きのう(9日)の午前中は、
岡山民医連ソーシャルワーカー交流集会にて講師仕事。
テーマは「人権から平和を考える」。30数名参加。
1時間半ほどしゃべりまくってしまいました。
あたりまえの人権感覚(人間の尊重、個人の尊重)って、
とても“もろい”ということを、戦争の歴史のなかから考えてみました。
あと安保法、自民党改憲草案なども人権の視点で。
戦争に向かう国家は人権を置き去りにします。
以下、講義前半の概要です。
(パワーポイントでの講義でしたのでイマイチ伝わりませんが)
一。あたりまえの人権感覚(個人の尊重)は、もろい。
1。ポーランド。アウシュヴィッツを訪れて(2015年2月)
◇人類最大の負の遺産である「絶滅収容所」跡
(現在ポーランドの国立博物館に)
*第2次世界大戦中(1939年~1945年)に、ナチスドイツに
よってヨーロッパ全土から130万人がこの収容所に送り込ま
れ、110万人が殺戮されたと言われている。
*ユダヤ人、ポーランド人政治犯、ソ連軍捕虜、
ロマ民族(ジプシー)・・・。
*ナチスドイツは、ユダヤ人こそがドイツの苦しみの原因で
あるとし、憎悪をかきたて続けた。「ユダヤ人絶滅計画」
をたて、1939年時点でヨーロッパにいた830万のユダヤ人
のうち、約600万人を殺害したと言われている。
◇「いったいなぜこんなことが起こったのか(できたのか・・・)」という問い
2。戦場は人間から人間らしさを奪いつくす。本を紹介しながらその一部分を。
◇『証言 沖縄戦の日本兵―60年の沈黙を超えて』
(國森康弘、岩波書店、2008年)
◇『ぺリリュー・沖縄戦記』
(ユージン・B・スレッジ、講談社学術文庫、2008年)
*米国テレビドラマ(2010年)
『ザ・パシフィック』(The Pacific)も。DVD6枚。
◇『冬の兵士―イラク・アフガン帰還米兵が語る戦場の真実』
(反戦イラク帰還兵の会・アーロングランツ、岩波書店、2009年)
◇『戦争における「人殺し」の心理学』
(デーヴ・グロスマン、ちくま学芸文庫、2004年)
◇『総員玉砕せよ!』(水木しげる、講談社文庫、1995年)
3。「国家のため(お国のため)」というロジック
―暮らし・内心の自由・民主主義などを抑圧
◇日本の戦中。国防婦人会の活動。「国防は台所から」。
「正しく純(きよ)く健やかに 我が子を育て国のため
献(ささ)ぐる母の誠実(まこと)こそ 世にも尊き使命(つとめ)なれ」
◇靖国神社の果たした役割
―悲しみの吸収。内心の自由までもが国家によって奪われる。
*「死んで靖国で会おう」「九段で会おう」が合言葉に。
「天皇陛下のため」「お国のため」に戦死すれば、「英霊」
として靖国神社に祀られる。それが、最大の光栄とされた。
*「戦時中は、自分の肉親が理不尽に途中で生を断絶させられ
た場合、妻であっても母であっても、あるいは兄弟であって
も、公的な言説空間だけでなく、私的な言説空間でも、悲し
みや怒りを露(あらわ)にすることを奪われていた。遺族は、
感情を抑圧させられていたわけです。『名誉の戦死』『誉(ほ
まれ)の戦死』は悲しみや怒りを回収する言説でした。あるい
は喜びに転化させるということだった」
(田中伸尚『現代思想』2005年8月号
「討議・<靖国>で問われているもの」)
4。人権感覚を支えるもの
―理性(科学的思考)、想像力、倫理、自尊、ゆとり、民主的議論・・・
◇4月4日毎日新聞報道。
「在宅介護2割が『殺意』」「7割『限界感じた』」
◇もし日本でテロが起きたら、国民世論はどうなるか・・・
二。平和が崩れるとき、同時に人権は抑圧される―安倍政権の向かう先
1。日本国憲法前文は何を語っているか
(段落はひとつの思想をあらわしている)
「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配
する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸
国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持し
ようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧
迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会
において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世
界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに
生存する権利を有することを確認する」
2。憲法9条は何を政府に命じているか
◇国際紛争を解決する手段としての武力行使、戦力の保持、交戦権
「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、
国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際
紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを
保持しない。国の交戦権は、これを認めない」
3。安全保障関連法によって、何がこれまでと変わったのか?
―なぜ違憲なのか
①歴代自民党政府が「憲法上認められない」としてきた集団的
自衛権行使が可能に。
②地理的制約をなくした
(日米安保条約でも説明できない地点に踏み込んだ)
③自衛隊の活動場所や活動内容も、憲法上の制約を逸脱
(戦地派兵&武器使用)
4。まっさきに想定される「現実のリスク」は何か
◇集団的自衛権行使の可能性は低い
(米軍が他国から攻撃されることが想定しにくい)
◇南スーダンでの自衛隊の「武器使用」
→自衛隊員がまっさきに当事者になる可能性が高い
◇シリアのISなどへ米軍による攻撃の「後方支援」(=武力行使)
→「敵」を生む。日本でテロが起きる可能性がより増す。
誰でも当事者になる。
5。戦争へ向かう国家は、国民の命や生活をかえりみない。置き去りにする。
◇2016年度の防衛予算は5,054,100,000,000円。史上最高。
*日本の軍需産業の勃興。政府・財界が強化しようとている、
武器の開発、生産、輸出。日本経団連は昨年9月、武器な
ど防衛装備品の輸出を「国家戦略として推進すべき」とす
る提言を公表。昨年10月には防衛装備庁が1,800人体制
で発足。
*世界の紛争地では先進国の輸出した武器で人びとが殺しあっ
ている。武器はもうかる。戦争が起きればもうかる。戦争
でもうけようとしている人間がいる。死の商人。
◇貧困と格差の深刻化。社会保障の削減と改悪。保育園に入れない。
国民の年金を株に投入。TPPは大企業の利益優先。消費税増税。
法人税減税。労働者派遣法改悪で「一生派遣」の労働者増。原発
再稼動の無責任。沖縄の民意を無視し新基地建設強行。
◇つまり国民全員が「戦争に向かう国家」のなかですでに当事者に。
個人の尊厳を蹂躙。
◇憲法を踏みにじる政治は、死者をふみにじり、生活をふみにじり、
歴史を忘却する。
三。自民党の改憲案(2015年)は基本的人権をどう扱っているか(省略)
四。人権感覚は「育て」「鍛え」「つねに磨きつづける」もの(省略)