『学び合う場のつくり方~本当の学びへのファシリテーション』
(中野民夫、岩波書店、2017年)を読み終える。
ファシリテーション本6冊目。
1章の、大学での「参加型授業」の苦労や工夫が参考になった。
これだけの細かい配慮や気配りが、
学びの場をつくる側には求められるんだなと納得。
実践に活かしたい。
以下、自分用のメモ。
「少人数に分けて適切な問いさえあれば、対話は
必ず盛り上がるものだと思っていた。ところがそ
の教室では、男子だけのあるグループが、ずーっ
と『黙っている』のだ。視線をお互いにそらしな
がら、無表情でじっと沈黙している。・・・『男子
のコミュニケーション苦手度はかなりのものだ』
と痛感する貴重な体験になった。話しやすい環境
と手順をうまくデザインしないと、簡単には生き
生きとした対話のある授業は生まれない」(17P)
「教員も学生もこんなものだと諦めきている大教
室の授業を、学生の参加や対話を重視したワーク
ショップ型にして、誰も眠らず、皆が生き生きと
目を輝かせるような時間にできないだろうか」(18P)
「そもそも、このインターネットが発展した時代
に、知識の一方的名伝達だけなら、ネットで動画
配信すれば済む。実際、世界中の著名な教授の授
業が公開される時代になってきている。わざわざ
遠くから大勢の学生や教職員が立派なキャンパス
に集まっているのに、お互いにほとんど話すこと
もなく帰っていくのはなんとももったいない。せ
っかく人が集まるのなら、もっと生身のコミュニ
ケーションをとり、対話し学び合うことはできな
いのだろうか」(18P)
「『いてもいなくても関係ない』ではなく、『1
人ひとりが大切でかけがえのない存在』として
扱われる場はできないのか」(21P)
「一般に、私たちは与えられた教室や部屋に合わ
せることに慣れていて、自分たちが今必要な空間
をゼロからデザインすることには慣れていない。
ファシリテーションの基本的なスキルでもあるが、
人がどのような形で集うのかをよく考えてゼロか
ら場づくりをすることはとても重要だ。まずは座
り方から工夫しよう」(24P)
「誰とも話さないで帰るなんてもったいない。教
師からの話を聞くだけでなく、学生同士の横のつ
ながりを大切にして、お互いに話し合い、学び合
う場を創りたい。そうでないと、日本の教育の課
題である『学習意欲』や『主体性』も育まれない。
こう考えて、学生を小グループでの話し合いへと
丁寧に誘う」(24P)
「自分から少しでも話すと、その場への参加意識
が高まる。また、それぞれの人の話を聞くことは、
内容だけでなく声や表情などから多くの情報が得
られ、お互いに率直に話しやすい安心安全な場に
近づいていく」(25P)
「インタラクティブ(双方向的)な『横の対話』
を促すのは、眠気対策だけでなく、参加型教育の
核心でもある。そもそも教室から学生への『縦の
一方通行』という旧来の教育が問われている。た
だ聞くだけだと、すぐ忘れやすい。横にいる仲間
と対話し、自分で言葉にしようと試みるなかで確
認したことや、他者と話し合うなかで新たに発見
したりしたことは忘れにくい」(31P)
「『小グループに分けたけど、議論はちっとも盛
り上がらなかった』とグループワークを早々に諦
めてしまう先生の声を聞くことがあるが、小グル
ープに分けただけではダメで、座り方などの場づ
くり、導入の仕方や問いの立て方、話す順などを
工夫した話しやすい雰囲気づくりの手順が必要な
のだ」(49P)
「まずはそこに集う関係者全員の『関係の質』を
上げる、つまり遠慮せずに思ったことを言い合え
るような関係をつくることが大事だ。遠慮や警戒
が強く、情報量や意識に差があると、なかなか創
造的な話し合いにはなりにくい。関係者の関係の
質が上がって、活発なコミュニケーションが行わ
れ、遠慮なく率直にやりとりができると、自ずと
集団全体が高いレベルで考えることができ、『思
考の質』が上がる」(74~75P)
「人は問えばその問いについて考え始め、提案す
れば、その方向に動き出す。だから、多くの人々
の貴重な時間や労力を預かるファシリテーターの
責任は大きい。特に、話し合ってもらう『問い
(お題)』について、どのような『問い』をどう
いう順番で投げかけるのかは熟考を要する」(87P)
「まずはそこにいる皆にとって共通して実感をも
って話せる問いを考える」(88P)