長久啓太の「勉客商売」

岡山県労働者学習協会の活動と長久の私的記録。 (twitterとfacebookもやってます)

「組織化こそすべて」2回目

きのう(12日)午後は、60分de名著第5講座の土曜回でした。
ふたたび
「組織化こそすべてーアリシア・ガーザ『世界を動かす変革の力』」を。
コロナ拡大で集団視聴の人数が激減していて(医療関係が多いのもあり)、
リアルタイム視聴は約60名でした。

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前回の反省をいかし、講義の時間配分はなんとかうまくいきました。
いよいよこの講座も残り1回! きのうの参加者の感想を紹介します。

■感想のなかでも出ていましたが、こうした運動の技法やノウハウ的なことは長年の活動のなかで、どちらかというとタブー視されてきた感がありましたネ(自分で学べみたいな)。それよりもなぜ今、運動が必要か、情勢論。どちらかでなく、両方必要なのかと思いました。今日の講義ひとつとっても、これだけ盛りだくさんで。自分は何をめざしているのか。なぜ運動に参加しているのか、改めて考える機会となりました。

■私にとっての初めの実践的な訓練は、青年運動のなかの対話だったなと思い起こしました。原水禁世界大会に参加して、広島のまちで通行する人に署名を呼びかけたこと(震えたことを覚えています)。学生自治会の選挙に立候補して、友人に投票をお願いしたこと。就職難のなか、就職活動をする友人やまわりの学生の声を集めたこと。対話によって自分も相手も変化する、その経験が、私がこれまで社会運動にかかわり続けてきたエネルギーです。実践的な訓練を仕組みとしてつくる。どうしたらつくれるのか?考えたいと思いました。

■アリシア・ガーザ『世界を動かす変革の力』を学んで。講座の内容で印象的だったのは、非暴力は単なる平和的な「手段」として選ばれたのではなく、「戦略」だったということです。相手から攻撃されたとしても、丁寧な言葉遣い、毅然とした態度で、対話しようとする姿勢を貫くこと自体が既に、差別や暴力が満ち溢れた世界の変革そのものになるのではないかと考えます。相手はこちらの存在を消そうとしてきますが、暴力で応じない敗者を出さないたたかい方は、人権の原則を揺るぎないものにするためには不可欠だし、分断された人々に再び連帯をもたらすことに繋がるのではないでしょうか。具体的なエピソードとしては、アメリカで一昨年BLM運動がピークに達していた時に、差別主義者の白人の男性を黒人の男性がハグする動画がツイッターに流れていました。差別主義者にハグをするのは、どうしてその人物が差別をするのかが彼らには理解できているからだと思いました。その姿からはBLM運動が差別への抗議を超えて、相手の孤独感に向きあい包み込む強さを感じました。このことからも、社会運動及び組織化は社会を正しさで覆すためにあるものではなく、ガーザさんの指摘の通り大多数の「私たち」に力を取り戻し、必要なものを勝ち取っていく―そこに対立は必要ない。そういう合意形成があるのだと考えました。

■「ハッシュタグから運動を起こすことはできない」というのが印象的でした。ガーザさんに質問をしてくる人と同じで、割と日本の運動団体のみなさんも、SNSに過度な期待を持っているところがあり、業務でも「SNSで拡散するアイデア出してよ!」と言われることが多いので、これからは 「組織化こそが運動を持続させる」と返事をしたいと思います(笑)。もちろん、地道な組織化が爆発的に広がる瞬間とそのアイデアがあるんだろうなと思いますが、そのあと当事者主体で運動を持続させることを意識しているのが本を読んでいても重要だなと思います。そして組織化にはトレーニング方法がある、というのが、この講座で繰り返し触れられてきたことですね。「話すよりも聞く側に徹し、相手の正義感に火をつける」。相手の要求を引き出し、エネルギーに変える対話術。これも意識して学びたいです。いよいよ次回が最終回、寂しいですが次回も楽しみにしています。よろしくお願いいたします。