きのう(24日)は午後、
倉敷医療生協・真備歯科診療所の職員学習会で
「日米地位協定について」の講師。60分ほど話しました。
地位協定とは米軍が戦後の占領期と同じように
日本に基地を置き、自由に訓練し、異常な特権を
担保した取り決めです。
驚愕の内容を知ってからが大事です。
岡山では他人事になりがち。いかに自分事として考えられるか。
以下、内容の要約版です。
はじめに:日米地位協定とは、端的に本質をいえば、アメリカが
戦後の占領期と同じように日本に軍隊を配備し続けるための取り
決めです。具体的には在日米軍の法的地位についての取り決めで
すが、米軍に対して異常というべき特権があたえられています。
屈辱的・従属的内容が戦後70年以上たつ今も事実上続いていま
す。しかしほとんどの国民はその内容を知りません。
一。日米地位協定は28条の条文から成り立っています(省略)
二。日米地位協定の現実的あらわれ
1。沖縄国際大学はなぜ「占拠」されたのか
◇2004年8月13日午後2時17分
*普天間基地所属の米軍CH53D大型ヘリが基地に隣接する
沖縄国際大学(宜野湾市)に墜落、爆発炎上した。多数の部
品が飛散し、近くの民家や建物に被害も出たが、死傷者は奇
跡的にいなかった。
◇瞬時に「占拠」された事故現場。なぜこんなことが許されるのか?
◇米軍の横暴勝手を許した根拠は、「事実上の密約」にあった。
2。国内法の適用除外―自由に訓練、税金免除など
◇米軍機は日本国内をどこでも、自由に飛行訓練ができる
*米軍は事実上、日本国内のどこにでも基地を置けるし、どこで
訓練をしてもいい。
*米軍機には日本の国内法もアメリカの国内法も適用されない。
したがってアメリカ本国内ではとてもできないような危険な
低空飛行訓練も日本では行うことができる。低空飛行訓練の
ルートもいちおう「このあたりを飛ぶ」ということは判明し
ているが、いつ飛ぶかの事前通告もなし。訓練ルートに指定
されていない地域の上空も、ある基地から別の基地への移動
(「基地間移動」)であるという口実で、事実上、どの場所
でも飛ぶことができる。日本国内全域自由。
*こうした米軍機特権の根拠として、日米地位協定にもとづく
特例法があり、航空法の規定の適用除外となっているから。
◇首都圏の空も米軍に「占拠」されている異常な国(横田ラプコン)
*1都8県の上空をおおう巨大な米軍の管理空域があるのを
ご存知ですか? 首都東京にある米軍横田基地。厚木・座間・
横須賀基地は神奈川。首都圏にこれほどの外国軍基地を置き、
空域まで支配されているのは、世界でもおそらく日本だけ。
*沖縄の上空はまるごと米軍優先の支配空域になっている。那覇
空港の管制空域は半径5キロ、高度600メートルと、笑っちゃ
うほど小さい。この嘉手納ラプコンは2010年3月末に日本へ
「返還」されたことになっているが、形だけのもので、依然
として米軍機優先の管理体制が継続しているといわれている。
◇税免除が多方面で(地位協定13条)
*米軍は国税の法人税、所得税、地方税の不動産取得税、都市
計画税などが免除されている。高速道路の支払いも免除。
NHKの受信料も払っていない。
*Yナンバー(米国車両の意味)の自動車税も5分の1。毎年約
10億円ぐらい沖縄県に入るはずの自動車税が2億円しか入っ
ていない。特権により免除。
3。出入国自由の特権(地位協定9条)
◇そもそも日本政府は、自国に米軍関係者がどれだけいるか把握していない
*米軍関係者は、日本の米軍基地に入るさいに、旅券(パスポート)
や査証(ビザ)に関する法令から適用を除外されている。つまり
手続きを行わずに日本の米軍基地には入れるし出れる。米軍基地
からフェンスの外(つまり日本)に出るときにも出入国審査はな
いので、日本国内にどういうアメリカ人がいるかについて、日本
政府は正確にはつかめない。米軍関係者にとって「日本の国境」
は存在しない。
4。米軍基地の出入りを制限する基地の排他的管理権(地位協定3条)
◇「合衆国は、基地内において、それらの設定、運営、警護および
管理のため必要なすべての措置をとることができる」(3条1項)
◇日本側の米軍基地への出入りを制限できる。日本国内にありながら
日本の国内法が適用されない事実上のアメリカ領土となっている。
米軍管理の空域・海域も同様。
◇事件・事故時にも、自治体・警察による基地内の調査を拒否できる。
5。裁判における優先権(地位協定17条)
◇被害者が日本人の場合、当然、日本の司法で裁くことが必要だが
◇日米地位協定17条によって、米兵が公務中の場合、どんな罪を
犯しても日本側が裁くことができない。
◇公務中でなくても、日本の警察に逮捕される前に基地に逃げ込ん
でしまえば、逮捕することは非常に難しくなる。起訴されるまで
身柄を引き渡さなくてもよい。
◇さらに、基地に逃げ込む前に逮捕できたとしても、「日本にとっ
ていちじるしく重要と考えられる事件以外については、裁判権は
行使しない」という密約が存在する。
*参考文献『日米密約―裁かれない米兵犯罪』
(布施祐仁、岩波書店、2010年)
6。基地返還時の原状回復義務免除(地位協定4条)
◇米軍基地内は環境面の規制がない。無法地帯。
◇米軍に原状回復義務なし
7。爆音訴訟賠償金も未払い―日本の税金で事実上全額払っている
◇嘉手納、横田、厚木などの爆音訴訟で求められた賠償金を1円も
払っていない
8。土地の借地料も日本政府が肩代わり
◇本土にある米軍基地は、もともと国有地だったところがほとんど
◇沖縄では米軍基地の6割が県や市町村・民間人の所有だったところ
*そうしたところの借地料(毎年)は、日本政府が負担している。
9。思いやり予算について
◇地位協定上の根拠はない。だから「思いやり」という訳のわから
ないネームが。
*駐留米軍の兵舎や米軍機の格納庫、滑走路のかさ上げ費用、
兵士の食堂、トレーニングジム、娯楽施設、体育館、病院、
基地内の米軍住宅、軍人・軍属の家族向けの小中高校、政教
分離にひっかかりそうな教会までもが、日本国民の税金を
投じて建設され、提供されている。
*さらに、米軍が基地内で使う電気料金、ガス料金、水道料金
なども日本国民の税金で負担。
*1978年に62億円で始まったが、現在は毎年2000億円近く。
◇日本ほど米軍に気前のいい国はない。米軍が日本にいたがる理由の
ひとつに。
三。なぜここまで対米従属?―日米安保条約と日米地位協定の歴史(省略)
四。日本の安全保障について考える(省略)