長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

むずかしいテーマ 関係構築

12月15日に行われた岡山県学習協主催の
「変革のための・リーダー研修講座」の報告2回目。
会場設営ワークを終えてから、
中盤は「関係構築」をテーマに学びあいました。

といっても、ここの部分は私自身、
どんなワークをしてもらおうか、どう問題提起すればよいか、
など十分に煮詰めきれていないところ。
私が大事なことだと考え実践してきたことをポンポンと提起し、
参加者どうしの交流に「まかせた」という感じでした。

f:id:benkaku:20191215153138j:plain

参加者も、とても大きなテーマで日頃から悩んでいる問題でもあり、
どれだけ話をしてもスッキリ感が得られにくかったかなと思いました。
まだまだ精進せねばなりません。

以下、おもな問題提起と、参加者の感想を少しご紹介します。


●問題提起-関係の質をどうつくり高めるか

関係構築とは何か。人が集まると、人と人との間に関係性ができる。
関係性とは、つながりとその強度。相手の名前や人となりを知る。
もっている力や知識、経験を知る。対話をつうじて高まり。
力を貸したり、借りたり。「~しあう」関係ができ、一緒に行動へ。

組織とは、人の集まりであると同時に、関係性の集まりでもる。
関係性の質が、組織の力・パフォーマンスを左右する。
たとえば労働組合=「数の力」とよく言われる。
しかしその「たくさんの組合員」どうしの関係の質によって、
発揮できる力は変わってくる。
「たくさん」とあわせて「関係の質」を高める。
そして難しいのは、数が多ければ多いほど関係の質の構築に
困難さが生まれるということ。リーダーがたくさん必要になる。

余談だが、グループワークの人数も7人を超えると
「社会的手抜き」という現象が起こるといわれている。
関わりの薄い人がでてくる。

意識的に関係性を育てる(リーダーにとって優先順位の高い課題)。
どういう関係性を構築していきたいのか(時間は限られているので戦略的に)。
関係性のないところでは、まず話しかける。連絡をとってみる。場に出かける。

すでに運動や組織があり、一定の関係性があるところでは、
より関係性の深化をめざす。会議の場、集会の場で。学習会の場で。
目的をもった企画の場で。交流、レクリエーションの場で。
1回1回が関係構築の貴重な時間であり、真剣勝負でのぞむ。

岡山労働学校の実践―まず関係の質を高める。1回目は交流に重点をおく。

「関係の質を高めるために大切なのは対話」
(小室淑恵『「残業ゼロ」の仕事術』ダイヤモンド社)

ファシリテーションの理論は関係性の促進、
という点で有効活用できる。
『ファシリテーション革命―参加型の場づくりの技法』
(中野民夫、岩波書店)など参照。

運動では、相手の価値観や問題意識とこちらの
「目的(要求実現)」を“つなぐ”こと。

1対1対話(意識化しないとつくれない。ルーチンの会議や企画とちがう)。

「Eメール、携帯メール、ビラ、フェイスブック、ウェブ
サイト・・・どれも立派な運動の手段です。でもそのどれ
もが1対1の対話にとって代わることはできない…(略)。
人を運動に引き入れ、行動しようという気にさせるには、
じかに顔を合わせて話をするのが、いまだに最良の方法」
(『職場を変える秘密のレシピ47』日本労働弁護団)

対話の場所やシチュエーションも大事
(やはり物理的環境に影響を受けるため)。
長久の実践―93期岡山労働学校の成功のための1対1対話。

聴くことが基本。まず相手を知る。
形式的な方法論ではなく、相手の価値観や問題意識に
あわせて質問をしていく。
そのさい、「わたし」がなぜこの活動をしているのかを語ること、
組織の目的や「今の課題・問題意識」もかみあわせながら
対話をしていくのが基本。

対話のしかたも技術化が一定必要。
アメリカで発展してきたコミュニティー・オーガナイジング(CO)は
このあたりの技術をかなり体系化している。

ともに行動し、時間を共有するなかで、さらに関係の質が深まる。

「1対1の話し合いが、人々との関係を築くための唯一の
道だとは思いません。それというのも、実は、関係構築の
次の段階というのは、何かのキャンペーンなどに一緒に
取り組む過程で実施されるからですし、さらには、最も
緊密でエキサイティングな関係というのは、何かの闘争を
一緒にくぐり抜けるときに育まれるからです」
(『人と人がつながる社会へ』連帯社会ブックレットより)

関係構築におけるリーダーの役割。戦略的に場をつくる人。
全体の活動量を客観視して、何に資源(人、時間やお金)を
投入するか判断(方針づくり)。

観察力。個人の把握。関係性の把握。集団の把握(しきれないのが大事)。
リーダーの影響力のなかでは、「安心」と「信頼」が先決。
意見・批判・相談が集まる。
心理的安全性を生むのは「強み」ではなく「弱み」。
自己開示の大事さ。言葉で人を励まし、風土をつくる。

「チームや組織において、リーダーも含めたメンバーが
相手を認める言葉や、貢献に対する感謝の言葉をいつも
届け合っているいると、それがチーム全体のエネルギーの
源になります。そして外部から見ても、やる気や活気が
伝わってくるチームになります。そんなチームの風土を
作る最初のきっかけをもたらすのは、…リーダーの役目です」
(谷口貴彦『ザ・コーチ2』プレジデント社)

育成と「担い手補充(リクルートメント)」の方法が
しっかり確立しているか。

「団体が活気づき、社会を変える影響力を持つには、多く
の人の力が必要です。比較的大きな団体でも、その活動が
ペースを落とさずに継続的におこなわれるためには、絶え
ず新しい人が加入していくことが必要となってきます。
つまり、さまざまな人が集まることによって、その団体の
活動の場が広がるのです。ということは、『新メンバーの
リクルートメント方法』がきちんと団体内にあるかどうかが、
その団体の長期的な活動の成否に関係してくると言えます」
(POWER~市民の力/A SEED JAPAN共編『NGO運営の基礎知識』アルク)

「重要なのは、一部の労組役員・専従者を中心とした活動
スタイルではなく、現場の組合員をエンパワーメントして
自発的なリーダーをつくり、そこからさらに雪の結晶
(スノーフレーク)のように次のリーダーや活動参加する
人を広げていくことです。そのためには、年単位100人
規模でオルグ・リーダーを育成していくことが求められ、
『誰もが一定水準の活動家になれる』ようにするため、
体系化されていて再現性が高い実践型のプログラムを導入・
活用することが不可欠」
(『学習の友』2019年11月号、北海道労連・出口憲次事務局長論文)

リクルートするときは、役割や期待を提示する
(消極的理由やメリット論ではなく)。

活動技術の蓄積と継承。

「技術は知識の形によって個人から個人へと伝えられる
もので、しかもその経験法則を一般化しつつしだいに高
められていくものである。模倣が原理の徒弟式訓練は無
意識的であるために長期間を要し、一方、科学的なうら
づけをもった理論による教育は、短時日ですぐれた効果
を発揮するのである。では、技能は技術よりも低いレベル
かというと、そういう関係ではない。技能は技術化され、
新しい技術には新しい技能が要求され、絶えずこれをくり
返しながら技術は発達していく」
(川島みどり『ともに考える看護論』)

「ノウハウを新人に教える(継承する)ことから始めま
しょう。そして、新人に伝えていくべきノウハウ(活動・
組織の実績)を整理して、日頃からしっかりと保存(蓄積)
していくことも、団体としてしなければならないことです。
これらノウハウを文章化してマニュアルをつくるのも有効
な手段でしょう。…『蓄積』と『継承』、この積み重ねが
団体運営の鍵になります」
(POWER~市民の力/A SEED JAPAN共編『NGO運営の基礎知識』アルク)

≪ディスカッションのテーマ≫
自分(たち)の、「関係構築」の現状や具体的実践例を出しあってみよう。
そもそも自分はどうやって今の役割や立場にリクルートされた?
運動・組織のリクルート方法はどうなっている?(新人加入、役員etc)
リクルート対象になる人をどう生み出しているか(育成の仕組み)。


〈参加者の感想〉

■1対1対話の先にも、関係を築くために大切なことを
知れて勉強になりました。

■関係性の質を高めることを、方向性をともなってはっきり
意識したうえで、1対1対話していくことを重視したい。

■意見も批判も相談も集まってくるリーダーは、心理的
安全性(「何でも言っていいよ」と)をメンバーに
あたえる必要があるという点が大きな学びでした。
その実践方法を学びたいです! 無意識にしていることや、
先輩からされてきたこと(役割や期待を提示したりされたり)が、
文字になっている、というか、そういうことだったんだ!!
と腑に落ちて感動しました。メカラウロコでした。

■専従として組合員との関係構築の大切さ、仲間づくりの
ポイントなど、多くを学べたと思っています。対話に
よって人の話をよく聞き、共有できるポイントをみつけ、
過半数組合を目指したいと思います。

■活動の継承をしていくうえで、ノウハウを教えて蓄積
していくことを組織として取り組むことが必要だと認識
してきました。