衛隊の「武器使用」
   →自衛隊員がまっさきに当事者になる可能性が高い
  ◇シリアのISなどへ米軍による攻撃の「後方支援」(=武力行使)
   →「敵」を生む。日本でテロが起きる可能性がより増す。
    誰でも当事者になる。

 5。戦争へ向かう国家は、国民の命や生活をかえりみない。置き去りにする。
  ◇2016年度の防衛予算は5,054,100,000,000円。史上最高。
   *日本の軍需産業の勃興。政府・財界が強化しようとている、
    武器の開発、生産、輸出。日本経団連は昨年9月、武器な
    ど防衛装備品の輸出を「国家戦略として推進すべき」とす
    る提言を公表。昨年10月には防衛装備庁が1,800人体制
    で発足。
   *世界の紛争地では先進国の輸出した武器で人びとが殺しあっ
    ている。武器はもうかる。戦争が起きればもうかる。戦争
    でもうけようとしている人間がいる。死の商人。
  ◇貧困と格差の深刻化。社会保障の削減と改悪。保育園に入れない。
   国民の年金を株に投入。TPPは大企業の利益優先。消費税増税。
   法人税減税。労働者派遣法改悪で「一生派遣」の労働者増。原発
   再稼動の無責任。沖縄の民意を無視し新基地建設強行。
  ◇つまり国民全員が「戦争に向かう国家」のなかですでに当事者に。
   個人の尊厳を蹂躙。
  ◇憲法を踏みにじる政治は、死者をふみにじり、生活をふみにじり、
   歴史を忘却する。


三。自民党の改憲案(2015年)は基本的人権をどう扱っているか(省略)

四。人権感覚は「育て」「鍛え」「つねに磨きつづける」もの(省略)