「干渉をうけることなく自己の意見をいだく自由」(世界
人権宣言第19条)は、私たちが自分の人生や生活を自分ら
しくつくりあげていく根幹をなす自由のひとつです。思想・
良心を理由に不利益を課すことは、事実上それを侵害するこ
とにあたります。
そうした侵害に対してたたかったアメリカ映画人の気骨な
生き方にふれられる映画が『トランボ』です。
◆一流の脚本家が赤狩りに
『ローマの休日』(1953年作品)といえば、知らない
人はほとんどいない有名な映画です。その脚本を書いたのが
ダルトン・トランボ。一流の脚本家でした。でも、じつはこ
の映画が公開されたときは、脚本は別の人物が書いたことに
なっていました。
1947年。東西冷戦が激化し、ハリウッドにも「赤狩り
(マッカーシズム)」がふきあれたのです。標的となった映
画人10人のうちのひとりが、トランボでした。その年の
10月に行われた反共キャンペーン下院非米活動委員会によ
る第一回聴聞会に呼び出されたトランボ。そのシーンは映画
の見どころのひとつです。「あなたは共産主義者か、あるい
は、かつてそうであったか?」と問われますが、証言を拒み
ます。その結果、議会侮辱罪で逮捕、禁固刑の実刑判決を受
けます。
◆家族との絆・トランボの生き方
刑期終了後も、映画界から事実上追放されますが、偽名を
つかいB級映画の脚本を大量に書きながら食いつないでいき
ます。その期間の家族との絆と揺れる心情がこの映画のひと
つの柱になっています。1956年にロバート・リッチの名
で脚本を書いた『黒い牡牛』でアカデミー原案賞を受賞しま
すが、彼の名前は公にされませんでした。『ローマの休日』
も同じ理由で別の人物の脚本とされましたが、見事にアカデ
ミー賞を受賞していたのです。
こうした歴史の真実も興味深くみることができますし、現
代日本にも共通する問題を感じずにはいられない作品ですが、
なによりトランボの生き方・するどい感性が、おおきな励ま
しを私たちにあたえてくれます。おすすめです。